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【有馬記念】立ち回り力が問われるレース クロノジェネシスはグランプリ連覇できるのか?

2020 12/25 17:01坂上明大
2020年天皇賞秋 トラックバイアス インフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

超スローペースの決め手比べ

2020年を締めくくるグランプリレース・有馬記念。東京開催の天皇賞秋やジャパンCとは異なり、中山芝2500mで行われる本レースは地力だけでなく立ち回り力も重要となる。参考レースから有力馬の能力比較と適性を整理していきたい。

【天皇賞(秋)】
Bコース替わりでAコースから3m外に仮柵が設けられるも、内ラチから3~4頭分はそれまでの開催で傷んだ馬場が隠し切れず、トラックバイアスは「内不利」。ペースは逃げたダノンプレミアムで前後半1000m60.5-57.3の後傾3.2秒であったが、2番手以降の馬群においては前後半1000m61.0-56.8の超スローペース。ただ、団子状態での3F勝負、かつ南東からの追い風により、位置取り以上に末脚の爆発力が重要なレースだったと見る。

2着馬フィエールマンは発馬直後に挟まれる不利。直線も外に出すのに少々手間取り、上がり3F最速の末脚で追い込むもアーモンドアイには半馬身届かなかった。血統通り、スローで運んで末脚を活かすフランス的競馬がピッタリだ。

3着馬クロノジェネシスも発馬直後にごちゃつく場面があり、道中は外々を回って距離ロスの多い競馬でもあった。それでも、上がり3F32.8の末脚で追い込んで3着。ゴール前でフィエールマンに差されたのは持続力の差。ピッチ走法の本馬は反応がいい反面、トップスピードの持続力に欠ける。機動力の生きる中山替わりはプラス材料だろう。

2020年天皇賞秋 トラックバイアス インフォグラフィックⒸSPAIA


上位馬は経験値の差

【エリザベス女王杯】
京都改修工事により阪神芝2200mでの施行。高速馬場のため単純比較はできないが、同コースで行われる宝塚記念と比較しても勝ち時計2分10秒3は相当速い好時計。当日は上がり3F最速馬が9、12、2、2、1、1、2着、また上がり3F上位で馬券圏内を独占するレースも複数あったことから、近年の東京芝に似た末脚重視の馬場状態であった。レースはノームコアが暴走気味に逃げて前後半1000m59.3-59.0。ただ、2番手以降の馬群は前後半1000m60.0-58.3の後傾1.7秒と、トラックバイアスと同じく決め手勝負のレースであったといえるだろう。

1着馬ラッキーライラックは3角でウラヌスチャームに合わせて上がって行き、ラスト3Fを11.2-11.2-11.5程度で粘り切った。直線では内にモタれる癖も見せず、さすがルメール騎手という騎乗だった。乗り替わりは少々割引が必要か。

2着馬サラキアはタフな競馬の経験が少なく、仕掛け遅れの2着。上がり3F11.4-11.2-11.1程度と素晴らしい末脚を見せた。

3着馬ラヴズオンリーユーも勝ち馬の後追いになり、上がり3F11.4-11.2-11.2程度と脚を余した形。スタートは本馬の方が速いだけに、展開次第では逆転可能な力関係だ。

三冠馬3頭に肉薄

【ジャパンC】
週中に2.5mmの雨が降るも馬場は乾燥して含水率は低め。秋の連続開催最終週で馬場の傷みが強く、3角~直線の内側はそれが顕著。 内々を走った馬にとっては苦しい馬場状態であり、好走馬が傷んだ馬場を避ける進路取りをしている光景が印象的だった。

ペースはキセキが超ハイペースで逃げたが、馬群は前後半1000m60.3-58.7の後傾1.6秒。ただ、道中も終始11秒台を刻む淡々としたラップであり、天皇賞秋のような決め手勝負でなかった点は留意しておきたい。

4着馬カレンブーケドールは持ち前の機動力を活かして新三冠馬2頭より早めの仕掛け。ラストは決め手に屈したが、アーモンドアイを含めた三冠馬3頭を相手に小差の4着は素晴らしいの一言。さらに自身の上がり3Fは11.6-11.5-11.7程度と失速率は最も低く、初の中山芝2500mも何の問題もないだろう。

「グランプリレース連覇へ」

宝塚記念を圧勝したクロノジェネシスが本命。焦って早仕掛けさえしなければ上位争いは濃厚だ。立ち回り力の高いカレンブーケドール、ラヴズオンリーユーが相手筆頭。穴は逃げ想定のバビット。

◎クロノジェネシス
○カレンブーケドール
▲ラヴズオンリーユー
△バビット

※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。

ライタープロフィール
坂上明大
元競馬専門紙トラックマン。『YouTubeチャンネル 競馬オタク(チャンネル登録者40000人強)』主宰。著書『血統のトリセツ』。血統や馬体、走法、ラップなどからサラブレッドの本質を追求する。


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