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【ジャパンC】アーモンドアイのエピローグと三冠馬たちの第二幕 世紀の一戦、その答え合わせ

2020 11/30 11:35勝木淳
2020年ジャパンカップレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

極上の謎だった世紀の一戦

我々は競馬を過去の戦歴や適性、レース傾向というデータ、調教時計やパドックから測る馬の体調など、各自の予想方法と自らの経験に基づく勘を駆使して予想し、結論を出す。

世紀の一戦と評される第40回ジャパンCは競馬史上類を見ない組み合わせだった。史上初・無敗の三冠牝馬と無敗のクラシック三冠馬が対峙、迎え撃つのは芝GⅠ8勝馬。これらが対戦したときの結果を導き出すデータはなかった。予想という極上の謎解きはまさに至福の時だった。

その答えは、5歳アーモンドアイが芝GⅠ9勝目を達成する、だった。天皇賞(秋)で重圧から涙を流したルメール騎手に象徴されるように、史上初の芝GⅠ8勝目の前走こそが同馬にとってのクライマックス。年下の無敗のクラシック三冠馬2頭を迎えるジャパンCは戦前に引退レースと決められており、さしずめ競走人生のエピローグといったところ。

ジェンティルドンナやリスグラシューなど最近の最強牝馬のエピローグは、幕引きというにはあまりにインパクトが大きかったが、アーモンドアイのエンディングもまた強烈だった。

ヨシオが1角で外から競りかける姿勢を見せたことで、キセキのスイッチが入ってしまったのか1000m通過57秒9、大逃げの形に。アーモンドアイが抜群の発馬を決めたためにキセキは抑えられず変則的な展開になった。

アーモンドアイは天皇賞(秋)同様にいつどんなタイミングでも動ける位置をキープ。2400mへの距離不安を一切感じさせない自信に満ちたレース運びだった。経済コースから最後の直線だけ外に持ちだすという最小限の動きはいかにもルメール騎手らしい。残り400m、もがくキセキを目がけて追い出されてからの加速は圧巻だった。一気に後続を突き放す加速力はアーモンドアイのストロングポイント。抜け出してからは内に外へとまっすぐ走らなくても三冠馬たちを寄せつけなかった。

好位から瞬発力を繰り出すというスタイルは、日本の競馬が目指すべき次の道を示すもの。アーモンドアイは競走生活のエピローグで再びそれを強烈に表現し、ターフを去る。さようなら、アーモンドアイ。「激走型で次は凡走する」「中3週は未経験で詰めて使うとよくないのでは」など色々とケチ、というかジンクスを突きつけて申し訳ない。恐れ入れました。

三冠馬たちの第二幕

2着の正解は無敗の三冠馬コントレイルだった。アーモンドアイにつけられた初黒星は必ず次につながるはずだ。菊花賞のダメージを不安視されたが、最後の直線での走りにそれは感じなかった。機動的に立ち回りながら瞬発力を発揮するアーモンドアイとは完成度の違いといったところか。

キセキが作った、ハイペースから最後の600m37秒8もかかる変則的な展開は未体験ゾーンでもあった。ゴール前で脚色が他馬と同じになってしまったのは距離というより流れに戸惑ったからではないだろうか。アーモンドアイに負けたここからコントレイルの第二幕がはじまる。今回の経験から古馬が作るタフな流れを必ず克服するだろう。

3着に来たのはデアリングタクト。同い年のコントレイルとアーモンドアイに先着を許したものの、4着カレンブーケドールをゴール板で制する勝負強さはさすが無敗三冠牝馬。序盤はコントレイルよりも前にいたが、カレンブーケドールとクレッシェンドラヴの間に入り、道中は揉まれる形。

クレッシェンドラヴが動いたので外に出せたが、最後の直線は後ろからきたコントレイルに外をブロックされ、カレンブーケドールの内に切り替えた場面も痛かった。それでも再加速して前に迫る走りは見事だった。アーモンドアイとコントレイルに敗れ、デアリングタクトの第二幕もここからだ。

このレースが教えた競馬の醍醐味

三強に割って入るとすればどの馬かという謎の答えは4着カレンブーケドールだった。前年と同じ1番枠を引き、積極的な競馬をするかと思いきや、序盤はアーモンドアイの後ろという位置になった。残り800mから馬場状態がいい外を意識、4角を回る形は理想的なものだった。

厳しい流れのなかもっとも早いタイミングで仕掛ける競馬は、負けてなお強しといったところか。アーモンドアイに瞬発力で劣るのは仕方ないとして最後にデアリングタクトに捕らえられたのはハイペースを早く動いた影響があったか。重賞勝ち鞍がないのはもどかしいが、強い牝馬だという事実は揺るがない。

さらに早めに仕掛けた5着グローリーヴェイズも健闘した。大外枠を考えれば、1角までの入りは無駄がなく、アーモンドアイの前を2角でとった。勝つならこのパターンという形は作ったが、いかんせん前半が速すぎたために先にスタミナを使う展開になってしまった。

終わってみれば三強が馬券圏内を独占、3連単1番人気だった。世紀の一戦の予想、その正解を導いた競馬ファンは多かった。終わってみれば簡単だったかもしれない。だが、それはあくまで結果論であり、大切なのは謎を解く時間とレースをリアルタイムで観戦できた記憶だ。第40回ジャパンCは改めて競馬の醍醐味を教えてくれた。我々はその記憶を後世に語り継ぐ。

ジャパンカップのレース展開ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。


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