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【秋華賞】デアリングタクトの最大のライバルは「5連勝中のノーザンF」「ディープ産駒」

2020 10/15 11:00門田光生
2020年秋華賞インフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

流れはローズSより紫苑S

2020年10月18日に京都競馬場で行われる第25回秋華賞。デアリングタクトが無敗での三冠達成なるか、今年の話題はそこに尽きるだろう。オークスから直行組の成績はどうなのか、また荒れるとすればどのパターンなのか。

今回も2010~2019年の過去10回のデータを基にして検証していきたい(特別登録時点でのメンバーの予想)。

秋華賞出走馬の前走(2010~2015)ⒸSPAIA
秋華賞出走馬の前走(2016~2019)ⒸSPAIA

秋華賞といえばローズS組が圧倒的に強いイメージ。確かに、過去10回のデータで見ても【4-6-7-56】で、連対馬の半分を占めている。最も有力なステップレースといって過言ではないが、2016年以降は傾向がガラッと変わっている。ローズS組で連対した10頭のうち、9頭が2010~2015年に記録したものなのである。

では、16年以降に躍進したステップレースは何か。それは重賞に昇格した紫苑S。2010~2015年のオープン格付け時代【1-0-0-27】に対して、重賞昇格後の16年以降は【2-2-0-15】。ローズSに代わって、紫苑Sの出走馬が連対の半分を占めていることになる。またオークス組も2010~2015年は【0-0-0-8】と低調だったが、16年以降は【2-0-0-3】。「ぶっつけでGI」ブームがこのレースでも起こっていることが分かる。

デアリングタクトは今回、オークスからの直行組。2018年アーモンドアイ(オークス1着)、2019年クロノジェネシス(オークス3着)と、オークスで好走した直行組が秋華賞を連勝しているのは大きな後押しとなりそうだ。

ノーザンファームが5連勝中

秋華賞出走馬の所属ⒸSPAIA

所属別では栗東所属馬が【8-7-8-80】で、美浦所属馬を圧倒している。連対数だけでなく勝率、連対率ともに分の悪い美浦勢だが、そんな中で気を吐いているのが国枝厩舎。【2-1-0-3】で連対率5割。現在2年連続で連対中だ。

今年はマジックキャッスルが出走しているが、これはトレンドの紫苑S経由組でもある。データ上では要注目の1頭といえるだろう。

秋華賞出走馬の前走着順ⒸSPAIA
秋華賞出走馬の前走着差(2着以下)ⒸSPAIA
秋華賞出走馬の前走人気ⒸSPAIA

秋華賞は紫苑S、ローズSと2つのトライアルが存在し、これらの上位3頭に優先出走権が与えられる。また、前走で条件戦を勝って賞金を加えた上がり馬が加わり、前走着順がいい馬が揃うことが多い。

そういう事情もあってか、前走着順上位の馬が好走する傾向で、ここ10年の連対馬全てが前走で掲示板に載っていた。逆に言えば、前走で6着以下の馬は厳しい戦いが待っていることになる。

掲示板に載ったとしても負けすぎはよくないようで、コンマ6秒以上離された馬は勝率0%、連対率3.1%となってしまう。負けた馬に関しては着順も大事だが、僅差の競馬ができているのも必須条件といえるだろう。

前走人気にも同様の傾向が出ており、前走で5番人気以内の馬が19連対。特に前走で1番人気に支持されていた馬は勝率19.4%、連対率27.8%で、群を抜いて数字がいい。

前走で好走したとはいえ人気薄、また逆に人気でコケた馬は信頼度が高くない傾向にあるようだ。

秋華賞出走馬の生産者ⒸSPAIA

牝馬限定のレースでは、勝負服が社台RHやサンデーレーシングなど、出走馬の半分近くが社台系で占めているケースをよく見かける。このレースもそれに当てはまるようだ。

秋華賞はここ10年で177頭が出走しているが、ノーザンファーム生産馬52頭、社台ファーム生産馬41頭が出走。何とこの2つの牧場で半分以上の出走頭数を占めているのだから凄い。ただ成績は対照的で、ノーザンファーム生産馬【8-3-1-40】に対して社台ファーム生産馬【0-4-3-34】と明暗が分かれている。

社台ファーム生産馬が強かったスプリンターズSと逆の現象なのだが、そのスプリンターズSは相性が悪かったノーザンファーム生産馬が優勝。データとは逆の結果が出てしまったが、このレースはどうなるだろうか。

