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【シリウスS】ダートで開花はキングカメハメハ産駒の真骨頂! ジュンライトボルトは暮れの大一番でも一発注意

2022 10/3 10:47勝木淳
2022年シリウスSのレース結果,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

万能型のキングカメハメハ産駒

ディープインパクトとともに一時代を築いたキングカメハメハが万能型であることは有名な話。2022年9月末までのJRA成績は2147勝で内訳は芝1130勝、ダート944勝、障害73勝。距離別の勝率が10%を超えるのは1300、1500、1700、1800、1900、2000、2100、2400、2600、3400mで、出走回数が多い1200m、1600mはそれぞれ9.1%、9.8%。死角らしきものはほとんどない。

ダート重賞は17勝でGⅠは3勝、13年ジャパンCダートのベルシャザール、チャンピオンズCは14年ホッコータルマエ、20年チュウワウィザード。ベルシャザールは芝の新馬を勝ち、オープン特別のホープフルS勝利、日本ダービーはオルフェーヴルの3着だった。その後、骨折による長期離脱があり、5歳春にダート路線へ転向。3、1、2、1、1、1着とGⅠまで一気に駆けあがった。

芝からダートへ路線変更が成功するのも特徴のひとつで、ナイスミーチュー、アドマイヤロイヤルなどもこのパターンで重賞を勝った。また最近ではハヤヤッコが芝デビューからダート、そして再び芝に戻って重賞制覇と、キングカメハメハ産駒は縦横無尽、条件を選ばず活躍できる。生産者、馬主にとってこれほど心強い種牡馬はいなかった。


ジュンライトボルトにとって中京ダート1800mはベスト

シリウスSを勝利したジュンライトボルトは友道康夫厩舎所属。ノーザンF生産馬であり、当然ながら芝路線を歩んだ。朝日杯FSではサリオスの6着。伸び悩んだ時期もあったが、4歳春に2、3勝クラスを連勝し、芝路線でOP入りを果たした。その後、リステッド6、11、7着後、ダートへ。詰めの甘さが解消され、2、1着で重賞タイトル。陣営の決断が見事に当たったのと同時に、種牡馬キングカメハメハの特徴を最大限に活かした戦略が呼んだ勝利でもあった。

レースラップは7.2-11.3-11.3-13.1-12.3-11.9-12.5-12.6-12.2-13.3。坂下スタートから1周目ゴール板すぎ、クリノフラッシュ、サンライズホープで隊列が決まったところに、大外枠レーヌブランシュが競りかけ、先行争いは予想外に厳しくなった。ダートは前と離されると芝以上に逆転が難しく、意識は自然と前に集まる。中盤に11.9が記録される変則的なラップは先行勢に息を入れるタイミングを与えなかった。

そんな緊迫感ある流れのなか、ジュンライトボルトは中団のインに構えた。4コーナーで下がる外のアルドーレをかわして、先行集団の外へ。ジュンライトボルトの強みはコーナーでの加速力。4コーナーから直線入り口にかけての脚色は明らかに他馬と違った。最後の直線のラップは12.2-13.3。ダートの瞬発力勝負には強く、回りやすいコーナーを有する中京の中距離はもってこいの舞台。100m短くなるチャンピオンズCも相手はかなり強化されるだろうが、楽しみはある。キングハメハメハ産駒はチャンピオンズC2勝。12月のダート勝率は12.3%もある。



収穫あった2着ハピ

2着は3歳ハピ。道中はジュンライトボルトの真後ろをとり、勝負所もずっとラチ沿いのまま、3着オーヴェルニュが踏ん張っていたので、かわす手間こそあったが、見事にインを突いて抜けてきた。これまでは外を通って届かずというイメージが強かっただけに、この好走は今後に向けて明るい材料だろう。1、2着は翌日、凱旋門賞に挑戦する厩舎の所属馬。馬も遠き異国で奮闘する仲間を応援しているようだった。

3着はトップハンデ58キロのオーヴェルニュ。中京は重賞2勝のコース巧者だが、それは不良、重馬場でのもの。トップハンデで良馬場は厳しく、ましてここ3戦は見せ場がなかったので、7番人気と人気を落としていたが、そんな下馬評を覆した。年明けの東海Sは1番人気2着、見切るのが早すぎた。内容は厳しい流れのなか先行し、唯一残った。久々にしぶとさを発揮した印象で、やはり中京では見限れない。

1番人気ハヤブサナンデクンは7着。今回は激しい先行争いから一歩引いた形をとったが、中盤にかけてリズムを欠いた。目標にされたとしても、やはり持ち味を活かすには強気な先行が必要ではないか。今回は流れも不向き、相手関係次第であっさり巻き返しそうだ。


2022年シリウスSのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。



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