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【日本ダービー】逆襲のドウデュース! 武豊騎手、日本ダービー6勝目へ

2022 5/22 17:30勝木淳
日本ダービーインフォグラフィック,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

ダービーウィークがやってくる

2019年生まれのサラブレッド、その頂点を決するレースがやってくる。たった一度きりの決戦。やり直し、出直し、再出発への希望もまた競馬の醍醐味だが、クラシックだけはそれが許されない。日本ダービーという言葉にはむせぶほどの緊張感が帯びる。この1週間、ダービーウィークは片時も競馬から目を離したくない。

今年の日本ダービーは実質最終世代(現2歳の産駒は6頭だけ)となるディープインパクト産駒6頭を含め22頭が登録。上位馬に回避がなければコマンドラインとジャスティンロックが抽選へ。アサヒ、ヴェローナシチー、ポッドボレットが除外対象。2歳重賞を勝っても出走できるかどうか、ハイレベルな戦いだ。ここでは過去10年間のデータを使用し、今年の日本ダービーを検討する。


過去10年日本ダービー人気別成績,ⒸSPAIA


まず人気別成績。1番人気【3-2-2-3】勝率30%、複勝率70%、2番人気【1-2-1-6】勝率10%、複勝率40%、3番人気【3-3-1-3】勝率30%、複勝率70%とさすがに上位人気は堅く、5番人気【1-2-0-7】勝率10%、複勝率30%までが好走。6番人気【0-0-0-10】以下はなくはないが、確率が一段と下がる。ただし10番人気以下【1-0-3-84】勝率1.1%、複勝率4.5%、思わぬ伏兵の突っ込みも考えておきたい。


過去10年日本ダービー馬体重別成績,ⒸSPAIA


生涯一度の大目標である日本ダービーとあって、究極の仕上げが求められる。それが反映しているのか、馬体重別でみると、今回減った馬が【8-6-5-59】勝率10.3%、複勝率24.4%、増減なし【0-1-1-25】複勝率7.4%、今回増【2-3-4-64】勝率2.7%、複勝率12.3%。

個人的な見方を言わせてもらえれば、普段なら馬体重減は「絞る」ではなく「消耗」と解釈し、好意的に受け取らないが、日本ダービーだけは別。ここに向けて馬体を研ぎ澄ませたと考えたい。なお直近5年で馬体増は【0-2-2-30】複勝率11.8%とさらに下がる。できれば当日の馬体重はきっちり確認してから馬券を買いたい。


皐月賞組の取捨

上位人気堅調、究極の仕上げを示す馬体減が優位という傾向。これらを踏まえ、さらに前走成績から好走馬を絞り込んでいく。


過去10年日本ダービー前走レース別成績,ⒸSPAIA


オークスは近年桜花賞組が800mの距離延長による適性の差に苦しむ傾向があるが、400mしか距離が長くならないダービーは、皐月賞組優位。前走皐月賞は【7-8-5-66】勝率8.1%、複勝率23.3%。まずはここから振り返る。


皐月賞 ジオグリフ 1.59.7

今年の皐月賞は逃げ候補が複数いるレースながら、先手を奪った1枠アスクビクターモアがマイペースを刻み、前後半1000m1.00.2-59.5とスロー寄りの平均ペース。最後400m11.4-11.5の瞬発力勝負だった。1、2着ジオグリフ、イクイノックスが中団より前、後方から唯一上位にきた3着ドウデュースは4角14番手から追い込んだ。また当日は馬場の内側が悪く、4着ダノンベルーガは枠順に泣いた。外枠勢上位独占のなか、1枠1番からの4着は価値が高い。


過去10年日本ダービー前走皐月賞組着順別成績,ⒸSPAIA


皐月賞での着順別成績では1着【2-3-1-4】勝率20%、複勝率60%をはじめ、3着以内が【4-7-3-15】と有力。一方で6~9着【1-1-2-17】勝率4.8%、複勝率19%と9着以内なら巻き返すケースもある。上記3頭のほかに9着ジャスティンパレスまでは可能性がある。しかし13着キラーアビリティが該当する10着以下は【0-0-0-21】と不吉。


