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【スプリンターズS】グランアレグリアに危険信号 ノーザンF生産馬・乗り替わり大不振で波乱の予感

2020 10/2 06:00門田光生
2020年スプリンターズSインフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

見てるだけ、ではつらすぎる

昨年のスプリンターズSを見返してみたが、タワーオブロンドンの強さを再確認したとともに、直線入り口で上がったファンの歓声に思わず感動。やはりあれがないとGIという感じがしない。しかし、現在のルールでは大声を出しての応援は禁物、となっている場合ほとんど。果たして自分が現場にいたら、声を出さずに我慢できるのかどうか。正直、自信がない。

さて、2020年のスプリンターズSは10月4日(日)に中山競馬場で行われる。名の通りスプリント王を決める大一番。春の王者モズスーパーフレアが春秋GI統一を達成するのか、はたまた伏兵の台頭はあるのか。今回は新潟で行われた2014年を除く2009~2020年までの過去10回のデータを参考に検証していく。

スプリンターズS年齢別



最初は年齢から。勝ち馬を出しているのは4~6、そして8歳馬。3歳馬は15頭が出走して連対が1回と苦戦の傾向だ。8歳馬も1勝しているとはいえ、これは2010年の香港馬ウルトラファンタジー。日本馬の場合は4~6歳馬、中でも勝率・連対率がいい4、5歳馬が主力と考えたい。

セントウルS組が断然

スプリンターズS前走



GIにはいろいろなステップレースが存在する。スプリンターズSも例外ではないのだが、今回の出走馬はセントウルS、キーンランドC、北九州記念、そして安田記念のどれかを経由しての参戦となっている。この4レースを調べてみると、最も勝ち馬を出しているのはセントウルS。【6-4-4-46】で、連対馬の半分がここを前哨戦に選んでいた。勝率、連対率ともに悪くなく、最も信頼できるステップレースといえるだろう。

安田記念組はほかのレースと比べるとサンプル数が少ないので判断が難しいのだが、【1-1-0-6】と2頭が連対。ぶっつけでのGI参戦が当たり前となった今、休み明けを語るのはあまり意味がないのかもしれない。

問題はキーンランドCと北九州記念組。キーンランドCは42頭が出走して【1-2-4-35】で、勝率2.4%、連対率7.1%は物足りない数字。北九州記念は11頭が出走して勝ち馬はおらず、2着馬も1頭だけ。セントウル組と比較するとやはり割り引かざるを得ないだろう。

スプリンターズS前走着順

スプリンターズS前走人気

また、前哨戦は使ったレースだけでなく結果も重要で、4着以内(連対率19.2%)と5着以下(同5.1%)では大きな差がついている。前走人気はさらに顕著に出ていて、4番人気以上が17連対に対して、5番人気以下で連対したのは1頭だけ(残る2頭のうち1頭は前走取消、あと1頭は前走海外で人気データなし)。劣勢のキーンランドC、北九州記念を経由して本番で連対した4頭は、いずれも前走4着以内、かつ前走4番人気以内の条件を満たしていた。

グランアレグリアに2つの減点材料

スプリンターズS種牡馬

このレースで好走している父系を上から並べると、スウェプトオーヴァーボード、キングカメハメハ、アドマイヤムーンの順となる。この3頭は全てミスタープロスペクター系の種牡馬。中山の芝でミスプロ系が大活躍というのは意外だが、父系にミスプロ系を持つ馬がいれば注目していいだろう。ちなみに、今年の出走馬ではカイザーメランジェ、ダイアトニック、ダイメイフジ、ダノンスマッシュ、モズスーパーフレアがそれに該当する。

スプリンターズS騎手



騎手はというと、勝ち馬10頭全てが前哨戦から続けて同じ騎手が乗っており、継続騎乗馬の成績は【10-9-5-74】と優秀。対して、乗り替わった馬は【0-1-5-54】。もし、このデータが今回のレースにも反映されると大変なことになる。何せ今回はエイティーンガール、グランアレグリア、ダイアトニック、ダノンスマッシュ、ミスターメロディ、レッドアンシェルなど、人気しそうな馬がことごとく乗り替わっているのだ。何だか波乱の予感しかしなくなってきた。

スプリンターズS生産者



また、大レースに強いことで知られるノーザンファームだが、スプリンターズSに限っては苦戦の傾向。データ範囲内で14頭が出走して2着が1回のみ。2000年までさかのぼっても【1-1-3-20】で、勝ち馬は2008年のスリープレスナイトだけである。苦手なレースと判断して問題なく、同ファーム生産馬のグランアレグリア、レッドアンシェルには嫌なデータといえるだろう。なお、同じグループの社台ファームは2000年以降の成績が【5-4-1-26】で得意としているレースだが、残念ながら今年は出走馬がいない。

スプリンターズS馬体重



最後に馬体重を。ローズSで見事に裏切られたデータだが、懲りずにもう一度。大型馬がいいというより小柄な馬が苦戦傾向で、特に459キロ以下だと【0-1-2-18】と連対馬は1頭だけ。ただ、唯一の連対馬は今年も出走しているラブカンプー。この馬は例外として扱った方がいいかもしれない。

春秋スプリントGI制覇へ

残念ながら、今回は減点なしの馬がいない。そんな中で、比較的減点が少なかったのはモズスーパーフレア。成績のいい5歳馬で、前走着順、前走人気とも上位。父が相性のいいミスプロ系、かつ前走から継続騎乗。馬体重も楽々クリアだ。ステップレースが分の悪い北九州記念【0-1-0-10】であることが減点材料なのだが、この2着馬というのが昨年のモズスーパーフレア自身なのだから割り引く必要はないのかもしれない。

今回の集計期間である2009年以降、同一年の春秋スプリントGI制覇を成し遂げた馬はローレルゲレイロ、ロードカナロア、そしてファインニードルの3頭。これが多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれだが、個人的には3回もあったのかという印象。データから見ても、今年モズスーパーフレアが偉業を達成する可能性は高いとみる。

続いてダノンスマッシュ。こちらの減点材料は【0-1-5-54】という乗り替わりだけ。川田騎手ならこの馬の癖は知っているはずで、初騎乗となる乗り替わりほどは影響しないとみれば、十分狙える。同じく人気が予想されるグランアレグリアも乗り慣れたルメール騎手に戻るのだが、こちらはこのレースを苦手としているノーザンファーム生産馬。妙味を考えても今回は消しだろう。

あと、減点が少ないところではミスターメロディとライトオンキューの2頭も押さえておこう。

▽スプリンターズS予想▽
◎モズスーパーフレア
〇ダノンスマッシュ
▲ミスターメロディ
△ライトオンキュー


《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
最強スプリンターといえば、個人的には文句なしにサクラバクシンオー。その血を引く馬が今年も登場。データ上では推せなかったものの、頑張ってほしいものです。