ちなみに、ノーザンファーム生産馬が秋華賞を5連勝中。非社台系生産馬であるデアリングタクトがこれにストップをかけられるのかにも注目が集まる。

秋華賞出走馬の馬体重ⒸSPAIA

最後に当日馬体重のデータを。当日の馬体重が480~499キロの範囲で出走した馬が5勝。ほかの馬体重範囲(400キロから20キロ刻み)が勝率10%を切っている中で、この範囲の馬だけ勝率26.3%と抜けて高い。デアリングタクトはオークス出走時が466キロ。馬体が成長して帰ってきたという話なので、480キロ以上で出走できるかもしれない。こうなれば鬼に金棒だ。

余談だが、筆者もこれまでノルマンディー(デアリングタクトの所属する一口馬主クラブ)に3頭出資しているのだが、1頭はレース中に骨折して療養中、もう1頭はレース中に予後不良(もう1頭はデビュー前)。こういう職業をしているので故障はつきものと割り切れるが(もちろん、悲しいですが)、一般ファンであればのたうちまわっていたかもしれない。来年こそはデアリングタクトのような馬を選択したいものだ。

2頭軸が正解か

ここまでデアリングタクト中心にデータを検証してきたが、これといった減点材料は見当たらず、むしろプラスと思えるデータがたくさん出てきた。できれば消し材料を見つけたかったが、どうやら逆らうのは得策ではなさそう。

ほかの馬にも目を向けてみよう。デアリングタクト以上にデータに適した馬はいないだろうか。必須条件である「前走5着以内」「負けた馬はコンマ5秒差以内」「前走5番人気以内」をクリアし、あとは分のいい「栗東所属」「紫苑Sかオークス組」、さらに「ノーザンファーム生産」「当日馬体重が480~499キロの範囲に収まる可能性がある」も加われば文句なしだ。

さすがに全てを満たす馬はいないが、ほぼ完ぺきに近いのはリアアメリア。必須条件はもちろん、ステップレース以外は全てクリア。引っかかったステップレースも最近は勢いがないとはいえ、これまで王道だったローズSを経由。大きな減点は必要ない。デアリングタクトにしてもノーザンファーム生産でないので、データ上は互角の評価と考えていいだろう。

父はこのレースで4勝しているディープインパクト。秋華賞はこれまで24回行われているが、複数回勝った種牡馬はサンデーサイレンス(2勝)とディープインパクトだけ。残る18回は全て違う種牡馬の産駒が勝っている。リアアメリアにとって、牝馬三冠で最も適した舞台が秋華賞なのかもしれない。

データ上で互角、いや、むしろ断然人気馬より有利かもしれないというなら、リアアメリアを中心に考えていいだろう。もっとも、データ上で一騎打ちの可能性が濃厚なので2頭軸が正解なのかもしれないが。

この2頭以外で必須条件を満たしているのはクラヴェル、ソフトフルート、ダンツエリーゼ、マルターズディオサ、レイパパレ。このうちマルターズディオサ以外は2勝クラスを勝って挑んできた馬なのだが、2勝クラスを経由した馬の成績は【0-2-0-18】で、人気相応か、人気ほど走れていないケースが多い。この中で選ぶとすれば、抽選対象だがノーザンファーム生産という加点がつくクラヴェルとレイパパレか。

紫苑Sの勝ち馬マルターズディオサは分の悪い関東馬ということ以外は減点なし。これも外せない。マジックキャッスルは前走人気で減点対象となっているが、出走してくれば高確率で絡んでくる国枝厩舎所属馬。他の点に目をつむってでも押さえておいた方がいい1頭だ。

あと1頭、ぜひ付け加えたいのがミヤマザクラ。今回のデータでは前走着順で引っかかって本来は消しなのだが、桜花賞の時に「遅生まれで桜花賞は厳しいが、オークスか秋華賞が狙い」と書いた馬。オークスは7着とはいえコンマ5秒差だから、データ上でもぎりぎり許容範囲内ともいえる。ひと夏を越してこちらが思った通りの成長曲線を描いていれば、上位争いに食い込んでくるはずだ。

今回は◎リアアメリア、〇デアリングタクトの2頭を軸として、▲以下の5頭へ流したい。

◎リアアメリア
〇デアリングタクト
▲マルターズディオサ
△マジックキャッスル
×クラヴェル
×レイパパレ
×ミヤマザクラ

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
ノルマンディーに加入する前は別のクラブで一口馬主をやってましたが、最初に持った馬はデビュー2戦目の追い切りで故障して予後不良。とにかく持ち馬の故障率が半端ない。「無事これ名馬」、まさにその通りです。