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「福岡の星」川原星が引退。次世代を担う九州スケーターは誰だ?

2018 3/29 11:54川浪康太郎
川原星
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Ⓒゲッティイメージズ

大勢のファンに見送られ、川原星が競技生活に幕

全競技終了後、リンクサイドに溢れんばかりのファンが集まった。今大会での引退を表明していた川原星を見送る、最後のエキシビションが用意されたのだ。
エキシビションでは2017-18シーズンの使用曲でもあった『ミッション』と『fly me to the moon』を披露。ファンから大量の花束を受け取った川原は、いつも通りの爽やかな笑顔でリンクを去った。

福岡県久留米市出身の川原。福岡でスケートを続け、ジュニア時代から全日本選手権やジュニアグランプリシリーズに出場すると、2015-16シーズンにはグランプリシリーズのスケートカナダで10位に入るなど、「福岡の星」として国内外問わず活躍した。
端正な顔立ちで女性ファンも多く、練習環境が万全ではない九州のスケーターにとって、憧れの存在であった。

そんな川原が最後の舞台として選んだのは、地元・福岡でのローカル大会だった選手権男子フリー。最終滑走で登場した川原に、割れんばかりの大歓声が送られる。
ノーミスの演技をしたわけではなかったが、全てのジャンプ、美しいステップとスピンで魅せ、会場は終始拍手に包まれた。

川原の周りにはいつも笑顔が広がっていた。この日駆け付けたファン、後輩スケーター、コーチ、県の連盟関係者、会場の全ての人たちが、涙よりも温かい笑顔を浮かべていたのが印象的だ。今後もスケートに関わると明言している川原。多くの人に愛された氷上のアーティストが描く、次なる物語に胸が高まる。

川原に続け!今後が楽しみな男子スケーターたち

九州を背負う次世代の男子スケーターは誰か。今大会は選手権男子6人、ジュニア選手権男子に2人がエントリー。決して人数が多いわけではないが、全国の舞台で活躍しうる有望株はいる。
川原を抑え、選手権男子で頂点に立ったのは中野絋輔。現在は福岡大に所属しており、川原の後輩にあたる。2015年度には強化選手Bに選ばれたこともある有望株だ。
力強いジャンプはもちろん、リンクサイドから演技前の選手に放つ大きな声援や、個性的な髪型も魅力の一つ。

今大会はSPで63.30点と高得点を叩き出すと、フリーではジャンプのミスが相次いだものの逃げ切った。フリー冒頭に跳んだトリプルルッツ―ダブルトーループはGOE1.26を獲得。
失敗したジャンプも高さや勢いがあり、決まれば得点がどんどん上がっていきそうだ。伸びしろ十分の20歳は、ジャンプの確実性を高め全国にその名を知らしめたい。

3位に入った古家龍磨にも期待がかかる。北九州FSCに在籍する高校生で、2017-18シーズンまではジュニアの選手として奮闘した。
かわいらしい衣装や独創的な振り付けが目を引く個性的なスケーターだが、今大会のフリーでは全体トップの56.59点をマークするなど、各エレメンツの精度も増してきている。中野に負けず劣らず、今後が楽しみな存在だ。

女子は竹野比奈と藤由妃乃が世代を引っ張る

女子はジュニア世代が熱く、今大会は34名がエントリーした。昨季は出場した20名中90点を超えたのが7名だったが、今大会は19名と大幅に増えており、レベルも高い。
その世代を引っ張るのが高校生の藤由妃乃だ。SP、フリーともに格の違いを見せつけ、堂々の5連覇を達成。インターハイでは九州勢で唯一決勝に進み、9位に入るなど着実に全国の舞台で経験を積んでいる。
質の高いジャンプやスケーティングを武器に、後を追う江川マリア、大山田光らと共に更なる飛躍を目指す。

選手権女子は5人がエントリーし、福岡大の竹野比奈が優勝。竹野はジャンプの安定感と美しいスピンが持ち味の選手で、国内の大会で好成績を出し続けている。
特に2017-18シーズンの全日本選手権ではSP、フリーともに圧巻の演技を見せ、169.55点という高得点をマーク。16位に入り、全国の強敵たちに向け存在感を示した。
同じく福岡大の上地悠理花と共に、シニア世代の中心として今後も福岡を背負う。

福岡だけじゃない!熊本、大分、沖縄のスケーターも存在感

福岡には3つの通年リンクがあるが、それ以外の九州地方の通年リンクは沖縄のスポーツワールドサザンヒルのみというのが現状であり、九州のフィギュア界はまだまだ発展途上といえる。今大会も福岡の選手が大半を占めたが、福岡県外のスケーターも持ち味を発揮した。

日本最南端の通年リンクにあるクラブサザンクロスからは、園田りんがジュニア選手権女子で11位、山田琉伸がジュニア選手権男子で1位に入り、他県に引けを取らない実力を見せた。
通年リンクはないものの有望選手の多い熊本からは、ジュニア選手権女子4位の中野由菜らKPBの選手が健闘。
またノービスB女子では大分ゴールドFSCの加生捺乃が優勝した。数こそ少ないが各々が個性と実力を兼ね備えており、九州全体でのレベルアップに期待がかかる。