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【Bリーグ第9節】川崎が神奈川ダービー連勝 我慢の連続だった

2019 11/20 17:00マンティー・チダ
川崎ブレイブサンダースの篠山竜青Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

【GAME2】川崎が横浜を試合終盤に突き放して勝利 連勝を18に伸ばす

神奈川県にホームタウンを持つ横浜と川崎による“神奈川ダービー”は今季初開催。横浜のホームアリーナである、横浜国際プールで行われ、川崎はGAME1を75-63、GAME2を84-60で制して、横浜戦18連勝となった。横浜は川崎ダービーで2連敗。しかし昨年と違う強さでホーム開催の意地を随所に見せていたという。そして川崎は“手応えを感じた”ものがあったというGAME2を見てみる。

1Q、川崎は#14辻直人が3p2本を決めて波に乗る。辻のキックアウトから#33長谷川技を経由し#22ニック・ファジーカスが3pを沈め、開始わずか2分3秒で9-1とリード。そのままリードをキープしていた川崎は、残り3分32秒で#21マティアス・カルファニを投入し、ファジーカスと#35ジョーダン・ヒースと共にビッグラインナップを形成する。しかし、横浜#10アキ・チェンバースにドライブからの得点を許すと、#21田渡凌がダブルクラッチを含む連続得点で13-18と川崎に迫る。流れを止めようとタイムアウトを取った川崎。その後川崎・ファジーカスの3pなど5得点をし、23-13と引き離すことに成功する。

2Qに入っても川崎はビッグラインナップを継続。両チームとも決め手に欠いた中、川崎・カルファニがダンクとバスケットカウントを決める。一方、横浜も#14ジョルジ―・ゴロマンの3pで追撃態勢に入ろうとするが、#42ジェイソン・ウィッシュバーンのターンオーバーで流れを掴み損う。直後の攻撃で川崎・カルファニはポストプレーから得点し30-18とする。ここで横浜は#32エドワード・モリスをコートに送り込む。ウォッシュバーンとゴロマンでビッグラインナップを形成し反撃に出ようとするが横浜は点差を詰めることはできず、40-27で前半を折り返す。

川崎ブレイブサンダースのニック・ファジーカスⒸマンティー・チダ

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後半に入り、川崎は#7篠山竜青のファウルを皮切りに、残り7分14秒の段階で早くもチームファウルを5つ重ねる。川崎はたまらずタイムアウトをコール。タイムアウト明けはファジーカスがフリースローも含めて6点を稼ぎ、再びリードを広げていく。横浜も田渡とゴロマンの得点で差を詰める場面もあったが、川崎は篠山が果敢にドライブでペイントエリアに侵入し、レイアップとジャンパーを決め、59-49と川崎がリードしたまま最終Qへ。

4Q、ファジーカスのバスケットカウントで幸先良くスタートした川崎。対し、10点差を追いかける横浜はウォッシュバーンのバックショット、#22秋山皓太のバスケットカウントで応戦し、ゾーンディフェンスを敷く。そのため外から狙うシーンが多くなる川崎は藤井と長谷川が3pを放つものの、決めることが出来ずにいた。しかし横浜のショットクロックバイオレーションにより攻撃権を与えられると、藤井が4点シュートを成功させて68-56と12点リードでオフィシャルタイムアウトを迎える。タイムアウト後、オフェンスが思うようにいかない横浜に対して、川崎は藤井とカルファニが3pを沈める。辻も3pを成功させ、さらにカルファニもダンクを叩き込み、終盤で一気にリードを広げる。川崎は横浜を84-60で下し、このカード連勝と共に、横浜戦の連勝を18に伸ばした。

ビッグラインナップは大きな武器になる

GAME2は「今シーズン初めての感触」と手応えを掴んでいた川崎・辻。彼の連続3pから試合は動いた。辻にマッチアップしていた横浜・田渡もそのシーンを振り返る。

「川崎のエクスキューション能力はリーグ一番。ファジーカスにクロススクリーン(制限区域を横切って行われるスクリーン)をして、少しでもバンブ(ボールを持っていないオフェンスプレイヤーに対してディフェンスが体を当てること)をしないといけない状況でしたが、それが遅れてしまい、辻さんにオープンを打たせてしまった。もう少し追いかけられたのではないか」

辻は次のポゼッションでもコーナーから3pを沈めると、今度は自らゴールに向かってアタックし、キックアウトから長谷川を経由しファジーカスの3pをおぜん立てした。この段階で9-1とリード。横浜にしてみれば、このビハインドが最後まで響いてしまった。

