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【ダービー卿CT】苦手なペースで好走 3着馬レイエンダに覚醒の予感

2020 4/6 11:18勝木淳
ダービー卿CT位置取りインフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

ハイペースに笑った組

終わってみれば内枠3頭で決まる中山マイル戦らしい結末も4、13、5番人気とひと筋縄ではいかなかった。

レースは上がり馬トーラスジェミニが重賞ではダッシュ力が足りず、最内枠からスプリント戦線を歩んだナインテイルズがハナを奪った。あっと驚く先行策を東風Sで披露したストーミーシーが再度先行、トーラスジェミニも好位に取りつき、2角手前で大外枠からマイスタイルも押し上げ、ペースは緩まず前半800m45秒4。

12.2 - 11.1 - 11.0 - 11.1 - 11.7 - 11.6 - 12.0 - 12.1

ひと息入れないと最後の坂で止まってしまう中山マイル戦を一気に走ってしまっては、先行勢は後半でペースアップができず、その背後にいる組に脚を使わせられなかった。

勝ったクルーガー、2着ボンセルヴィーソともに内枠で先行勢の背後、流れが向いたクチだが、勝ったクルーガーは2角で4~5頭横一列に並ぶ最内になり、道中は揉まれる形になったが、ベテランらしく悠然と追走。昨年の豪州遠征も大きかっただろう。

オーストラリアの多頭数+密集というスタイルのなかで戦った経験が馬群での余裕を生んだ。また、それとなくタイミングよく1頭外に出していた石橋脩騎手の騎乗によって最後の直線もスムーズだった。ペースが流れ極端に速い上がりを要しない競馬もクルーガー向きだった。

同じく2着ボンセルヴィーソにとっても絶好の流れだった。道中はクルーガーの外にいた。外を回った分もあるが、勝負所でクルーガーに加速力で見劣ってしまった。それでもじりじりと伸びるのは典型的なダイワメジャー産駒。6歳の今年はこれで京都金杯14番人気3着に続く2度目の大穴提供。超ハイペースの東風Sでもっとも積極的な競馬(4角先頭)をした経験から似た流れで一旦引いて味のあるところを見せた。

レイエンダの好走に感じたこと

ボンセルヴィーソにハナ差及ばなかった3着レイエンダは緩みない流れを考えれば注目していい。道中はクルーガーの背後に控え、直線はその進路を追うようにして伸びてきた。丸山元気騎手の読みも冴えていたが、それ以上にこの流れでの好走は今後に向けて忘れないほうがいい。

なぜならレイエンダというとエプソムC1着、富士S2着、いずれも東京の超スローで上がり600mはそれぞれ32秒7、33秒0。兄レイデオロ以上に緩流でこその馬。そのレイエンダにとって前後半800m45秒4-47秒4という流れはこれまでの得意条件ではなかった。だからこそ13番人気のボンセルヴィーソよりこちらに意外性を感じた。

兄レイデオロと比べると成長曲線が緩やかったな馬で、この激走は本格化の合図となるかもしれない。マイル戦の好走によって今後は賞金次第だが安田記念が目標となるようなら東京は得意コースでもあり面白い存在となりそうだ。

1番人気プリモシーンは5着。牝馬56キロというハンデが堪えたというより中山はやはり本質的には向いた条件ではないだろう。昨年の同レース2着と似た条件だったが、昨年は31秒台という中山としては基準外の怪時計で時計勝負のプリモシーンも好走できた。今年は1分32秒8と中山としては標準的な記録で中山らしい軽さを必要としないレースだった。

勝った前走の東京新聞杯、2年前の関屋記念のような軽さが求められる競馬がやはり理想であろう。道中は常に外を回ったこともあり、最後は伸びきれなかった。大目標であろうヴィクトリアマイルは再び得意条件である軽さが求められるマイル戦に戻る。そこへ向けた試走としてこの結果は割り切りたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

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