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キングカメハメハ産駒のGⅠ馬4頭も登場!2020年に産駒がデビューする新種牡馬の評価は?②

2020 7/16 06:00門田光生
モーリス血統
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ⒸSPAIA

ドゥラメンテ(初年度種付数284頭/血統登録数189頭)

前回 「ポスト・ディープインパクト、キングカメハメハはいるのか?2020年に産駒がデビューする新種牡馬たち」 では、モーリス、ダノンレジェンドなどをご紹介したが、今回は2020年の新種牡馬レビューの後半戦。

キングカメハメハ産駒のGI馬が4頭同時にデビューということになったが、抜け出すのは果たしてどの馬か?(産駒の成績は7月12日現在)

父はKingmanbo系の日本ダービー馬キングカメハメハで、母はGI2勝のアドマイヤグルーヴという超良血馬。自身は皐月賞、日本ダービーの二冠を制した。「荒々しい」という馬名の由来通り気性の激しい馬だったが、それがいい方向に向いた典型例だろう。

「ワープした」と表現された皐月賞。抜群に反応が良く、そして切れた馬だったが、それが産駒にうまく伝わるかどうか。それ以上に激しい気性がどう影響するのかも気になるところ。キングカメハメハ、サンデーサイレンス、トニービン、ノーザンテーストと社台のリーディングサイアーの血で固められており、配合相手を選ぶのが難点といえば難点。

それでも成功する可能性が高いと思うのは、現役時代に底を見せていなかったこと。競走馬として余力を残して(故障を含む)引退した方が、種牡馬として成功する確率が高いと個人的に思っている。

初年度、そして2年目と種付け数が280頭を超えており、最初の2年でGI級を出したいところ。4月24日に浦和競馬場でトーセンウォーリアが新馬勝ち。この馬はサンデーサイレンスとKingmanboの3×4を持つ注目の配合で、6月29日に早くも2勝目を挙げている。JRAでも6月7日阪神競馬場でアスコルターレが新馬勝ち。

ホッコータルマエ(初年度種付数164頭/血統登録数110頭)

父はKingmanbo系のキングカメハメハ。現役時代はJRAで6勝、地方交流重賞で11勝。GI級のレースを10勝し、獲得賞金も10億円を突破したダートの一流馬。

母系はCherokee Run×Unbridledという米血配合。同じキングカメハメハ産駒でダートGIを勝ったベルシャザールよりさらにダート向き。自身が中距離を得意としたこと、仕上がり早さを含めて2歳戦は微妙と思っていたが、すでに4頭が新馬勝ち。

しかも門別、大井、川崎、名古屋と異なる場所でのものだから価値がある。地方競馬の新馬戦は重賞並みの賞金設定となっているところが多く、新馬勝ちする意味は非常に大きい。スタートダッシュが決まったことにより、来年以降も種付けが殺到しそうだ。


ちなみに名古屋のダイセンハッピーは50秒を切る好時計(900メートル戦)で圧勝したが、この馬の母系はジャングルポケット×タヤスツヨシという中距離配合。速さの源が父系由来のものと推測するなら、ホッコータルマエ自身に想像以上のスピードが秘められているのかもしれない。

同じ父を持つドゥラメンテ、ラブリーデイ、リオンディーズは芝の中距離向きと予想され、種牡馬としての方向性が違うのは大きなアドバンテージとなるはず。

マクフィ(初年度種付数142頭/血統登録数102頭)

Mr.Prospector系のDubawiを父に持つ、欧州の一流マイラー。フランス、オーストラリア、ニュージーランドでGI勝ち馬を出しており、種牡馬としてはすでにベテランの域に入っている。

同じ英国出身のハービンジャーが大成功を収めた。そのハービンジャーより軽めの血統構成でマイル~中距離が産駒の活躍の場になりそう。自身の実績が芝といってもMr.Prospector系の馬だし、同じ父を持つモンテロッソが北海優駿勝ちのリンゾウチャネルを出したから、この馬もダートでの活躍馬を出すだろう。というか、ダート向きの種牡馬になってもおかしくないと思う。今年の2歳戦で4頭の勝ち馬を出しており、そのうちのマテーラフレイバーは早くも2勝目を挙げている。

ミッキーアイル(初年度種付数147頭/血統登録数72頭)

サンデーサイレンス系ディープインパクト産駒の名マイラー。2歳の未勝利戦でレコード勝ちし、引退した年のマイルCSで勝利。早くから完成された馬だが、成長力も兼ね備えていた。

