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【セントライト記念】菊花賞で一発あるか? 変幻自在の逃げ馬バビット

2020 9/22 11:00勝木淳
2020年セントライト記念位置取りⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

馬場状態さえかみ合えば一発あるバビット

JRAこと日本中央競馬会の設立は1954(昭和29)年9月16日。遡ること13年前、戦前に誕生した史上初の三冠馬がセントライト。その名を掲げたセントライト記念は1947(昭和22)年、終戦から2年後に日本競馬会によって設立された。

66年の日本中央競馬会よりも歴史が長く今年で74回目を迎えたセントライト記念。レース名に残すことによって79年前の三冠馬は令和の時代に生きる競馬ファンの記憶に刻まれる。歴史とは必ずどこかに形として残さねばならない。

セントライトと同じく三冠を目指すコントレイルへ挑む馬に注目が集まった第74回セントライト記念。先手を奪ったバビットが逃げ切り、ラジオNIKKEI賞から重賞連勝。菊花賞でダークホースとなりうる逃げ馬の登場は本番に向けて楽しみとなった。

スタンド前で早々に先手を奪うと初角突入からペースを12秒台後半に落とし、1000m通過は1分2秒6の超スローペースに後続を陥れる。外回りの奥深い2角から向正面は動きたくとも動けない地点。後続を引きつけながら十分に息を整えたバビットは3角手前からジワリとペースをあげる。

後半1000m11.8-11.6-11.9と4角手前でペースをあげきることで後続の仕掛けを惑わす。最後の400mは12.4-12.7。伸びはせずとも最後まで脚を使い切って武器であるスタミナを披露。最後にサトノフラッグ以下が押し寄せたところをしのいだ。

無謀なレースをしないクレバーな馬。ベテラン内田博幸騎手の意のままに動くバビットは未知なる距離3000m菊花賞でこそという馬ではなかろうか。菊花賞は中盤の1000mが極端に遅くなる傾向にあり、今日のラップ構成は菊花賞に近かった。

父ナカヤマフェスタとは親子制覇。父はロジユニヴァースが勝った極悪馬場の日本ダービー4着、時計を要した宝塚記念を勝ち、凱旋門賞でワークフォースの2着がある。バビットもやや重のラジオNIKKEI賞に続きスローながら最後の600m37秒0もかかる馬場でセントライト記念を勝った。菊花賞当日の馬場状態次第ではコントレイルにあるいは一矢報いる存在となるのではないか。

2着以下に残された課題とは

上がり600m37秒0と終いがかかる競馬だったからか2着サトノフラッグ、3着ガロアクリークはどうにももどかしい。2着馬はまくる脚にこそ見どころはあったものの、そこから直線での弾けっぷりが物足りない。あの勢いで直線に向いて加速していないバビットを捕らえられないのは休み明けの分かあるいは……。菊花賞に向けて課題は残った。

3着ガロアクリークはスローをインの3番手。4角で一旦2番手にあがりながらそこで手ごたえが冴えず、最後の直線は粘りこんだにすぎない。スプリングSで見せたようにコーナーリングに難があるよう。京都の4角はかなり急角度。こちらは距離も含め課題は多い。

同じく緩い流れを積極的に進めたココロノトウダイは7着。3角から11秒台を連発したバビットの早めの仕掛けに反応しきれなかった。このあとは仕切り直しとなるだろうが、今回はマークした馬が強すぎたにすぎず、安定した先行力は武器であり、もっとスパート地点が後ろになる競馬であれば勝てる力はある。

あくまで次週の神戸新聞杯の結果次第ではあるが、菊花賞へ向けて本番で好走できそうな馬はバビットぐらいで、レベルが高いレースとはいえない。しかしながら中山の芝はどうしたのだろうか。バビットが5ハロン勝負を挑んだ結果とはいえ、最後の600m37秒0でサトノフラッグや4着ラインハイト、5着ヴァルコス以外はほぼ止まっていた。この4、5着馬とて伸びてきたのは大勢が決したあと。それほど貯めないと最後に目立った脚が使えない馬場であり、例年の秋の中山とは全く異なる馬場状態にあるのは事実だ。

来週以降は馬場状態が中山攻略のカギを握る。

2020年セントライト記念位置取りⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。