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【クイーンS】PP指数最高値は逃げ馬と追い込み馬 極端な脚質が波乱要素を生み出す

2020 8/1 11:00山崎エリカ
2020年クイーンS PP指数インフォグラフィック
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ⒸSPAIA

上がり馬vsGⅠでは少し足りない既成勢力の対戦図式

クイーンSは夏場唯一の牝馬限定重賞で、かつてはトップクラスの牝馬が出走してくるレースだった。しかし、2006年より5月にヴィクトリアマイルが創設され、春シーズン、秋シーズンと牝馬のレース体系が整ったことで、GⅠ上位馬はこの時期に休養することが多く、一昨年の優勝馬ディアドラのような古馬GⅠ馬が出走してくることは稀である。

今年は3歳馬こそ不出走だが、3歳馬も含めた上がり馬vsGⅠで少し足りない既成勢力の対戦図式で行われることが多く、まさにそのパターン。様々な路線から出走馬が集うレースだけに、どのレースのレベルが高く、どの馬が実力上位なのか、しっかり把握することがこのレースを予想するうえでの第一ステップである。

最高値はスカーレットカラーとコントラチェックの2頭

2020年クイーンSPP指数


出走馬が経由した、昨秋以降のGⅠ以外のレースでレベルが高かったのは、府中牝馬S、ターコイズS、阪神牝馬Sの3レース。どのレースも優勝馬の指数が-23で決着している。つまり府中牝馬Sを勝ち、阪神牝馬Sでも2着と好走したスカーレットカラーと、ターコイズSの覇者コントラチェックはここでは最高値が最上位となる。しかし、スカーレットカラーは追い込み馬、コントラチェックは逃げ馬と極端な脚質であることが面白く、波乱要素を生み出している。

特にコントラチェックは逃げ馬らしく、ターコイズSのように高速馬場で逃げた場合の破壊力は大きいが、時計の掛かる馬場で逃げられなかった場合は非常に脆い。不良馬場の外枠で逃げられなかった中山牝馬Sでは、別馬のように殿負けを喫している。

開催序盤の札幌で高速馬場というのは、コントラチェックにとって好条件だが、内枠に同馬よりもテンの速いタガノアスワドやナルハヤが入ったとなると、さすがに逃げられないだろう。また、外枠だが玉砕逃げを打つモルフェオルフェも出走しているので、今回は揉まれ弱さを見せて、苦戦しそうだ。

一方、逃げ馬が多数出走することで、展開に恵まれる可能性が高まったのは追い込み馬のスカーレットカラーのほう。同馬はエイシンティンクルが逃げ、クロコスミアやラッキーライラックが捲りに動いたことで淀みなく流れた府中牝馬Sでは、4コーナー通過順が14番手と馬群最後尾から追い込んで優勝している。加えて、トロワゼトワルが平均ペースで逃げた阪神牝馬Sでも、追い込んで2着と善戦した点は評価できる。

前走のヴィクトリアマイルは、休養明け好走後の一戦。反動が出たようで出脚が悪く、超高速決着となった中、外から位置を上げていくロスの大きい競馬でブービーに敗れた。これも自ら動けない追い込み馬の宿命。しかし府中牝馬S同様に、芝1800mで平均ペースよりも速い流れになれば、巻き返しは可能。今回はスカーレットカラーに向いた条件になると思われるので、有力な一頭だろう。

能力値1位はフェアリーポルカ

能力値1位は、中山牝馬S、福島牝馬Sを連勝したフェアリーポルカである。中山牝馬Sではコントラチェックの直後でレースを運んだが、同馬が早々と失速したことで、直線では早仕掛けを強いられる形となった。前に行った馬が厳しい競馬となった中での勝利はなかなか立派。

