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【Bリーグ第6節】川崎が目指す‟切り替えの早いスタイル” 課題も浮き彫りに

2019 10/30 16:43マンティー・チダ
川崎ブレイブサンダース・長谷川技Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

【GAME1】後半開始早々に川崎・長谷川が速攻を決めて勝利を呼び込む

川崎とSR渋谷が各地区首位同士として顔を合わせ、今後を占う意味で大きな一戦となった。今シーズン好調の川崎は、新しいゲームスタイルでリーグ戦に臨んでおり、ここまで好調のチームが対戦するとあって、どのような試合が展開されるのか注目が集まっていた。

川崎は、SR渋谷#2セバスチャン・サイズに先制され、#27石井講祐の3p、サイズのバスケットカウントなどで2-8に。流れが渋谷に傾いたかと思われたが、渋谷・#9ベンドラメ礼生のファウルトラブルから、川崎は少しずつペースを取り戻すと、#0藤井祐真の3p、#21マティアス・カルファニのフリースローでなど、1点差とする。そこから再び、渋谷に得点を許し、しばらくリードをされるものの、10-15の時点で藤井がエンドラインからファストブレイクを決めると、#27熊谷尚也が3pで同点、#35ジョーダン・ヒースのアリウープダンクで逆転する。さらに#14辻直人が3pを決め、川崎リードで20-16と1Qが終了した。

2Qに入っても、川崎の流れで試合が進む。残り7分26秒に川崎は#22ニック・ファジーカスと#21マティアス・カルファニをコートに入れ、ヒースとビックラインナップを形成。川崎・佐藤賢次HCはミスマッチを作り出し「これがうちの強みだから」と自信をもって送り出した。ビッグサイズであると、リバウンドやパス回し、シュートをする際に優位に立てる。同時に機動力の乏しさが弱点になり得るところではあるが、カルファニに至っては問題がなかったため、期待は大きかった。

しかし、この戦略を生かした展開にはできず、残り4分7秒に。川崎はヒースを下げて#33長谷川技をコートに戻すと、藤井がタフショットを決めたのをきっかけに、フリースローでの得点、熊谷の3pなどでリードを広げるが、SR渋谷も食らいつき、34-34の同点で折り返した。

川崎ブレイブサンダース・篠山竜青Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


後半、早々にSR渋谷・ベンドラメの3p、サイズのシュートで5失点するも、ファジーカスがセカンドチャンスからのジャンパーで、後半においてチーム初得点をすると流れが変わった。SR渋谷#1関野剛平のレイアップが外れた後のリバウンドから、長谷川が一気に速攻を仕掛けて38-39に。さらにカルファニのスティールからパスを受けた長谷川がアシストし、藤井の得点で逆転に成功した。川崎は、このプレーをきっかけに攻守の切り替えが速くなり自分たちのペースに持ち込むと、カルファニとファジーカスが順調に得点を重ねていき、SR渋谷にタイムアウトを請求されても、勢いは止まらなかった。ファジーカスのバスケットカウントや藤井のファストブレイクなどでリードを13点に広げると、SR渋谷はベンドラメのレイアップやカットイン、#34ライアン・ケリーの3pで一時持ち直すものの、川崎が優位のまま64-56で最終Qを迎えた。

4Q、川崎は残り6分12秒にカルファニをコートに入れて、再びビックラインナップを形成すると、SR渋谷も得点を重ねながら、ケリーを入れて、野口、サイズとビッグラインナップとする。川崎は、サイズにダンク、石井に3pを許し、最後まで接戦となるものの、川崎・カルファニの得点などで再び引き離し、粘るSR渋谷を81-74で退けた。

「リバウンドやルーズボールさえ取れればしっかり走れる」川崎・長谷川技

GAME1の前半は両チームともに決め手を欠く試合運びだった。勝利した川崎はオフェンスでパスが回らなくてターンオーバーを計上し、敗れたSR渋谷は開始早々にベンドラメのファウルトラブルからペースを乱しながらも何とかシュートまでは持ち込むも、得点までには至らなかった。

決め手を欠く展開の中で、川崎がシュートまで持ち込めずオフェンスがやや停滞気味となり、厳しい前半だったが、後半に入るとディフェンスから流れを作り飛び出した。そのきっかけを作ったのが長谷川技だった。

「ボールが回っていない時は、オフェンスのリズムが悪くて機能していなかった。僕たちはディフェンスのチームなので、ディフェンスから入って、リバウンドやルーズボールさえ取れれば、しっかり走れると思った」

そう考えていた長谷川は、SR渋谷・関野のレイアップが外れてからのディフェンスリバウンドを獲得すると、一目散にリングへ向かって走っていき、ファストブレイクに成功。直後のディフェンスでは、カルファニがスティールを獲得し、ボールは再び長谷川へ渡り速攻を繰り出して、藤井にアシストを供給し役割を果たした。試合全体を見ても、この2つのポゼッションが川崎に勝利を呼び込んだ格好になった。

「フロントコートから相手にプレッシャーをかけて、タフなシュートを打たせた後のリバウンドをとってから走るというのが僕たちのやりたいバスケット」

長谷川は今シーズンのチームスタイルをこう表現する。

「前半はてこずったというよりも自滅でした」

長谷川は前半の状況をこう捉えていた。佐藤賢次HCも「SR渋谷さんが、私たちのビックラインナップに対し、敢えてスモールラインナップで挑んできて、ミスマッチを狙わせて、そこに引っ掛かってしまった。途中からいつも通りやろうと話をしていました」と語った。川崎は後半からいつも通りにやるという気持ちで臨んでいたのだ。

川崎ブレイブサンダース・篠山竜青Ⓒマンティー・チダ

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今シーズンの川崎は、指揮官も変わり新たなチームスタイルで勝負している。機動力を生かしたゲームプランで好調を維持しているが、他のチームもSR渋谷のようにしっかり対策を練っている。オフェンスが停滞しまう事や、自滅することも無くさないといけない。

「オフシーズンにやってきたことを普通にできているので、これからもっと良くなっていくはず。リバウンド、ルーズボールをしっかり取れれば僕たちのペースになってくる。ステップアップしていきたい」

長谷川が話す通り、まずはリバウンド、ルーズボールを拾って、走るスタイルを徹底することが課題だ。そして、ビックラインナップの強みを生かし、新たな引き出しを模索する。

今回のGAME1で、逆転を促した1プレーがきっかけで攻守の切り替えが速くなり、自分たちのペースに持ち込むことで勢いを加速することに成功。この形は川崎が目指す‟切り替えの早いスタイル”である。GAME2ではそれを遮断され敗北を喫したため、このスタイルをどう定着させるか、これも課題の一つとなる。

川崎は、名門復活を賭けたシーズンで初のリーグ戦王者へ向かうために、更なる進化を求められる時期へ差し掛かってきたようだ。