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【菊花賞】「神戸新聞杯組は3着以内、セントライト記念組は2着以内必須」など データとコントレイルの軌跡

2020 10/18 17:30勝木淳
2020年菊花賞1週前データインフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

正反対の競馬だった春二冠

牡馬クラシック最終章はディープインパクト以来となる無敗の牡馬三冠がかかるコントレイル一色といっていい。そこは動かしようがない。親子そろって無敗の三冠馬となれば日本競馬史上初の快挙。我々は歴史の証人となる可能性があるのだ。ここでは、まず春のクラシックと秋の前哨戦を振り返る。

第一冠皐月賞。勝ち時計2分0秒7は過去10年で18年エポカドーロに次ぐ遅い記録。これは馬場状態の影響が大きい。同日の芝2000mで行われた鹿野山特別は2分3秒0。19年同レースが1分59秒4と歴然。前半1000m通過は20年が1分3秒3、19年1分0秒5で、どちらもペースはスロー。時計の差は馬場の違いがすべてだった。19年皐月賞が1分58秒1なので鹿野山特別とは1秒3差、20年は鹿野山特別とは2秒3差もあった。

コントレイルは1枠1番から状態が悪い内目を走り、前半は前に行かれず、馬場のいい外目を意識するもガロアクリークに塞がれ位置を下げた。同馬が動いた地点でやっと外へ出し、3角12番手から一気に差し切り。好位抜け出しの優等生が恐ろしき底力をちらつかせた。前後半1000m59秒8-60秒9のパワーとスタミナを必要とする競馬で、3着好走のガロアクリークも菊花賞に登録した。

日本ダービーは一転してスローペースの瞬発力勝負。前後半1000mは61秒7-58秒4、最後の800m11.8-11.3-11.3-11.7というラップで、コントレイルは従来の好位から競馬。2着サリオス(毎日王冠勝ち)に0秒5差をつけたが、緩い流れでこの着差は決定的。瞬発力なら世代という範囲を越えてもトップクラスだ。そんな上がり勝負で皐月賞8着から3着に巻き返したのがヴェルトライゼンデだ。

秋の前哨戦を振り返る

コントレイルの秋緒戦は神戸新聞杯。皐月賞以来の白帽子になり、道中は馬群の中にいたが、福永祐一騎手が周囲の馬との距離を絶妙にとりつつ進路を徐々に確保。ゴーサインとともに一気に抜け出した。前後半1000mは59秒9-1分0秒3、力勝負のイーブンペースを見せムチ程度で完封勝利。夏を順調に過ごしたことを証明した。

2着は日本ダービー3着馬のヴェルトライゼンデ。熱発でセントライト記念回避というアクシデントを思えば上々の結果であり、瞬発力勝負の日本ダービーと平均ペースの神戸新聞杯でどちらもパフォーマンスを維持した点は覚えておきたい。

秋も馬場が悪かった中山で行われたセントライト記念は、夏の上がり馬バビットが逃げ切った。前後半1000mは1分2秒6-1分0秒4、ラジオNIKKEI賞より緩い流れで逃げたのは菊花賞に向けて不気味。残り1000~400mまで加速する変則ラップは同馬の持ち味。打倒コントレイルを掲げ、早めに仕掛けてくるとレースは面白くなる。道悪の弥生賞を勝ったサトノフラッグ、皐月賞3着ガロアクリークが2、3着。1~3着馬は道悪になった場合に浮上するだろう。

神戸新聞杯組が圧倒

前走レース別



データ上、圧倒的なのは神戸新聞杯組の【8-6-4-46】。昨年の菊花賞は、皐月賞・日本ダービーの勝ち馬、神戸新聞杯・セントライト記念の両トライアルレースの勝ち馬も不在だったが、神戸新聞杯3、2着馬が菊花賞を1、3着だった。平均的な流れになった神戸新聞杯は今年も総合力で優位だ。

神戸新聞杯組の前走着順



神戸新聞杯は3着までに菊花賞の優先出走権が与えられるが、データからも、菊花賞で好走するには権利の得られる3着以内が必須条件。コントレイル、ヴェルトライゼンデのほかにロバートソンキーも符号。コントレイルの後を追いかけるような進路取りで3着は実力の証。母系はトウカイテイオーの一族、母母父は史上初無敗の三冠馬シンボリルドルフ。菊花賞で買いたくなる。

神戸新聞杯組の前走人気



そのロバートソンキーに待ったをかけるデータは、神戸新聞杯での人気と菊花賞の結果の関係。同馬は神戸新聞杯14人気だったが、神戸新聞杯10人気以下だった馬は菊花賞【0-0-0-4】とさっぱり。もっともこの4頭で神戸新聞杯3着以内はゼロなので、ロバートソンキーは例外ともいえる。

セントライト記念組の前走着順



セントライト記念組【1-3-1-47】はさらにシビア。可能性があるのは1着【1-0-0-6】、2着【0-2-1-4】まで。3着【0-0-0-10】以下は厳しい。巻き返したのは17年10人気2着クリンチャー(セントライト記念9着)のみ。3着ガロアクリークはちょっと評価を下げたいところ。

乗り替わり別



乗り替わりの有無では、さすがに継続騎乗【9-7-7-98】が圧倒。未体験の3000m戦は人馬の力と呼吸を合わせたいところ。ただし乗り替わりは【1-3-3-32】で複勝圏内にはちょこちょこ出現。馬券圏内の7頭は13、5、4、13、10、7、8人気、18年7人気1着フィエールマンもいる。これだけでバッサリ行くのもやや怖いところだ。

皐月賞、日本ダービー、神戸新聞杯と、それぞれ異なる適性が要求される競馬を全勝したコントレイルに同世代の対抗馬は見つけにくく、極めて死角は少ない。神戸新聞杯の内容からヴェルトライゼンデとの差は秋になってさらに開いた。バビットがペースをつくり、スローから早めにペースアップする競馬にも対応可能。

2、3着候補は日本ダービーと神戸新聞杯で見せた適性からヴェルトライゼンデ。そしてロバートソンキー。雨降ってバビット、サトノフラッグ、あってガロアクリークぐらいだろう。未知なる魅力しては古馬相手に2勝クラスを勝ったアリストテレス、ダノングロワール、ディアマンミノルといったところだ。

菊花賞データインフォグラフィック



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。