母系がロックオブジブラルタル×Nureyevだから距離に限界がありそうだし、ダートより芝向き。守備範囲の狭さを産駒の質でカバーできるかが焦点となる。仕上がりの早さとスピードは現代競馬にとって大きな武器となるはずで、早めにマイルの大物を出したい。7月4日に阪神競馬場でデュアリストが待望の産駒初勝利を挙げた。

モーリス(初年度種付数265頭/血統登録数176頭)

JCを勝ったHail to Reason系スクリーンヒーローの代表産駒。現役時代はJRA、香港でGIを合計6勝。特に香港で3戦3勝、そのいずれもが違うレースというところに価値がある。

父がステイヤー、母系もメジロ血脈ということで潜在的なスタミナは相当あると考えられる。ただし、モンタヴァル、フィディオン、モガミという癖のある血が入るので気性難が心配。加えて、母の父はダートが苦手だったカーネギーというのも悩ましい。個人的なイメージを言わせてもらえば、ホームランか、三振かというタイプではないかと思っている。

たとえが古いが、広島カープの元助っ人・ランスのイメージだ。3年連続で200頭以上に種付けしており、これだけ打席数が多ければ大当たりが出るはず。血統の額面通りならステイヤーが、気性難が出ればスプリンターが、スピード不足に出ればダート向きと、今年の新種牡馬の中では最も予想が難しい馬。早熟ではないから、種牡馬の世界は早々に結果が求められるのが難しいところ。そういった意味では、7月11日にカイザーノヴァが新馬勝ちを収めたのはいい傾向。この後に続く馬がどんどん出てくれば。

2020年産駒がデビューするモーリスの血統表

ⒸSPAIA



ラブリーデイ(初年度種付数138頭/血統登録数101頭)

父はKingmanbo系のキングカメハメハ。2歳8月に新馬勝ちして以降は重賞戦線でのらりくらりと戦っていた印象だったが、5歳に覚醒。その1年だけで10戦して重賞6勝、GIも2つ勝った。

ドゥラメンテと同じく、この馬も社台のトップサイアーが重ねられている。加えて、同じ年にキングカメハメハ産駒の新種牡馬が複数デビュー。母系に求める血もよく似ており、単純に種牡馬としての基本性能が問われるところ。

もしファーストシーズンサイアー争いに顔を出すようなら、そのポテンシャルは相当と思われる。どう見ても芝の中距離向きだが、そこは何にでも化ける可能性があるキングカメハメハ系。スプリンターやダート馬を出しても驚けない。6月30日に門別競馬場でコルデイロが初勝利を挙げ、7月4日には阪神競馬場でジャカランダレーンが新馬勝ちを収めている。

リオンディーズ(初年度種付数191頭/血統登録数133頭)

父はKingmanbo系のキングカメハメハ。今年はGIを勝ったキングカメハメハ産駒が4頭同時に種牡馬デビューとなり、どうしても比較されてしまうのは仕方がないところ。現役時代は朝日杯FSを勝ち、クラシックではディーマジェスティ、マカヒキ、サトノダイヤモンドら強敵としのぎを削ったが、皐月賞(5着)で一番強い競馬をしたのはこの馬だったと思う。続く日本ダービーが現役最後のレースとなり、故障のため早々と引退。ドゥラメンテと同じく、この馬もキングカメハメハ産駒にしては気性がきつかった。

兄エピファネイアが初年度からオークス馬を出し、弟サートゥルナーリアがクラシック勝ち。特に弟とは4分の3が同血なので、追い風が吹いているうちに実績を作って種牡馬としての立ち位置を確立しておきたい。目指せ、ブラックタイドだ。スプリンターがJC勝ち馬を出すキングカメハメハ系だけに産駒を予測するのは難しいが、額面通りなら芝の中距離が主戦場となるはず。デアリングタクトがそうだったように、配合相手には有能な米血がほしい。7月5日に福島競馬場でマルスが待望の初勝利を挙げた。

ここまで初年度種付頭数が多い馬を中心に紹介してきたが、これ以外にも血統登録数がわずか3頭ながら、すでに2勝馬が出たゴールスキー(父ネオユニヴァース)や、少ない産駒からJRAで勝ち馬を出したキングカメハメハ系の隠し玉クリーンエコロジーなど、魅力的な新種牡馬がたくさんいる。

ファーストシーズンサイアー争いはまだ始まったばかり。もちろん大物誕生も楽しみだが、産駒の芝やダートの適性、距離、重馬場の巧拙などの特徴を早く見極めることができれば、それが馬券的中への近道にもつながるだろう。

門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。 ロードカナロアの成功でまずはひと安心のキングカメハメハ系。同系統のホッコータルマエがダート方面に枝を伸ばすことができれば、将来的にディープインパクト系を超える繁栄も夢ではないはずです。