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【日本ダービー】「1番人気16勝」「キャリア5戦が10勝」「5月前半生まれが6勝」など歴代ダービー馬の特徴とは?

2020 5/27 06:00高橋楓
歴代ダービー馬一覧ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

歴代ダービー馬一覧ⒸSPAIA

「生後2か月のセレクトセール」ディープブリランテ~第79回(2012年)

今から30年前の1990年5月27日。19万6517人ものファンが集結した東京競馬場で日本ダービーが行われた。バブル景気絶頂期、オグリキャップが社会現象になりぬいぐるみが爆発的に売れるほどであった。

競馬という文化がおじさんの「ギャンブル」といった見られ方から、年齢層の問わない「スポーツ」というイメージに少しでも変わったのは正にこの頃からではないだろうか。人それぞれ思い出のダービーがあると思うのだが、今回は3つの項目から思い出のダービー馬を選出したい。

ダービー馬 誕生月(近30年間)ⒸSPAIA



馬の成長は人間よりもはるかに早く1か月違うだけで数か月分の差が生じてしまう。そんなハンデを乗り越えて近30年間で7頭もの5月生まれのダービー馬が誕生している。

例えば5月8日生まれのディープブリランテもその一頭だ。当歳のセレクトセールは早生まれの方が馬体も大きく、カタログの写真映えもするため高値がつくケースが多い。

そんななかわずか生後2か月で上場され、同じ父ディープインパクト産駒が最高購買価格1億5500万円で取引されるなか、ディープブリランテは平均的な価格の3100万円で落札される。リーマンショックの後、まだディープインパクトの種付け料金が1200万円の時期だったとしても、母がフランスの重賞馬という事を考えればいかに安い値段だったかが分かる。のちに496kgまで成長しダービーを制するのだから、サラブレッドの成長というのは奥が深い。

近30年間で振り返ると、一番早く生まれたのは昨年の優勝馬「新ひだか町の星」ロジャーバローズの1月24日で、一番の遅生まれは第70回(2003年)の「外国人騎手初のダービー制覇の立役者」ネオユニヴァースの5月21日である。

月別で見ると1月2頭、2月4頭、3月10頭、4月7頭、5月7頭となっていて、月を前後半に分けて考えると実は5月前半生まれが6頭と最多になっている。ダービーの頃になると牡馬の成長差はなくなり、その時点の完成度よりも真の実力が試される時期といってもいいだろう。

「和製ラムタラ」フサイチコンコルド~第63回(1996年)

ダービー馬 誕生月(近30年間)ⒸSPAIA



近30年間のダービー馬のキャリア数で3戦以下だった馬はただ1頭。「音速の末脚」を披露して優勝したフサイチコンコルドだけだ。それ以外の29頭は4戦から10戦までで、最多は5戦のキャリアで挑んだ10頭になっている。

とにかく、63回フサイチコンコルドの衝撃は凄かった。当時「武豊はダービーだけは勝てない」というジンクスがあったのだが、ダンスインザダークとの出会いで今年こその空気が漂っていた。

1番人気でレースに挑み直線では正攻法の競馬で抜け出すのだが、大外から飛んできたフサイチコンコルドに交わされ2着。ジンクスというものは簡単に破られないものだと痛感した。

そして、わずか2戦のキャリアでダービーを制するなどあり得るのか、としばらくテレビにくぎ付けになったのを今でも覚えている。この前年にラムタラがキャリア1戦で英国ダービーを制していたこともあり、このレース後「和製ラムタラ」という異名は全国に知れ渡る事になるのだった。

「1番人気はいらないから1着だけが欲しい」大西直宏騎手~第64回(1997年)

ダービー馬 誕生月(近30年間)ⒸSPAIA



ダービーで人気の話になると第64回(1997年)が忘れられない。皐月賞で上位人気であったメジロブライト、ランニングゲイル、ヒダカブライアン等後方集団で牽制しあって仕掛けが遅れた事や、3着までを2桁人気が独占したことで、勝ったサニーブライアンはフロック視されていた。ダービーでは同型のサイレンススズカ、府中の直線で今度こその思いのメジロブライト、ランニングゲイル。また、西の秘密兵器シルクジャスティスなどがいた事で、6番人気に甘んじながら圧巻の逃げ切り勝ち。

優勝騎手インタビューで語った大西直宏騎手の「1番人気はいらないから1着だけ欲しいと思っていました。」という言葉にダービーへ対する思いと愛馬に対する自信が凝縮されていた。近30年間で1番人気の勝利は16回。2番人気3回、3番人気6回と上位人気の馬がしっかりと結果を出している。実に3番人気以内の馬が83.3%の確率で勝つ堅いレースとなっているなかでの快挙だった。

30年前のダービーの日、東京競馬場にて約20万人近いファンが「ナカノ、ナカノ」の大合唱をしたのとは対照的に、今年のダービーは静寂の無観客で行われる。しかし、ダービーに対するホースマン、そしてファンの思いは変わらない。今年のダービーは私たちにどんな夢を見せてくれるのだろうか。

《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。