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【Bリーグファイナル】A東京リーグ連覇 仲間を信じて戦ったチャンピオンシップ

表彰式でトロフィーを掲げるアルバルク東京Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

【前半】A東京が2点リードで折り返す

開始早々、A東京#53アレックス・カークが、セカンドチャンスからバスケットカウントを成功させて先制。さらにコーナーから#24田中大貴が3pを沈めリードに成功するが、千葉#2富樫勇樹に連続得点を許して、すぐ同点に追いつかれる。すると、今度はA東京がカークのダンク、#6馬場雄大がスティールからファストブレイクを成功させ6点リード。千葉はたまらずタイムアウトを請求する。

中盤から拮抗した展開が続くが、終盤に千葉・富樫がフローター、ドライブで得点。A東京が1点リードで1Qが終了した。

2Q、1Q終盤からコートに入った千葉#5田口成浩が3pを決めて逆転。続けてオフェンスリバウンドから#1ジョシュ・ダンカンが得点し、#3マイケル・パーカーもダンクを叩きつけ、リードを広げる。さらに田口がフェイクして24点目を挙げ、流れに乗ったかに見えた千葉。しかし、ここで西村がファウルを2回するなど、展開が厳しいものに変わっていく。

ファイナル後半のアルバルク東京・田中大貴Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


相手のミスで流れを引き寄せることとなったA東京。田中が3pを沈め、#1小島元基もレイアップを決めるなど1点差まで詰め寄ることに成功し、ここでオフィシャルタイムアウトを迎えた。

その後千葉・田口に3pを連続で許すが、A東京は田中が3pを沈め、馬場の速攻で同点まで持ち込む。しばらく試合が動かなかったが、終盤、#3安藤誓哉がバックショットを決めてA東京の2点リードで前半が終了。ハーフタイムを迎える。

【後半】A東京・竹内の連続3pで主導権を掴み連覇達成

後半に入ってA東京は、最初のポゼッションから#15竹内譲次が3pを連続で沈めてリードを広げる。一方、千葉はターンオーバーが続き、田口に3回目の個人ファウルがコールされ、タイムアウトを挟むことに。しかしA東京の流れが続き、田中がバスケットカウントを成功させるなど、カークと合わせて7得点決める。千葉#31原修太にリングへアタックを許してレイアップを決められ場面もあったが、馬場が得点してリードを13点に広げた。

後半2度目のタイムアウトを請求した千葉。ここでもA東京の流れを変えることが出来ず、#10ザック・バランスキーの3p、リバウンド争いからカークも3pを決め、さらに田中もレイアップを入れて、19点リードで3Qが終了する。

4Qに入ると、A東京は19点を追いかける千葉に追い上げを許す。#21ギャビン・エドワーズが速攻から得点すると、田口からパーカーへアリウープを決められる。

千葉の勢いが増さないようA東京がタイムアウトを請求。その後、しばらく膠着状態が続いたが、千葉・エドワーズがレイアップで口火を切ると、富樫に連続3pを許す。結局5点差まで迫られ、ここでオフィシャルタイムアウトを迎えた。

このタイムアウトが明けると、A東京が反撃。馬場が4得点をあげるなど、リードを8点に広げた。

優勝が決定し喜ぶアルバルク東京Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


残り1分56秒、千葉・大野篤史HCが後半最後のタイムアウトを請求。残り時間をコート上の選手に託すと、千葉・富樫は3pを沈めるなど、2点差まで詰めてきた。

しかし最後は、千葉・富樫のファウルから獲得したフリースローをカークが2本入れて勝負あり。71-67でA東京が千葉を下し、リーグ連覇を達成した。

千葉の特徴を消すことに終始したA東京

ファイナルの会場、横浜アリーナでは「史上最強のワイルドカード」という看板を掲げていたA東京のファンもいた。A東京は、横浜アリーナで行われた最終決戦で栄冠を掴み、昨季に続いて連覇達成。この日にすべてをかけていた。