ただし、前走の福島牝馬Sは、外枠から出負けしたことで、後方からのレースとなった。馬場の良い内から3頭目を狙いすまし、鞍上がうまく乗ったのは否めない。今回さらに相手が強化されること、エリザベス女王杯路線に向けての始動戦であることを考えると不安もある。逆に加点材料は、近2走の上昇力と差し馬のフェアリーポルカにとって展開に恵まれる可能性があること。過信するのは禁物だが、押さえておきたい一頭ではある。

能力値2位は、1勝牝馬のビーチサンバだ。同馬は、トップスピードは遅いが、逃げたコントラチェックに自ら絡んで激流に持ち込んだ秋華賞でも5着に粘ったように、しぶといタイプ。近走で崩れたのは距離が1400mと短い京都牝馬Sと超高速決着となったヴィクトリアマイルのみ。

芝1800mのローズS・2着時がこの馬の最高値であるように、芝1800mの高速馬場なら自分の力を出し切ってくる。レースのレベルが低かった時に馬券圏内に突入するタイプなだけに、買い時と消し時が難しいが、最高値が-20である以上、2着、3着ならば通用する可能性があるだろう。

能力値上位馬で人気の盲点になりそうなのは?

スカーレットカラーと並んで、能力値3位なのはナルハヤ。同馬はトップスピード不足を補うために前に行く競馬を繰り返すことで持久力が強化され、今年に入って芝1800mの2勝クラスを勝利し、前々走のパールSでも2着と好走。一応は格上挑戦の立場となるが、前走のマーメイドSでも4着と善戦しているように、本当に地力をつけた。

ナルハヤは前走がハンデ51kgだったことから、侮られている感がある。しかし、前走は稍重発表以上に時計を要している中で逃げ、終始勝ち馬のサマーセントにプレッシャーをかけられるレースとなった。3〜4コーナーの外からサマーセントに並ばれ、早仕掛けをせざる形になりながらもしぶとく粘ったが、ラスト1Fの急坂で失速。「時計の掛かる阪神でなければひょっとして!?」と感じさせる内容だった。

この馬は逃げ馬だが、気性的に問題があって逃げているわけではない。前記したように決め手不足だから逃げているだけであり、もともとは折り合える馬。前々走では、スローペースにコントロールして2着と好走している。むしろ、折り合って前走よりも楽な競馬をさせた場合が怖いだろう。これだけ逃げ馬が揃ったとなると、さすがに他馬に行かせて、先行策を取りそうなだけに、人気の盲点となったここは積極的に狙いたい馬である。

能力値5位は、前走・初音Sで接戦を制してオープン入りを果たしたサムシングジャストだ。1800mへの延長で鋭い末脚を引き出せた点は収穫ではあるが、前走は時計の掛かる馬場のスローペースで、ラスト3F目が後半最速ラップとロングスパートが要求された中、3~4コーナーでは最内をロスなく立ち回ったもの。全てが噛み合っての好走だった感が否めず、相手強化のここは狙いづらい。

今回の超絶穴馬は?

デビュー2戦目のサフラン賞では、逃げてコントラチェックを撃破し、昨年6月の白百合Sでは、モズベッロを2着に降して勝利したレッドアネモスが面白い。白百合Sでは楽にハナを主張したものの、途中で抑えて他馬に行かせて2列目ポケットからレースを進める。掛かり気味になりながらも、前に馬を置くことで我慢させ、直線で外に持ち出すというレース内容だった。

レッドアネモスはスピードがあるが、気性難でゲートが不安定で、そのスピードをコントロールしきれずに敗れているのが実情。このパターンは通常なら逃げ馬にしてしまう場合が多いが、主戦がいないせいか、ぞれぞれの騎手が好みの乗り方をして敗れているという悲劇の馬だ。

ただしこのようなタイプの馬は、一度行き切らせてバテさせると、競馬を覚えることが多い。前走のマーメイドSでは、レースがオーバーペースで流れた中、行き切ってバテた。今回はガラリ一変が見込める。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)フェアリーポルカの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。