ディープインパクト後継種牡馬の真打ち登場
歴史的大種牡馬ディープインパクトが送り出した最高傑作ともいえる無敗の三冠馬コントレイル。その産駒が今年デビューを迎える。そこで、今回はそのコントレイル含め2025年に産駒がデビューする新種牡馬たちを紹介していく。
コントレイルは、2020年の牡馬クラシックにて無敗の三冠を達成。ライバルにはサリオス、ヴェルトライゼンデ、ディープボンドらがいるなか、ダービーでは3馬身差の完勝。菊花賞後は3敗を喫したが、引退レースとなったジャパンCでは、シャフリヤール、ユーバーレーベン、オーソリティらを相手に2馬身差で勝利し、有終の美を飾った。
本馬の祖母、FolkloreはアメリカGⅠ・BCジュヴェナイルフィリーズを制しているダートの名牝。コントレイルの母であるロードクロサイトも現役時代の7戦のうち6戦がダートというダートの牝系だ。
ロードクロサイトはFappianoの3×4クロスを持ち、初仔のバーンフライ(父ゴールドアリュール)は中央ダートで3勝を挙げている。ダイワメジャーとの仔であるアナスタシオもダートで勝利を挙げており、母の産駒として初めての芝勝利がコントレイルの新馬戦だった。
コントレイルの配合相手は外国血統が大半で、さすがに良血馬がずらりと並ぶ。サンデー系の繁殖牝馬との配合は意外と少なく、母父サンデー系種牡馬との産駒は11頭。その中でも3頭がキンシャサノキセキだった。
初年度だけに手広く多種多様な血統との配合が試されており、その中から傾向を探っていくことになりそうだ。父が苦手としていたダートでも大物を出しそうな雰囲気もあり、先入観を持たずに産駒の活躍を分析していきたいところだ。
ゴールドアリュール、ロードカナロアの後継種牡馬候補も
デビューから国内ダート戦8連勝のクリソベリルも、今年から産駒がデビューする。6戦無敗で制したチャンピオンズCではレースレコードも記録した本馬。特に2〜3歳の走りは歴代でもトップクラスのパフォーマンスであり、記録にも記憶にも残るダートの名馬といえる。
祖母のキャサリーンパーは名繁殖で、クリソベリルの他にもダンビュライトやアロンダイト、ブラックスピネル、ビップデイジーらを輩出。特にクリソベリルの母クリソプレーズは名馬を多く産み、クリソライト、マリアライト、リアファルとGⅠ活躍馬が多い。ダートの名種牡馬ゴールドアリュールの後継種牡馬として、クリソベリルにかかる期待は大きい。
アーモンドアイを輩出した大種牡馬ロードカナロアは、今年も後継種牡馬を送り込む。2024年産駒デビューでは中距離路線で活躍した皐月賞馬サートゥルナーリアがいたが、しっかりとショウヘイ、ファンダムといった活躍馬を送り出した。
ロードカナロアと同じくスプリント路線で活躍したダノンスマッシュには、やはり父を彷彿とさせるスピード感豊かな産駒が期待される。ダノンスマッシュはサンデーサイレンスの血を持たない種牡馬のため、配合相手はサンデーサイレンス系の繁殖が多く集まった。中でも、ディープインパクト繁殖が13頭、ハーツクライ繁殖が12頭と目を引く。
さらには皐月賞馬エポカドーロを輩出したダイワパッションなど良血馬も揃い、初年度から多いに活躍が見られそうだ。親子3代の香港スプリント制覇という偉業もかかっているため、名スプリンターの輩出が待たれる。
他にも楽しみな新種牡馬が続々登場
今年の輸入新種牡馬で期待を集めるのがベンバトル。名種牡馬Dubawiの産駒で、日本でその血統を広げていきたいところ。メーヴェやルシェルドールといった実績ある繁殖が集められ、ここからクラシック級の大物の登場に期待したい。
ベンバトルは母父Selkirkが1988年生まれの馬で、その父は1969年生まれのSharpen Up。デイドリーマー(父ネオユニヴァース)との配合ではSharpen Upの4×5が見られる。
輸入種牡馬ではミスチヴィアスアレックスも人気となった。こちらはアメリカのGⅠ馬で、人気種牡馬Into Mischiefの後継種牡馬としての期待が集まる。スピードタイプの血統であり、ここに安定感が加わればスペシャリスト系の種牡馬として長く愛される存在になりそうだ。ダートでの活躍を期待する配合が多く見られるが、芝の短いところでも活躍馬を出せるポテンシャルはあるだろう。
また、現役時代に人気を集めたキセキやインディチャンプ、セイウンコウセイも産駒デビューした。キセキは祖母ロンドンブリッジ、母父ディープインパクト、父ルーラーシップという良血馬。主要な血統が多く入るため配合相手は選ぶことになるだろうが、トリニティプレイスなどポテンシャルの高い繁殖も集められ、ホームラン級の活躍馬を見たい。
インディチャンプは、自身の豊富なスピードを産駒に伝えられるかがカギとなる。父はステイゴールド。何か大きなことをやってくれる気がしているファンは少なくないだろう。
他にもタニノフランケル、アスクピーターパンという2頭のFrankel産駒が種牡馬になるなど今年の新種牡馬も層が厚く楽しみが広がる。
内国産馬4強を多彩な血統の猛者たちが追いかける

【血統登録頭数上位馬の種付け料】
コントレイル(130頭) 1200万円
クリソベリル(112頭) 300万円
ダノンスマッシュ(106頭) 220万円
ダノンプレミアム(94頭) 120万円
ミスチヴィアスアレックス(89頭) 120万円
マテラスカイ(84頭) 100万円
ベンバトル(74頭) 250万円
インディチャンプ(67頭) 120万円
フィレンツェファイア(62頭) 150万円
ヴァンゴッホ(58頭) 200万円
種付け料ではコントレイルが唯一の1000万オーバーと、期待値の高さが見てとれる。コントレイルは初年度から1200万円(種付け193頭)→1200万円(種付け212頭)→1500万円(種付け205頭)と評価を上げ続けている。来年、再来年の産駒デビューが待ち遠しくなるような活躍が求められる。
輸入種牡馬ではベンバトルとヴァンゴッホが200万円オーバー。群雄割拠の現在の生産界において、この値段帯でいきなり100頭を超える牝馬を集め、74頭の産駒を送り出したベンバトルは、やはり本格派の輸入種牡馬として期待の存在といえる。
ダノンプレミアムはダノンスマッシュと同期であり、朝日杯FSでは1着ダノンプレミアム、5着ダノンスマッシュとなっていたが、種付け料、種付け数ともにダノンスマッシュが上回った。
ただし、ダノンプレミアムも4歳秋から勝ちこそなかったものの天皇賞(秋)→マイルCSで連続2着など当時の現役有数のスピードを持っていたことは間違いない。どちらも初年度以降、種付け料、種付け数が減少傾向にあるが、初年度産駒の活躍で覇権を取るだけの素質は持っているはずだ。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ドウデュース。
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