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【きさらぎ賞】今年はハイレベル! フリームファクシ、オープンファイアはクラシックで大注目

2023 2/6 10:40勝木淳
2023年きさらぎ賞レース結果,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

荒れ削りでも押し切ったフリームファクシ

舞台が代替中京になって3年目。きさらぎ賞から大物登場の予感がある。これまでの2年の勝ち時計は2.01.0、2.00.5。前年暮れからの変則的な開催日程により、芝が傷んだ状態で1回中京最終日を迎えるので、時計がかかることが多い。今年の芝は荒れているが、それほど時計がかかっていなかった。フリームファクシが記録した1.59.7は単純に比較すれば、近2年とは一線を画すもの。冬に3歳限定戦の中京芝2000mで2分を切った例はない。3月開催でも2012年コース改修以降では16年未勝利戦でエマノンが記録したのみ。時計面の価値はある。

しかし、フリームファクシのきさらぎ賞は時計面以上の価値もはらむ。それは荒削りすぎるレース内容で記録された時計でもあるからだ。前走1勝クラスと同じく序盤は隊列に入る際にかなり行きたがり、前がペースを落とすとさらに行きたがった。あり余るほどのスピードはそれだけで素質の高さだ。その分、自然に前につけられるので、少頭数では馬の後ろに入れない。

この日も逃げるレミージュの2番手外。難しいポジションで懸命に抑える姿が印象に残る。前走と同じくレース後半でペースが上がっていくと、走りが徐々にスムーズになり、抜群の手ごたえへと変わっていく。前半であれほどなだめても、フリームファクシの体力は残っている。ここにもスケールを感じる。最後の直線ではやや頭が高く、いかにも未完成な走りでオープンファイアの追撃をしのいだ。

前半の運びを考えれば、相当な体力を感じる。非常に多くの改善点を残して1.59.7を叩き出し、重賞を勝ったとなれば、スケールを感じざるを得ない。もちろん課題は次へ残されたわけだが、それだけ伸びしろもある。

2分を切った時計で上がり33秒台を繰り出したオープンファイア

最後の600mは11.3-11.1-11.9。フリームファクシが未完成の走りでこのラップを乗り切ったのも舌を巻くが、これを後ろから進め、頭差まで迫ったオープンファイアもさすがだ。上がり33.8の切れ味は最終世代のディープインパクト産駒を印象づけた。

前後半1000m1.01.2-58.5は、とても後ろから攻めて迫れるようなラップではない。中京芝2000m、3歳3月までで2分を切った決着時計、かつ上がり34秒を切った馬は過去にいない。前半が遅く全体時計がかかり2分を超えるレースであれば、33秒台で上がるケースは今年の若駒Sマイネルラウレアや昨年野路菊Sファントムシーフなど多いが、2分を切ったレースを33秒台で上がってくるのは超A級の可能性を感じる。ステッキに反応する若さを見せながら、この走り。オープンファイアも未完成な部分を残す。

スローの上がり勝負でも速い決着時計となると、着差はしっかり出る。3着クールミラボーは2着オープンファイアに3馬身差つけられた。1、2着と比べれば当然、評価は下がるも、この馬も上がり34.4で2.00.3を記録。きさらぎ賞の記録としては悪くない。ましてダートで未勝利戦を勝ちあがった直後、はじめての芝での結果だけに評価していい。この馬の次走は1、2着馬の実力を裏づける意味でも注目しよう。

次週共同通信杯が過去10年皐月賞で【5-0-2-9】勝率31.3%、複勝率43.8%に対し、きさらぎ賞は【0-0-1-6】16年サトノダイヤモンド3着があるのみ。間隔をとるローテが主流のなか、きさらぎ賞は活躍馬を出せていない。今年はその現状を変える可能性がある。過去の傾向にとらわれず、ハイレベルなきさらぎ賞組を評価したい。

2023年きさらぎ賞、レース経過,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

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