フェニックス・オープンで2年ぶりV
祖父が日本にルーツを持ち、ミドルネームは「ユタカ」。端正な容姿と攻撃的なゴルフで米ツアー屈指の人気者として知られるのが、30歳のリッキー・ファウラー(米国)だ。
かつて有望な若手としてロリー・マキロイ(英国)、石川遼とともに名前の頭文字を取って「3R」と呼ばれたトリオの一角。機が熟した今季は悲願のメジャー制覇、そして4月11日開幕のマスターズ初優勝へ期待も高まっている。
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2月のフェニックス・オープン(米アリゾナ州スコッツデール)。初日から首位に立ったファウラーは通算17アンダーをマークし、約2年ぶりの優勝を果たした。ツアー通算5勝目を挙げ、賞金127万8000ドル(約1億4000万円)を獲得。
最終日は冷たい風雨の悪コンディションの下、恒例となった母校オクラホマ州立大学のスクールカラーであるオレンジ色の勝負ウエアを着てプレーし、悪戦苦闘しながら逃げ切ると、最高の笑顔で歓喜に浸った。母方の祖父「田中豊」氏や家族の見守る前で、ギャラリーから大喝采を浴びた。
左腕に祖父「田中豊」氏の名
4打リードで迎えた最終ラウンド。ファウラーは前日までの快調なプレーから一転、ドタバタ劇に見舞われて苦しんだ。11番(パー4)ではグリーン手前から放った第3打のアプローチが池に転がり落ち、1罰打を受けて斜面にリプレースした球が自然に転がって再び池に落ちる不運でトリプルボギー。一時は首位を奪われた。
ゴルフチャンネルによると「簡単な日でないと分かっていたけど、ここまでいくつもパンチを食らうとは。正直言って、何ホールかは全く楽しくなかったよ」と打ち明けたが、冷静さを失わず、家族や昨年婚約したフィアンセの前で雄姿を見せつけた。15、17番とバーディーを奪って勝利。3年前に松山英樹にプレーオフで敗れた因縁の舞台で最後は短いパーパットを沈め、大歓声の中で力強く拳を握った。
祖父の名「田中豊」は、ファウラーの左腕にタトゥーで彫られている。ゴルフの手ほどきを受け、プロの道へ導いてくれた恩人でもある日系米国人の祖父が観戦する前で初めて勝利し「やっと勝てた」と声を震わせ、ウイニングボールを手渡したファウラー。「僕にとって特別な日になった」と感激をにじませた。
異色の経歴持つ天才肌
14歳まではモトクロス選手だったという異色の経歴を持つ。2009年にプロゴルファーに転向し、翌10年にはPGAツアーの新人賞を獲得した天才肌だ。15年に「第5のメジャー」と呼ばれるプレーヤーズ選手権で優勝し、人気に劣らない実力も兼ね備えていることを証明した。
今季はフェニックス・オープン制覇に続き、3月のホンダ・クラシックでも2位と好調で勢いに乗っている。
「今季こそメジャーのタイトルをつかまないといけない。究極の目標だ。4月のマスターズでグリーンジャケットを狙いたい」と本人もメジャー制覇へ意気込みを新たにした。
昨年はマスターズ2位
これまではあと一歩のところでメジャータイトルを逃してきた。
昨年のマスターズはメジャーで通算3度目の2位。14年はマスターズで5位タイ、全米オープンと全英オープンで2位タイ、全米プロで3位タイの好成績。メジャーに36回出場、5位以内に8回も入っている。メジャーに最も近いトップ選手の一人といわれるだけはある。
強さの秘けつは美しいスイングが生み出すショットで穴がない万能性。
今季のドライバー飛距離はPGAツアーランキングで平均302.9ヤードの32位だが、平均スコアは69.827で8位と安定感も抜群だ。平均バーディー数4.69は9位と攻撃的なゴルフを展開し、グリーン周りのリカバリー率やパットのデータでも大きな穴がない。
名実ともに飛躍のシーズンへいよいよファウラーが大きな一歩を踏み出すか注目したい。
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