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【セントウルS】中京開催でも「5歳牡馬」「継続騎乗」 全てのデータに当てはまったのは1頭のみ

2020 9/10 17:00門田光生
セントウルSインフォグラフィック
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今年は中京開催

阪神競馬場の中にはセントウルガーデンという広場があって、そこにセントウル像が設置されている。その姿は上半身が人間で、下半身は馬。ケンタウロスとどう違うのだろうか?と疑問に思ったりしたのだが、答えは言語による読み方の違いであった(ラテン語:Centaurus、英語:Centaur)。

馬名にも同様の事象が起こることがある。有名なのはDanzig。英語読みすれば「ダンジグ」だが、ドイツ語読みすると「ダンツィヒ」。某有名競馬ゲームでは「ダンチヒ」という馬名で登場していたので、その世代にはこちらの方がしっくりくるかもしれない。

また、違う意味での読み方問題もあって、2015年のアメリカ三冠馬American Pharoahもややこしい1頭。現地の実況では「アメリカンファラオ」と呼ばれていたと思うが、ファラオの綴りは正しくは「Pharaoh」。馬名登録の際に間違ったという話なのだが、問題は引退して種牡馬となり、産駒がすでに日本に輸入されていること。その産駒の父親欄には「アメリカンファラオ」と表記しているところもあれば、「アメリカンフェイロア」と表記しているところもある。

JRAが読み方を統一してくれるとありがたいのだが、輸入されていない外国馬に関してJRAは英語表記のまま。外国馬名をカタカナで使っているメディアは個々を日本語読みに変換して馬柱に乗せるのだが、これが結構大変な作業だったりするのだ。「もっと英語を勉強しておけばよかった」と半泣きになりながら、辞書片手に変換した悪夢がよみがえる。

そのセントウルSは9月13日(日)にいつもの阪神、ではなく、今年は中京競馬場で施行される。右回りと左回りの違いを筆頭に、かなり形態が違う競馬場で行われる今回。果たしてどこまでデータが役に立つかだが、スプリンターズSの重要な前哨戦という位置付けは今年も同じ。2010~2019年の過去10回を参考に検証していこう。

460キロ以下だと赤信号

セントウルS年齢

いつも通り年齢から見ていく。最も勝率がいいのは4歳世代で、最多の4勝を挙げている。3、5歳馬も3勝しており、3歳馬と4歳馬は勝率、連対率ともにほぼ差はない。逆に振るわないのが6歳以上。勝ち馬が1頭も出ておらず、連対馬も2頭だけ。連対率も3%を少し超える程度という低調なもの。しかも、連対した2頭のうち1頭は外国からの遠征馬。軸は3~5歳馬から選択するのが無難といえる。

セントウルS馬体重別

セントウルS性別

セントウルS斤量

スプリント戦=大型馬が活躍、というのはデータを詳しく調べるようになって学んだことのひとつ。このレースに関しては500キロを超える大型馬が大活躍しているわけではないが、460キロ以下の馬には厳しいデータが出ている。当日の馬体重が460キロ以下だった30頭中、連対したのはわずかに1頭だけなのだ。これは大きな減点材料になる。

性別では牝馬より牡馬・セン馬の方が数字がいい。牡馬・セン馬の方が倍近く出走しているのだが、連対率は牝馬の9.8%に対して牡馬は16.0%と大きく上回っている。

また、酷量といわれる58キロ以上を背負った馬の成績が【2-3-1-2】で、連対率は何と62.5%もある。58キロ以上背負うのは必然的に実績馬ということになるが、格を重視できるあたりが秋競馬の始まりという感じがする。ただ、今年は58キロ以上を背負う馬が1頭も出走しておらず、このデータが使えないのは残念だ。

継続騎乗が断然有利!

セントウルS前走クラス

夏競馬と違い、勢いだけでは通用しないというデータをもうひとつ紹介する。前走を走ったレースをクラス別に分けてみると、重賞を使った組が【9-8-9-84】。これに前走外国【1-2-0-1】を足すと、連対馬20頭の全てが該当する。馬券に絡んだ30頭でみても、例外は2012年の3着馬アンシェルブルー(前走はオープンの朱鷺S)だけ。前走で重賞を走っていることもほぼ必須条件となる。

セントウルS前走距離

セントウルSはスプリント戦なので、前走でマイル以下を走った馬がほとんど。馬券に絡んだ馬も全てそこから出ているのだが、なぜか1400m戦を経由してきた馬だけが【0-0-1-15】と結果が出ていない。この距離を使って挑んで来た馬は割引が必要だ。

セントウルS前走人気

前走着順については、今回は珍しく目立った傾向はなかった。ただ、前走人気に関しては1、2番人気に支持された馬が好結果を出している。前走1番人気に支持されていた馬は勝率19%、2番人気に支持されていた馬は連対率38.5%と、3番人気以下だった馬と比べて数字がよくなっている。

セントウルS前走騎手

最後に乗り替わりについて。前走と同じ騎手が乗った馬が9勝、乗り替わった馬は1勝。乗り替わった馬が唯一勝ったのは2018年(ファインニードル)だが、前走が香港遠征で外国人騎手が乗っていたという特殊な例。このレースは前走から継続騎乗の馬が断然有利といっていいだろう。

前走大敗を気にする必要なし

冒頭でも書いたように、今年は中京競馬場で行われるセントウルS。そこが一番の問題なのだが、中京でセントウルSが行われたのは10年以上も前になるし、当時は改修前の旧中京競馬場。それだけを参考にするのは無理があるので、上記で挙げてきたデータを基にして結論を出すしかない。

セントウルSの強い加点データは「前走1、2番人気支持」、逆に割引となるデータは「6歳以上」「460キロ以下」「前走条件、オープン」「前走1400m」「乗り替わり」となる。今回はマイナス材料が多いが、これらを全てかいくぐり、さらに「前走1、2番人気」の加点もある馬はタイセイアベニール1頭だけ。北九州記念組は7連対と最もメジャーな前哨戦で、昨年の2着馬ファンタジストは北九州記念14着からの巻き返し。データでも前走着順は本番にほぼ影響しておらず、軸はこの馬でいいだろう。

今回、強い加点データである「前走1、2番人気」だが、これに当てはまるのは3頭しかいなかった。上記のタイセイアベニールのほかに、ビアンフェとボーンスキルフルの2頭がそれに該当。ただ、両馬とも連対率0%の「前走が条件戦、もしくはオープン経由」に引っかかる(※葵Sは未格付けのため、データ上はオープンに分類)。残念だがこの2頭には消えてもらう。

加点はないが、減点もないのはダノンスマッシュ、トゥラヴェスーラ、ミスターメロディ、メイショウキョウジの4頭。この中ではコース実績があるミスターメロディとメイショウキョウジを上位に取りたい。

今回はタイセイアベニールを含めて全て5歳牡馬となったが、さて結果はいかに。

◎タイセイアベニール
〇ミスターメロディ
▲メイショウキョウジ
△トゥラヴェスーラ
×ダノンスマッシュ

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
上記で何度も書いているように、今週から西の開催は阪神ではなく中京競馬場。実際、開催していない競馬場へ行ってしまい途方に暮れた大先輩がいました。競馬カレンダーが体に染みついていればいるほどほど陥りやすい罠。習慣とは恐ろしいものです。