中盤が緩む流れも馬群はタテ長
11月8日に行われたアルゼンチン共和国杯。過去10年3歳馬は【1-0-3-0】と馬券圏内パーフェクト。データ通り唯一の3歳馬オーソリティが17年スワーヴリチャード以来の勝利を飾った。10月3週目に菊花賞があるので、長距離寄りの東京芝2500mアルゼンチン共和国杯挑戦は異例なローテといえる。それでいてこの好成績。翌年以降挑戦する3歳馬が増える可能性もあるが、忘れないでおきたい。
ただオーソリティはあえて菊花賞をパスしてここではなく青葉賞勝利後の骨折による軌道修正を迫られたというパターン。10月からしっかり乗り込んで万全の状態で復帰、見事に出直しに成功した。元来器用な競馬をできるタイプで大敗がなく、もっとも悪い着順がホープフルSで0秒8差5着という高レベルでの安定感が強み。アルゼンチン共和国杯もストロングポイントを最大限に発揮した。
伏兵ミュゼエイリアンが逃げ、オセアグレイトがついていく。前半は7.3-11.3-11.1-11.8と活気あるペースを刻むなか、大外枠からすんなり3番手をとったオーソリティは前2頭に釣られることなく、折り合いに専念。4番手以下が飛ばす前をみて押さえたことで一切ストレスなく走れた点は恵まれた。自然とタテ長の馬群になったため、後続は追い上げにかなり脚を使うことになり、最後の600mから刻まれた11.3-11.2という高速上がりが堪えた。
前半は突っ込んだミュゼエイリアンだが、向正面半ばから残り600mまで12.8-12.9-12.6-12.6と中盤で緩い流れを演出、結果的にスローの上がり勝負に近い形を作った。スローのタテ長から高速上がりでは後続はどうにもならなかった。
こういった特殊な流れであっても影響を受けにくく、いかようにも立ち回れる3番手をとったオーソリティ、この位置取りが勝因だろう。骨折を経験しても競馬の形を崩さず走れる精神力やセンスはクラシック経験組にも引けをとらない。
以前からの世代間レベル論(今年の3歳が弱い、5歳最強など)に個人的には否定的。レベルではなくデータとして秋はどのクラスも芝は3、4歳優位。11月は古馬と3歳馬が大きなレースで激突するシーンが多くなるが、「今年の3歳は……」といって評価を下げるのは危険だろう。