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【Bリーグ】新人賞・岡田侑大、拓殖大中退からプロへ飛び込んだ期待のニューカマー

新人賞を受賞した三河の岡田侑大(左)とプレゼンターを務めた吉田亜沙美Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

岡田侑大が新人賞を獲得

今季のBリーグ新人賞に岡田侑大(三河)が選出された。初年度はベンドラメ礼生(SR渋谷)、昨季は馬場雄大(A東京)が選ばれている。

今季のBリーグが開幕した頃、岡田は拓殖大学の選手だった。昨年秋の関東大学バスケットボールリーグ戦、9月13日の青山学院大学戦までは、拓殖大学の一員としてプレーしていた。しかし、9月19日の専修大学戦より、拓殖大学のロスターから岡田の名前が消える。岡田は、「拓殖大学中退」という人生で大きな決断をしていたのだ。

東山高校から拓殖大学に進学した岡田は、1年生から実力を発揮する。大学進学後、初の公式戦となった2017年のスプリングトーナメントでは、同学年のゲイ・ドゥドゥとの二枚看板でチームを牽引し、8位に終わったものの、学生バスケ界に大きなインパクトを残した。「戦国リーグ」と呼ばれた秋のリーグ戦では、拓殖大学を優勝に導く大活躍。続くインカレでは、準決勝で筑波大学に敗れて3位に終わるが、次年度に期待できる内容だった。

2018-2019第28節千葉ジェッツ戦にスタメン出場した岡田侑大Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ

2年生に進級すると、スプリングトーナメントでは青山学院大学に敗れて優勝は逃すが、下級生主体の新人戦では、優勝候補の東海大学を下し26年ぶり3回目の優勝を成し遂げた。ドゥドゥに得点王を譲ったものの、岡田は得点ランキング2位に入り、拓殖大学でワンツーを達成した。

新人戦で結果を残した下級生を中心に、リーグ連覇が期待された拓殖大学だったが、リーグ開幕前に激震が走る。共にチームを引っ張ってきたドゥドゥが、アメリカに帰国してしまったのだ。チームは岡田を中心にリーグ戦に臨んだが、開幕から7戦を終えて、1勝6敗と波に乗れず、下位に低迷。岡田が孤軍奮闘するが、チームの状況は変わらず序盤戦を終えた。

2018年11月、三河は岡田と特別指定選手としての契約を発表した。岡田は、拓殖大学在籍のままではなく中退を決断し、プロの門を叩いた。特別指定選手は、大学の活動に支障が出ない程度で、Bリーグの試合に出場することがほとんどだが、岡田はそれを選ばず、プロ入りへ舵を切る。

1試合平均得点は10.3と2桁を達成

三河は、昨季までエースとして活躍していた比江島慎(現栃木)の穴を埋められない状況で、中地区の優勝争いに絡むことすらできていなかった。その穴を埋めるべく岡田は入団。そして、契約が発表されて最初の試合となった名古屋D戦で岡田に早くも出番が回ってくる。

4Q残り2分14秒、背番号「30」を身にまとった岡田が、プロのコートを初めて踏んだ。1分後にはプロ初得点を達成し、デビューを飾った。

その後、プロのコートに慣れてきた岡田は、1月23日の三遠戦でプロ入り初の2桁得点を達成すると、遂に3月2日の横浜戦からはスタート5に名を連ねる。同じく特別指定選手として、途中から入団していた熊谷航と共に、チームを牽引した。

終わってみれば、レギュラーシーズン40試合出場に終わったものの、1試合平均得点は10.3と2桁を達成。チームの得点源にまで成長を遂げ、晴れて新人賞の獲得となった。

「昨季の比江島選手の映像をチェックしていた」岡田侑大

「1年前から考えれば、こうなるとは予想できなかった」

岡田は、改めて新人賞を手にして、心境を明かした。大学時代のチームメイトが渡米し、岡田も拓殖大学中退から、新たなチャレンジを始めた。

「ゲイ・ドゥドゥが自分の夢をかなえるために、渡米を決断した時に気持ちは動いた」と岡田は、人生の大きな決断をするきっかけを話す。

「Bリーグ以外にも選択肢はあった。これからの人生でベストな選択となればBリーグしかないと、いろんな人と相談して思った。結果ここにきて良かった」

悩みながらも、岡田はタイトルを獲得したことに喜びを噛み締める。

岡田は三河に入団後、一番見たものとして「昨季の比江島選手」をあげた。

「比江島選手は、元々目標にしている選手の一人。自分がコートに入ることによって、ボールの流れがよくストップしていた。どうすれば、昨季の様な強い三河になっていくのか、三河を復活させることができるのかと思い、自分としても悩んでいた。そこで思い付いたのが、昨季の比江島選手の映像だった」

自分がチームにフィットするために、昨季まで三河の大黒柱だった比江島の映像を隈なくチェックしたという。

その映像チェックは、岡田にとってまだまだ必要のようだ。

「金丸選手との息も合っていない。金丸選手を邪魔している動きも多いので、昨季の比江島選手の動きをもっと勉強して、お互いマイナスにならないようにしていきたい」

比江島と共に得点源となっていた、3年連続ベストファイブの金丸晃輔との向き合い方についてそう話す。

来季に向けては“守備とフリースローの成功率”を課題とした。

「誰が見てもわかる通り、守備が苦手なので、チームプレーをする上で守備をしっかりしないといけないし、フリースローの確率も悪いので、レベルアップしないといけない」

大学時代は、岡田の個人技で得点するケースが多かったが、プロでは学生のようにうまくはいかない。「プロのバスケットというのは、一人に任せて勝てるものではない」と岡田は自覚をしていた。

岡田が課題に挙げている“守備とフリースローの成功率”を改善できれば、チームの柱になることは間違いない。3月で二十歳になったばかりだ。来季の過ごし方次第では、日本バスケ界を背負う存在になるのかもしれない。伸び代たっぷりのニューカマーに期待せざるを得ないだろう。