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フィギュア四大陸選手権2017、ネイサン・チェン選手優勝の理由は?

2017 4/20 11:07masumi
フィギュアスケート
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Photo by Sergey Zaykov/Shutterstock.com

フィギュア四大陸選手権2017の男子シングルは、シニアデビュー間もないネイサン・チェン選手が初優勝に輝きました。 ここでは演技を振り返り、弱冠17歳のネイサン・チェン選手がトップ選手との戦いに勝利した理由を探ります。 また、彼の生い立ちや過去の戦績なども紹介します。

ネイサン・チェン選手の生い立ち

ネイサン・チェン選手は、アメリカ出身の男子シングルのフィギュアスケート選手です。
中国からアメリカに移住した両親のもと、1999年にユタ州ソルトレークシティで生まれました。国籍はアメリカですが、「陳巍(ちんぎ)」という中国名もあります。
5人兄弟の末っ子で、兄2人がアイスホッケー、姉2人がフィギュアスケートをしていたことから、兄や姉たちに加わって、3歳の時からスケートを始めました。5歳からはバレエ学校に入り、本格的なレッスンを受け始めます。
この頃から積んできたクラシックバレエの基礎が、後にフィギュアスケートでの表現に生かされることになるのです。

ノービスからジュニアの戦績

ネイサン・チェン選手の活躍はノービス時代から始まっていました。
ノービスクラスで出場した全米選手権では、2009-2010シーズンから2大会連続で優勝しています。2011-2012シーズンには全米選手権にジュニアクラスで出場して優勝し、初の国際大会となるガルデナスプリング杯でもノービスクラスで優勝しました。
2012-2013シーズンからはジュニアクラスに移行し、ジュニアグランプリシリーズに参戦します。初戦は2位に大差をつける鮮やかな優勝でした。
2013-2014シーズンのジュニアグランプリシリーズでは、2大会を優勝で勝ち上がり、ファイナルでは銅メダルを獲得します。全米ジュニア選手権では金メダル、世界ジュニア選手権では銅メダルと、大きな結果を残したシーズンでした。

4回転ジャンパーの誕生

2014-2015シーズンの全米選手権の予選で、ネイサン・チェン選手は初めて4回転ジャンプに成功しました。 国際大会で初めて成功したのは、2015-2016シーズンのジュニアグランプリシリーズ・コロラドスプリングス大会です。このシリーズでは2大会で優勝し、ファイナルでも優勝を果たしています。
全米選手権でもフリースケーティングで4回転を4回成功させ、シニアクラスでの銅メダル獲得となりました。
2016-2017シーズンは、シニアクラスでは初となるグランプリシリーズでファイナルに進出し、フリースケーティングでは3種類の4回転など、すべてのジャンプを成功させます。高難度のジャンプを次々と決めて会場を沸かせ、2位となって表彰台に上りました。

四大陸選手権のハイライト

男子シングルのショートプログラム、ネイサン・チェン選手は第4グループの4番滑走で登場しました。
冒頭で4回転3回転のコンビネーションジャンプを決めると、次の単独の4回転ジャンプも軽々と着氷します。シニアデビュー1年目の初参戦とは思えない堂々とした演技で、ショートプログラムでトップに立ちました。
2日後のフリースケーティングでは、緊張感が高まる最終滑走です。
序盤では4回転3回転のコンビネーションジャンプなど、1分半の間にコンビネーションを含む4本の4回転ジャンプを成功させます。トリプルアクセルでは着氷でこらえる場面もありましたが、成功させて次の要素につなげます。スピンやステップでも観衆にアピールし、5本目の4回転もしっかりと着氷してトップの座を守り切りました。

4回転ジャンプでつかみ取った勝利

4回転ジャンプは体力的にも負担が大きく、何本も入れるのは難しいと言われていますが、ネイサン・チェン選手は今大会、ショートで2本、フリーで5本の4回転を跳んでいます。
4回転ジャンプの基礎点は10.3(トウループ)から15.0(アクセル)と幅があり、ルッツ(13.6点)を跳べる選手が少ない中、ネイサン・チェン選手は「4回転ルッツ+3回転トウループ」という大技を、ショート・フリー共に成功させています。フリップ(12.3点)も大きな得点源でした。
より基礎点の高いジャンプを跳び、より多くの本数を入れて得点を重ね、上位ランクの選手を上回って優勝したのです。

まとめ

「新4回転時代の申し子」と呼び声も高いネイサン・チェン選手はまだ17歳です。 今大会では4回転ジャンプで大きな話題となりましたが、スピンのポジションの美しさも注目されていました。幼い頃から習っていたバレエの基本が身についているので、ステップや表現も磨かれていくに違いありません。 これからどんな進化を遂げてゆくのか目が離せない選手です。