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畑岡奈紗NASAチャージで米ツアー3勝目「令和」の新時代担う

2019 4/3 07:00田村崇仁
畑岡奈紗,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

起亜クラシックで18アンダー

「平成」に代わる新元号「令和」が4月1日公表され、日本スポーツ界の新時代を担うエースが時を同じくして輝きを放った。3月31日に閉幕した米女子ゴルフの起亜クラシックはカリフォルニア州カールズバッドのアビアラGC(パー72)で最終ラウンドが行われ、20歳の畑岡奈紗が通算18アンダーの270で今季初勝利、日本女子では野村敏京に並ぶ歴代4位の米ツアー通算3勝目を挙げた。

アマチュア時代に史上最年少で日本女子オープン選手権を制覇し、プロ転向後は米ツアー参戦2年目で2勝(ともに3日間大会)。参戦3年目の今季は目標の一つが4日間大会での初勝利だったが、今大会のパーオン率は8割3分3厘、平均飛距離が約270ヤードとどちらもトップクラスの数字でライバルを圧倒し、あっさりクリアした。1日付世界ランキングで前週の7位から自己最高の4位に浮上。夢の2020年東京五輪での金メダルに向け、ショットの正確性とパワーの総合力で心身のたくましさを着実に増している。

世界ランク表,ⒸSPAIA

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NASAに由来

米航空宇宙局(NASA)にちなんだ奈紗の名前には「誰もやったことがないことを成し遂げてほしい」という両親の願いが込められる。最終日は元世界ランキング1位で16年リオデジャネイロ五輪金メダルの朴仁妃(韓国)に1打差の2位からスタート。米女子プロゴルフ協会(LPGA)の公式サイトによると「自分のプレーに徹することができた」と得意の「NASAチャージ」で前半から攻めのゴルフを展開し、ショットを次々とピンに絡めた。

16番でティーショットを引っ掛けて池に入れ、短いパットも外して49ホールぶりのボギーとしたが、すぐに立て直した。続くパー5の17番ではフェアウエーから放った第3打をピン脇にピタリとつけ「あれが大きかった」とバーディーを奪って再び突き放す。最終18番グリーン。最後のパットを沈めると、強さを証明する逆転Vに思わず表情を緩ませ、キャディーと抱き合った。

起亜成績表,ⒸSPAIA

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4日間のスコアは69、70、64、67。「ムービングデー」と呼ばれ、優勝争いを左右する3日目にビッグスコアをたたき出し、バーディー合戦でも強みを生かした。

黄金世代のエース

専門家の助言を取り入れ、食事と筋力トレーニングの充実で土台の体幹とお尻回りが鍛えられてきた成果だろう。強くぶれないスイングはさらに安定感が増し、弾道の高いアイアンで次々とチャンスが生まれる。「私は常に挑戦者」と目の前の一打に集中し、メジャー7勝の朴仁妃との最終組でも臆することがなかった。

昨季は全米女子プロ選手権でプレーオフの末に2位となるなどメジャーでも優勝争いを演じている。現役を引退した元世界ランキング1位の宮里藍と入れ替わるように、現在の日本女子ゴルフ界は勝みなみ、新垣比菜ら若手の「黄金世代」が台頭。その中でも世界最高峰の米ツアーで活躍する畑岡の存在は別格だ。

基礎は少年野球

身長158センチと世界では小柄な部類に入るが、その力強いショットは幼少期に培われた。ゴルフ場に勤めていた母の影響でゴルフを11歳で始め、その前は男子に交じって少年野球のチームにも参加。クラブよりも重いバットを振っていたことで、スイングの基礎ができたという。プロになった今でもバットを使った練習に立ち返る。

中学時代に所属した陸上部で短距離のトレーニングに励んだことも下半身の力強さを生み、ボールの飛距離と密接につながっている。今季のティーショットの平均飛距離は259.81ヤード。大柄な海外選手にも決して負けていない。

データ上も向上

米ツアー1年目の17年は出た大会の半分以上で予選落ち。ティーショットの平均飛距離251.12ヤード、フェアウエーキープ率は60.70%で、パーオン率は60.66%にとどまったが、2年目はそれぞれ257.68ヤード、72.16%、69.92%と、いずれも大きく向上した。3年目の今季は飛距離だけでなく、フェアウエーキープ率72.27%、パーオン率72.92%でさらに上昇している。

ショットの精度が上がったことで、昨季のバーディー数はツアー全体10位の356個。ピンに近いポジションでパターを握る機会が増えたため、平均パット数も28.87の全体4位だった。

畑岡データ表,ⒸSPAIA

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次はメジャー制覇

今季最大の目標は5試合ある海外メジャー制覇だ。その初戦は4日開幕のANAインスピレーション。今季は過去に世界ランキング1位のロレーナ・オチョア(メキシコ)らと組んだベテランキャディー、グレグ・ジョンストン氏とも契約。念願のビッグタイトル獲得へ、ジュニア時代に指導した中嶋常幸氏も成長に目を細める。「少しだけ優勝の喜びを味わって、メジャーに挑戦したい」。地に足をつけ、自信を胸に「NASA」はさらなる飛躍を期している。