過去10年日本ダービー前走皐月賞組人気別成績,ⒸSPAIA


皐月賞時点での評価を示す人気別成績も1番人気【2-1-1-4】勝率25%、複勝率50%など5番人気以内が目安。6番人気以下だった馬は【0-1-2-44】。皐月賞で上位に推されるぐらいの実績馬が強い。6番人気5着アスクビクターモア、8番人気6着オニャンコポンあたりは苦戦しそうだ。着順で引っかかったキラーアビリティもここはクリア。今年のメンバーではどちらのデータもクリアする1~4着馬が候補か。


京都新聞杯 アスクワイルドモア 2.09.5

別路線組では、トライアルではないが京都新聞杯が【2-1-1-19】勝率8.7%、複勝率17.4%。今年の舞台も代替中京。異常な時計が出る高速馬場で行われ、前半1000m通過58.2。平均ペース、ひと塊で進むタイトな競馬。さらに残り1000mからスパート、11.8-11.8-11.8-11.7-12.1と持続力勝負になり、道中は中団のインに潜み、4コーナーで思い切り外に出したアスクワイルドモアが差し切った。皐月賞のような軽さはなかったが、時計の出る馬場で底力勝負ならこちらもひけをとらない。


過去10年日本ダービー前走京都新聞杯組人気別成績,ⒸSPAIA


京都新聞杯は1、2着【2-1-1-13】と好走が条件ながら、さらに重要なのが人気。京都新聞杯で1、2番人気だと【2-1-0-4】勝率28.6%、複勝率42.9%。こちらも京都新聞杯の時点で主役級に推されていないと厳しい。19年12番人気で制したロジャーバローズもこのデータに符合する。8番人気で勝ったアスクワイルドモアが該当する6~9番人気は【0-0-0-7】。この中には京都新聞杯を7番人気で勝ったステイフーリッシュ(10着)も含まれる。


青葉賞 プラダリア 2.24.2

ダービートライアルながら、本番で【0-1-3-19】複勝率17.4%と勝ち馬が出ていない青葉賞。今年は先行争いがやや激しくなり、前半1000m通過58.9。ラスト600m11.7-11.9-11.9と総合力を問われ、1、2着はともにディープインパクト産駒だった。


過去10年日本ダービー前走青葉賞組上がり別成績,ⒸSPAIA


青葉賞の目安は上がり3Fの記録。1位だった馬は【0-1-1-2】複勝率50%、6位以下【0-0-2-9】複勝率18.2%。本番と同じ舞台で出走馬中1位の瞬発力を繰り出すことか、もしくは6位以下、かつ逃げ先行【0-0-2-5】と前で踏ん張った経験が必要。プラダリアの上がり34.2は2位【0-0-0-4】。ロードレゼルの35.1は4位タイ、4、5位は【0-0-0-3】。データ上では今年の青葉賞組は強調しにくい。

昨年シャフリヤールが勝った毎日杯は【1-0-0-5】。今年勝ったのはピースオブエイト。ただシャフリヤールは1.43.9のレコードV、スタート直後の200mを除きすべて11.9以内のハイレベル戦。今年はやや重1.47.5、逃げ切り。最後は12.5を要したように昨年ほど強調できない。

皐月賞組で展開と逆の競馬をしたハーツクライ産駒ドウデュースは14年ワンアンドオンリーと重なる。同馬も皐月賞は4角12番手から大外を猛然と追い上げ、上がり最速を記録した。ドウデュースは朝日杯FS、弥生賞ディープインパクト記念では、後方からの競馬はしていない。日本ダービーは中団で立ち回っても不思議はない。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


日本ダービーインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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