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なぜゴルフは紳士のスポーツと呼ばれているのか

2018 11/18 15:00SPAIA編集部
ゴルフ,ⒸShutterstock.com
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歴史的背景、ゴルフは貴族に愛されたスポーツだった

ゴルフの起源に関してはスコットランド説やオランダ説、中国説まであって定かではない。しかし、スコットランドで育ち世界中に広まったことは間違いないようで、その根拠となる文献が残っている。1457年にスコットランド国王ジェームズ2世が発令した「ゴルフ禁止令」だ。

当時のスコットランドはイングランドとの折り合いが悪く、いつ戦争が起こってもおかしくない関係だった。にもかかわらず、貴族の間ではゴルフが大流行になり弓の練習が疎かになったため、業を煮やした国王は遂にゴルフを禁止することに。しかし忠実に守られなかったため、1471年にはジェームズ3世、1491年にはジェームズ4世が、次々とゴルフ禁止令を出している。

ところが、驚くことにジェームズ4世自らがゴルフの面白さに取りつかれてしまったため、この禁止令は1502年に解除されてしまう。以降ゴルフ場やゴルフ倶楽部が充実してくると、ゴルフ場は貴族の社交場として発展を見せ、貴族のスポーツとして定着していった。こういった時代の背景から「貴族のスポーツ=紳士のスポーツ」と言えなくもない。だが、ゴルフは貴族だけではなく大衆に受け入れられたからこそ、世界に広がっていったのだ。

ゴルフが紳士のスポーツたる所以

ゴルフにはペナルティや進行上のルールがあるのに、審判がいない。ペナルティや進行上の疑問が生じたときはどうするのだろう。自分でペナルティを与え、どうすればルールに沿えるのか自分で判断するというのが答えだ。競技の進行は全て自己申告に委ねられるため、自分で判断し処理をしなければいけない。これは、他のスポーツでは考えられないゴルフだけの特徴といえる。

審判がいない理由としてルールブックには、「プレーヤーの一人ひとりが他のプレーヤーに対しても心くばりをし、ゴルフ規則を守ってプレーするというその誠実さに頼っている。」とある。審判のいないゴルフでは、不正を働いても誰にもわからないし、自分に有利なスコアはいくらでも作れるのだが、ゴルファーである以上、誠実にゴルフ規則を守らなければいけないのだ。

また、「プレーヤーはみな、どのように競い合っているときでもそのようなことに関係なく、礼儀正しさとスポーツマンシップを常に示しながら洗練されたマナーで立ちふるまうべきである」ともあり、これがゴルフの精神であり、ゴルフが紳士のスポーツと呼ばれる所以ではないかと思われる。

ゴルフプレーヤーは紳士でなければならない

ゴルフのルールブックは、スコットランドに本拠を置くゴルフの総本山R&Aと全米ゴルフ協会(USGA)が共同で制定し、各国で翻訳されている。したがってゴルフは世界共通のルールの下、競技が行われていることになる。

日本文のルールブックは日本ゴルフ協会(JGA)が翻訳して発行したものだ。ルールブックの第1章はエチケットで始まり、コース上での心得やゴルフの精神、安全確認や他のプレーヤーの迷惑にならないようにとする心配り、自分で作った損傷は自分で直しておくようにとするコースの保護にも言及している。

つまり、ゴルフプレーヤーはルールブックによって紳士であることが求められており、エチケットの重大な違反者は競技失格にできるとしている。ゴルフプレーヤーは精神においても、行動においても紳士でなければならないということだ。