「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

武豊5度目の制覇はディープインパクトの息子で 2013年日本ダービー馬・キズナ

2022 5/20 11:00SPAIA編集部
2013年日本ダービーのレース結果,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

日本ダービーまであと9日

2022年の日本ダービーまで残り9日。当連載では過去10年の日本ダービーを一戦ずつ振り返っていく。

帰ってきたレジェンド

困難を乗り越える。言葉で書くのはいとも簡単だが、実際にやってのけるのはそう容易ではない。いつでも順風満帆というわけにはいかない世の中。デビュー以来、猛然と勝利を積み重ね、日本人騎手の第一人者として不動の地位を確立したスーパーレジェンド・武豊騎手は、成績の急降下に直面していた。

2010年3月の毎日杯で落馬負傷。同8月に復帰するも、それまでのように勝ち星が伸びず、ルーキーイヤーと同じ69勝。翌2011年はフランスに長期滞在した2001年をも下回る64勝、中央GⅠでの連対なし。2012年はさらに落ち込んで56勝……。

そんな年の暮れ、それまで主戦を務めた佐藤哲三騎手の落馬負傷に伴ってバトンを受け、ラジオNIKKEI杯で初めて騎乗(3着)したのが、のちの第80代日本ダービー馬・キズナである。奇しくも、東日本大震災という未曽有の逆境から立ち上がるためのスローガン、その言葉を名付けられた馬だ。

翌2013年の日本ダービー、1番人気はそのキズナ。弥生賞5着ののち、父ディープインパクトを彷彿とさせる豪快な追い込み策に転じ、毎日杯と京都新聞杯を快勝して臨んでいた。

2番人気は朝日杯FSと皐月賞を勝つも、距離延長を不安視されたロゴタイプ。3番人気が皐月賞2着のエピファネイア。以下、デビュー6戦手綱をとった横山典弘騎手からC.ウィリアムズ騎手に乗り替わりのコディーノ、青葉賞馬ヒラボクディープと続く。

スタート直後、逃げの手に出たのは伏兵アポロソニック。ロゴタイプは先団5番手、引っかかるクセが終生の課題となるエピファネイアは福永祐一騎手が内に入れ、前に壁を作るも折り合いがつかない9番手。そしてキズナは最内枠からスっと抑えて16番手。自分の競馬に徹する。

抑えきれずに向正面で進出したメイケイペガスターが一時は先頭に立ち、直線はアポロソニック、ペプチドアマゾン、ロゴタイプが迫っての追い比べ。道中で前の馬に乗りかけて躓くロスがあったエピファネイアも、外に進路を切り替えて追い上げてくる。エピファネイアが前を行く各馬を外から捕らえて、先頭に立ったその瞬間だった。さらに外から、1番のキズナだ。

エピファネイアを並ぶ間もなく鮮やかに差し切ったキズナ。馬上のレジェンドは左手を挙げ、次いで右手でガッツポーズ。ダービー馬の首筋をポンと撫でた。

スペシャルウィーク、アドマイヤベガ、タニノギムレット、ディープインパクト、キズナ。5度目のダービー制覇を成し遂げた武豊は、勝利騎手インタビューで「僕は、帰ってきました!」と破顔一笑。2010年代の日本競馬屈指の名場面となった。

2013年日本ダービー・全着順
1着 キズナ 武豊 2.24.3
2着 エピファネイア 福永祐一
3着 アポロソニック 勝浦正樹
4着 ペプチドアマゾン 藤岡康太
5着 ロゴタイプ C.デムーロ
6着 テイエムイナズマ 幸英明
7着 ラブリーデイ 川田将雅
8着 タマモベストプレイ 和田竜二
9着 コディーノ C.ウィリアムズ
10着 フラムドグロワール 北村宏司
11着 メイケイペガスター 藤田伸二
12着 レッドレイヴン 内田博幸
13着 ヒラボクディープ 蛯名正義
14着 アクションスター 戸崎圭太
15着 マイネルホウオウ 柴田大知
16着 クラウンレガーロ 三浦皇成
17着 サムソンズプライド 田辺裕信
18着 ミヤジタイガ 松山弘平


《関連記事》
折り合い克服、名手が掴んだハナ差の頂点 2012年日本ダービー馬・ディープブリランテ