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【Bリーグ】新潟の中地区優勝に貢献したベテラン戦士 五十嵐圭と柏木真介

BリーグアワードショーでMIPを受賞した五十嵐圭、柏木真介Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

レギュラーシーズンMIPに五十嵐圭、柏木真介を選出

Bリーグのレギュラーシーズンで最も印象に残るプレイヤーに贈られる「レギュラーシーズンMIP」に五十嵐圭、柏木真介(共に新潟)が選出された。

二人とも、ベテランと呼ばれる域に入ったプレイヤーで、表彰式のスピーチでも柏木が「驚いている。おじさんたちも頑張っているで賞だと思っている」と話せば、五十嵐も「リーグの方たちが、間違いなく自分たちベテランに気を使ってくださったのでは」と続けた。

五十嵐は39歳、柏木は37歳。二人が所属する新潟は、今季初の中地区優勝を遂げた。リーグ開幕前において、前評判が高かった訳ではない。二人に加えて、37歳の鵜澤潤、35歳の池田雄一と、上江田勇樹、ラモント・ハミルトンも含めれば、30代の選手が6人在籍しているのだ。当然、平均年齢は高い部類に入ることになり、最後まで持つのかと心配の声も上がったが、そんな声をよそに彼らは地区優勝を果たした。

かつては、30代半ばを超えると、選手としてのキャリアを終える選手が多かったが、トレーニングの進歩もあり、今では40代でも現役としてプレーすることが当たり前になってきた。Bリーグアワードで特別賞を受賞した折茂武彦(北海道)も49歳を迎えて、来季も現役続行を宣言している。

五十嵐は、北陸高校から中央大学を経て、2003年に日立(現SR渋谷)に入団する。スピード感あるプレーが評価されて、2006年には、日本開催だった世界選手権日本代表に選出される。その後、トヨタ自動車(現A東京)、三菱電機(現名古屋D)と渡り歩き、2016-17シーズンから新潟に移籍。前身のNBLやBリーグのオールスターに選出されるなど、同級生の田臥勇太(栃木)に引けを取らない人気選手だが、意外にも、今季新潟で成し遂げた中地区優勝は、五十嵐にとっても初のチームタイトルだった。

柏木は、五十嵐の1学年下にあたる。東海大四から中央大学を経て、日立に入団。中央大学、日立では五十嵐と共に戦っていた。冷静沈着なプレーをみせるポイントガードで、2006年アイシン(現三河)に移籍すると、2017年の退団までリーグ戦4回(JBL3回、NBL1回)、天皇杯は9回制覇し、黄金期を支えた選手でもある。しかし、2017-18シーズンに在籍した名古屋Dでは、出場時間が減少し、レギュラーシーズンの出場時間も1試合平均11分を切っていた。そして、今季から新潟に移籍をしていた。

五十嵐、柏木ともに個人成績は昨季を上回る

改めて、五十嵐と柏木の個人成績を比較する。(レギュラーシーズンで比較)

まず1試合当たりの平均得点は、五十嵐が10.6から11.5に、柏木は1.9から7.8に跳ね上がった。一番顕著な変化としては、1試合あたりの平均出場時間だ。柏木は10分57秒から27分39秒、五十嵐は30分29秒から31分14秒に伸ばしている。Bリーグ全体でも、五十嵐は川村卓也(横浜)に続いて日本人2位、柏木も9位だった。

2018-2019シーズン第35節に出場した五十嵐圭Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ

ただ長いだけではなく、二人ともスタート5の一員としてチームをけん引。五十嵐がポイントガード、柏木は初挑戦となったシューティングガードでに入って、得点を求められるようになる。その期待に応え、強力なインサイドを形成したハミルトンやダバンテ・ガードナーらとともに、1試合平均のチーム得点を80点台にまで押し上げた。

「ベテランだからこそ出来ることを、シーズン通して証明できた」

Bリーグアワードショーで改めて、今季を振り返ってもらった。

五十嵐は「新潟のブースターと共に喜びを分かち合えたことは嬉しい」とし、柏木も「新潟の皆さんが取らせてくれた賞です。感謝の気持ちしかない」と両者ともに、まず新潟ブースターに感謝の気持ちを伝えた。

スピーチでも自ら発言した「おじさん」「ベテラン」という言葉に対して、どのように受け止めているのかを問うと、こんな答えが返ってきた。

2018-2019シーズン第26節に出場した柏木真介Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ

「年齢はコートに入ってしまえば、若手もベテランも関係ないと思っている。ただ、そういった年齢になって、自分たちがこういう形で賞を頂けるのは嬉しいこと。若い選手もいて、同年代の選手達もリーグで頑張っているので、負けないように良い刺激をもらっている。リーグの発展に少しでも力になれれば良い」(五十嵐)

「年齢的にベテラン扱いだが、シーズン通してうまく表現することができて、こういった賞に選出頂いたと思う。若手に負ける部分もあると思いますが、ベテランだからこそ出来ることを、シーズン通して証明できた。年齢は積み上がるが、プレーでは若手に負けないように、自分たちのモチベーションにして頑張っていきたい」(柏木)

プロである以上、キャリアの長さも関係なければ、若手やベテランという括りは関係なくなる。実力至上主義である以上、どのようなパフォーマンスを出せるのかで評価されるからこその発言だ。柏木は移籍1年目ながら、新たな挑戦に挑んだからこそのコメントだった。

そして、二人には一年間気を付けてきたことを聞くと、二人とも「体調管理と試合に向けてのコンディショニング」を真っ先に挙げた。

長く経験を積んできた選手らしく、プロとして当たり前の事を最優先に考えていた。若手ほど体力や勢いに頼れないからこそ「体調管理」なのだろう。柏木は、プレータイムが昨季から大幅に上昇した。ベテランになると、プレータイムを自重しがちだが、柏木は逆に増えたため特に気を使っていたようだ。

柏木はさらに「チームが勝つために何が必要かということを自分の中で考えて、整理しながら一年間通して伝えていくこと」も加えた。

そして、来季に向けての意気込み聞くと「今年積み上げてきたものを、更にレベルアップさせたい」と口を揃えた。新潟は、中地区優勝を掴んだが、チームとしては成長過程のようだ。

五十嵐、柏木のプレーに対する姿勢やコンディションへの意識を、新潟の選手が吸収すればさらに強力なチームに進化できるだろう。そしてそれは長く現役でプレーするための術でもある。基本中の基本だがプロに求められる姿を改めて二人から教えられた。