「出だしの3p3本を決められたことで、逆に横浜のオフェンスがエクスキューションできなくなった。そこはガードがやらないといけない中でうまくいかなかった」

田渡にとっても悔やまれる場面だった。

川崎は10点リードをキープすると、今シーズンの武器であるビッグラインナップで勝負する。「やはり大きな武器になるのかな」と篠山はビッグラインナップに手応えを示す。

「マティアス(・カルファニ)とジェイ(ジョーダン・ヒース)は非常にクレバーな選手ですし、インサイドに固まるのではなく、しっかりスペースを広げてプレーができている為、ビッグラインナップにしても機能できていると思います。ビッグラインナップで30分戦うわけではないですが、川崎にとってアドバンテージを取れるすごく良いラインナップだと。オフェンスもディフェンスもまだまだ質を高められるし、伸び代もありますね」

川崎ブレイブサンダースの辻直人Ⓒマンティー・チダ

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後半はインサイドの選手たちによるファウルトラブルもあり実行されることは無かったが、「まだまだ伸び代がある」と篠山がコメントするように、川崎のチーム力が上がる要素はあるということだ。

ビッグラインナップにするということは、3番にビッグマンもできる選手が入ることになる。川崎ではPF/Cのカルファニが担う。そのため、本来3番ポジションに入るはずであるGの選手(にすれば出番が少なくなってしまうため、プレータイムを確保しようとポジション争いはし烈を極める。そんな状況の中、ガードの一翼を担う辻は次のように意欲を見せていた。

「ミスマッチができるので、キックアウトしてシュートというチャンスは増えるのかなと思います。そういう所を確実に決められるようになれば、ビッグラインナップの時にもっとプレータイムをもらえると思いますし、もっと練習してプレータイムを勝ち取りたい」

ビッグラインナップを形成する時間が長くなれば、川崎の破壊力は大いに増していく。要になるインサイドの選手へファウルが重なると、ファウルトラブルになる事も考えられるので、コート上にインサイドの選手を3人並べる事が出来なくなる。実際、後半は一度もビッグラインナップを形成することがなかった。佐藤HCも「ファウルトラブルによるもの」と形成しなかった理由を挙げている。ビッグラインナップにして、インサイドの選手に負担をかけないためにも、ガードの選手にかかる役割は大きいようだ。

「2試合ずっと我慢していました」川崎・篠山竜青

川崎が無敗を続けられるのか、横浜がそれを止める事ができるのか、注目されていた神奈川ダービーその中で篠山は果敢にリングへアタックを繰り返しており、特にGAME2では3pをわずか1本しか打たずに直接リングへ向かっていた。「大分体が元気になってきた」と動きの良さから無意識にアタックしていたようだ。

「今年意識しているのは、ペイントタッチとそれに連動して走り続けること。リード&リアクトを習慣として練習からやってきて、そこの質の向上はどんどん良くなっているという感覚はありますし、それが一番守りづらいオフェンスだと思います。僕もそうですが、一人がアクションして全員がリアクションするというのは、今日良かったプレーだったと思います」

篠山はチームとしてのスタイルに手応えを得ている中、Bリーグが始まって以来負け知らずの横浜に対しては、2試合とも「ずっと我慢していました」と語る。

「点差は最後開きましたけど、本当に横浜は去年と全然違うチーム。ディフェンスも激しいですし、トランディション、ガードのプッシュが本当にはやいので、点差以上に拮抗したゲームの内容になったことは間違いない。そこで川崎は我慢しきれて、横浜が先に疲れたのかなという感じ」

今季の横浜の変貌を感じ取っていた。

川崎ブレイブサンダースの篠山竜青Ⓒマンティー・チダ

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今回の “神奈川ダービー”。GAME1が始まる前、昨シーズン限りで現役引退した初代キャプテンの蒲谷正之氏と2代目キャプテンの山田謙治氏(現編成・強化担当兼アシスタントコーチ)の引退セレモニーが行われ、篠山も立ち会っていた。

「山田謙治さんは中学生、蒲谷正之さんは高校生の時からプレーを見ていた」

篠山は横浜市出身で、そうコメントをSNSで残し、感慨深い気持ちを表現していた。さらに昔から見ていた“神奈川ダービー”には特別な想いもある。

「連勝の数というのは気にしていないですけど、神奈川ダービーとして神奈川県のバスケットを盛り上げるという意味では、やはり勝てる時はしっかり勝っておきたいですし、いつか連勝は止まる。どこかで横浜が勝った時に、神奈川ダービーという価値がもう一段上がるのではないかなと思いますので、そこまではしっかり見せていきたい」

そう、神奈川ダービーに想いを寄せつつ、2連勝した中でも、「今シーズンの神奈川ダービーは難しくなる」と、篠山は横浜に対して警戒心を持っていた。

「川崎はすごく良いチーム。自分たちの得点数では勝つに足らない」

横浜・ウィスマンHCも今回の試合を通して、課題を明確にしていた。

今回の対戦は川崎に軍配が上がったが、昨シーズンまでとは違った“神奈川ダービー”。今後にも期待が持てそうだ。