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【毎日王冠】道悪想定でサトノインプレッサが急浮上 馬場適性から3頭に絞れるレース

2020 10/8 11:00三木俊幸
2020毎日王冠馬場適性チャートⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

開幕週でも差し届く

今週末から限定的ではあるものの、ようやく観客の入場が再開。大声で声援を送ることはできないが、熱気溢れる本来の競馬場のあるべき姿が帰ってくる。そうした中、10月11日(日)に東京競馬場で行われるのは天皇賞・秋に向けた重要な前哨戦、毎日王冠(GⅡ・芝1800m)。

最大の注目はサリオス。皐月賞、日本ダービーとコントレイルには敗れたものの、世代ナンバー2と言っていい存在。やや手薄なメンバー構成になったが、古馬相手にどのようなレースをするのか楽しみだ。今週も馬場適性の観点から分析、予想を行なっていく。

開幕週となる4回東京開催だが、6月の開催終了後に約39000平方メートルの芝の張り替えを実施。クッション性確保のためのエアレーション作業、シャタリング作業が行われている。JRAの発表では芝の生育は順調、良好な状態となっている。

過去10年時計


過去10年の毎日王冠の結果を振り返ると、全体的に勝ちタイムは速く、2018年は1:44.5、2019年は1:44.4と近2年は一段と高速化している印象だ。上がりタイムも32秒後半〜33秒後半と速い上がりが要求される馬場となっている。

しかし、開幕週だからと言って完全な前残りではなく、差し脚質が3勝、2着4回、3着3回、追込脚質が3勝、3着2回と好成績。10〜13頭の少頭数になることが多いため、よりSペースの瞬発力勝負になっていると考える。

例年は高速馬場&瞬発力勝負

では、馬券に絡んでいる馬はどのようなタイプに分類できるのか、過去3年で馬券圏内に絡んだ8頭(アエロリットが2回絡んでいる)について詳しく調べてみた。

2017年の1着馬リアルスティールは、超高速決着に強いタイプではないが、東京コースにおけるSペースの瞬発力勝負に強い中距離馬。2着サトノアラジンは高速馬場の瞬発力勝負に強いが、トップスピードの乗るまで時間がかかるのでM〜Hペース向き。3着グレーターロンドンは持ち時計こそなかったが、瞬発力勝負で結果を残してきた馬だった。

2018年は、安田記念で1:31.3、クビ差2着と高速馬場での持続力勝負に実績のあったアエロリットが逃げ切り。2着には持ち時計こそ特出すべきものがなかったが、瞬発力タイプのステルヴィオが追い込んで2着だった。3着には、不良の菊花賞を勝っていたとはいえ、新潟2000mで1:56.9という持ち時計のあった持続力タイプのキセキが粘り込んだ。

そして2019年勝利したダノンキングリーは、日本ダービー2着時のように持続力勝負にも対応できるタイプだが、共同通信杯では過去10年で2番目に速い1:46.8で勝利、上がり32.9と高速決着の瞬発力勝負にも実績があった。3着インディチャンプは、安田記念で1:30.9という超高速決着で上がり32.9を使って勝利するなど、高速馬場の瞬発力タイプに分類される。

このように、8頭中5頭が高速決着に対応した実績があり、その5頭中3頭が瞬発力勝負に強いタイプだった。ただ、今年は残念ながら台風の影響により週中から連日の雨が降り、渋った馬場でのレースとなりそう。これらのデータとともに道悪適性も考慮して予想を組み立てたい。

印は3頭に絞る

ここからは注目馬の適性について馬場適性チャートを用いて詳しく見ていく。 縦軸は高速馬場を得意とするスピード型か時計のかかる馬場に強いパワー型かを示す指標、横軸は上がりの速い馬場に強い瞬発力タイプか上がりのかかる馬場を得意とする持続力タイプのどちらに分類できるかを表している。

毎日王冠馬場適性チャート


【サリオス】
前走の日本ダービーは中団より後ろからのレースとなったが、本来は先行力もある。勝負どころで瞬時に反応するタイプではないので持続力寄りだが、昨年の秋の東京開催開幕週に行われたサウジアラビアRCでは、1:32.7のレコード勝ち、上がりは33.1をマークしている。能力は抜けており、皐月賞は雨上がりの稍重でのレースにも難なく対応していたので、道悪でも素直に本命とする。

【サトノインプレッサ】
2走前のNHKマイルCは大敗したが、前走の日本ダービーは内から伸びて4着と巻き返した。このことからもマイルでは忙しく、距離は2000m以上あったほうがいいタイプだと考える。1800mの毎日杯を勝利しているが、Hペースの重馬場だった。瞬発力のあるタイプではないので、良馬場なら条件的には合わないと考えるが、道悪で上がりがかかれば浮上してくる存在だ。少頭数のわりにペースが流れそうなのも歓迎。

【ザダル】
2走前、メイSは3着に敗れたものの、勝ち馬アイスストームから0.1秒差の1:44.4で走りきった。当時の東京コースは比較的内ラチ沿いが伸びる傾向にあり、9頭目を通って伸びてきたザダルのレースぶりは評価できる。前走の関越Sは、Hペースながら1頭だけ32秒台の上がりを使い、2着ウインガナドルに0.5秒差をつけて勝利。充実期に入っていると言えるだろう。道悪は割り引きだが、昨年のセントライト記念は重馬場で3着。こなしてくれるはずだ。

【ダイワキャグニー】
前走のエプソムCでは極悪馬場で勝利しているが、2018年と2019年のメイSを1:45.6、1:45.8というタイムで連覇している内容からも、本質的には良馬場向きだと考える。加えて去勢明けで本来の力が出し切れるかという不安もある。

▽毎日王冠予想▽
◎サリオス
○サトノインプレッサ
▲ザダル

ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場で取材活動を行っている。