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日本フィギュア女子「五輪落選組」の現在地

2018 3/27 10:44川浪康太郎
樋口新葉
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Ⓒゲッティイメージズ

無念の落選を乗り越え……樋口新葉は世界選手権で涙の銀メダル!

宮原と共に五輪代表の有力候補とされていた樋口新葉。

3月にミラノで開催されたフィギュアスケート世界選手権で、女子ショートプログラム(SP)8位から大躍進のフリー2位。合計210.90点で銀メダルを獲得したのだ。フリーの演技「007スカイフォール」をほぼ完璧に終えた樋口は「やったー!」と両手でガッツポーズして涙を見せた。昨年の世界選手権は11位で悔しさを味わう。その大舞台で見事に輝きを取り戻した。

樋口は、坂本と同じ高校2年生でシニア2年目。シーズン初戦のロンバルディア杯では、自己ベストを更新する217.63点。各国の強豪を退けて、シーズン全体で3位という快挙を成し遂げた。グランプリシリーズではロステレコム杯で3位、中国杯で2位。グランプリファイナルの出場権を獲得するが、初出場のファイナルでは実力を出し切れず6位に終わる。世界ランキング11位、シーズン世界ランキング5位と、いずれも日本人選手の中で上位に名を連ねており、五輪代表の座は射程圏内だった。

五輪代表選考を兼ねた12月の全日本選手権では、SPでダブルアクセルを失敗。フリーでも細かなミスが得点に響いて4位。右足首の靱帯が伸び、痛み止めを飲んでの出場だった。代表の2枠目は坂本花織が射止める。

平昌五輪と同時期にオランダで行われたチャレンジカップでは、唯一の200点台をマークして圧巻の優勝を飾る。フリーではいくつかジャンプのGOE(出来栄え点)マイナスも見られたが、スピンはオールレベル4を獲得。世界選手権に向けての仕上がりは順調だった。

五輪4位の宮原知子はSP、フリーともに3位の210.08点で銅メダル。日本女子がダブル表彰台という快挙を成し遂げたのは、安藤美姫が初優勝、浅田真央が2位となった2007年以来11年ぶりのことだ。日本女子は順位の合計を「5」として、2019年さいたま市で開催する世界選手権の出場枠において、最大の3枠を確保した。

さらなるレベルアップを目指す本郷理華と三原舞依

実績がありながら平昌五輪に出場できなかった本郷理華、三原舞依も、次のステージへと歩みを進めている。

本郷はチャレンジカップに出場。樋口に次ぐ2位に輝いたが、ジャンプのミスが目立ち得点は伸び悩んだ。国内戦では国民体育大会冬季大会に成年女子愛知県代表として参戦。SP、フリー共に完璧に近い演技を披露し、非公認ながら200点超えを果たした。20歳を超えても進化は止まらない。

三原は宮原、坂本と共に四大陸選手権に出場した。2016-17シーズンに優勝した大会である。SP、フリー共に大きなミスなく滑り切り、坂本には及ばなかったものの2位。表彰台に2年連続で上った。4月からは大学生になるフィギュア界のシンデレラガールは、まだまだファンを楽しませてくれそうだ。

もがき苦しむ本田真凜は、笑顔を取り戻すことができるか

多くの注目が集まったオリンピックイヤー。メディアが最も大きく取り上げたのは、シニア1年目の本田真凜だった。2016年の世界ジュニア選手権で優勝すると、一躍フィギュア界のニューヒロインに躍り出る。その美貌も相まって人気が高まると、同じくスケーターである兄や妹と共に「本田四兄妹」として大きく取り上げられた。

しかし、シニアに移行した2017-18シーズンは苦しんだ。グランプリシリーズはスケートカナダ、中国杯共に5位に終わり、グランプリファイナルには届かず。五輪の代表を勝ち取るためには全日本選手権で優勝するしか道はなかったが、同大会は7位で「奇跡」を起こすことはできなかった。

2017-18シーズンの成績を加味すれば、代表選出が容易でないことは想像に難くなかった。にもかかわらず過剰なまでの報道と、過度のプレッシャー。2月のチャレンジカップは、総合160.19点と本来の実力とは程遠いスコアに終わる。ジャンプのミスが相次いだSP後のキスアンドクライでは、呆然とした表情を浮かべていた。

とはいえ、本田はまだ高校1年生。重圧をも力に変えて、また笑顔で氷上に舞い戻る日を待ちたい。