「千葉は速いチームなので、まずここを如何に抑えるか。簡単に走らせない、その後のオフェンスリバウンド。背後から飛び込んでくるチームなので、ボックスアウトをするなどして止めることを最重視した」とA東京ルカ・パヴィチェヴィッチHCが語る。

千葉が掲げる『激しい守備から走るバスケ』の象徴でもある、エドワーズや#3マイケル・パーカーに仕事をさせないことを、念頭に置いた試合だった。パーカーはファイナルで10リバウンドを記録したが、レギュラーシーズンやクォーターファイナル、セミファイナルで見せた、オフェンスリバウンドからの得点は無かった。結果、A東京は、前半でパーカーの存在感を薄める事に成功していたのだ。

そして、田中、馬場をスタート5で同時起用したことにも驚いた。シーズン中は別々に起用していたからだ。ルカHCは同時起用の意図を以下のように語る。

「田中、馬場は我々のピック&ロールのメインヒッター。レギュラーシーズンであれば60試合あるので、計算上別々で起用していた。しかし、ファイナルは一発勝負なので、メインヒッター二人を先発から起用して、主導権を握る必要があった」

また、メインヒッターの一人、田中は「前半タフショットやイージーなレイアップを落としてしまったが、3pを3本決めたのは大きかった。うまくいかなくても、終始アグレッシブにやろうと。3Qでエドワーズから奪ったバスケットカウントが一番良かった」と語る。馬場は「千葉の巧みなディフェンスに対しても、慌てずに周りへパスすることを一番に考えていた」という。

ベンチサイドに立つアルバルク東京のルカHCⒸマンティー・チダ

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チームとして勝利を掴むために、それぞれの立場で試合に臨んでいた。レギュラーシーズンでは、千葉に1勝5敗と分が悪かったからこそ、ファイナルでは千葉の持ち味を消し、ピック&ロールでポジションチェンジしながら、フリーになる選手を見つけてパスを供給。各々の役割を徹底させたことがリーグ優勝を大きく手繰り寄せたといっても過言ではない。

「ロッカールームにいるメンバーが本当の仲間」正中岳城

各々の役割と言えば、主将#7正中岳城の存在を忘れてはいけない。レギュラーシーズンの出場は20試合にとどまり、チャンピオンシップはファイナルも含め、出場機会は無かった。しかし、主将としてまとめるその姿は、チームにとっても欠かせない存在であり、誰よりもチームのことを愛していた。

「チャンピオンとしてファイナルを戦ったことはあるが、12年目のシーズンにして、成し遂げられたことは嬉しい」とベテラン戦士もリーグ連覇は初経験だった。

「第7シードから自分たちは始まっているので、ファイナルまでどのように進めるかを考えていた。昨季も今季もシーズンで結果を出せなかった。新潟にも苦戦し、琉球にはホームで連敗していたので」とA東京は東地区3位に終わり、ワイルドカード上位チームとしてチャンピオンシップに進んでいた。

ワイルドカード上位チームとしての進出だったので、ファイナルまでは全てアウェイの戦いであった。

「実感として、プレーオフに向かっていく中で、自分たちが成長し、より良いチームになっていこうというものは、自分たちの中で見つけることができていた。だから、自信をもってファイナルには立っていた」と正中は話す。

千葉には分が悪かった。正中は、それを認めた上で「どのようにしてやられたのか。天皇杯準決勝や千葉のホームゲームもそうだし、リードしながらコントロールできなかった試合をいくつも落とした。どのようにコントロールして勝ち切るのかが今季のテーマだった」と付け加えた。

確かに、天皇杯準決勝の時は、千葉のラストポゼッションでパーカーに得点されて敗退。その後の千葉とのアウェイゲームでも、3Qの出だしでターンオーバーからペースを握られ、最後は追い詰めきれなかった。しかし、チャンピオンシップセミファイナルでは、琉球とGAME3までもつれ込む死闘を制して、ファイナルの舞台に駆け上がってきた。

琉球とのGAME3から中3日でファイナルというタフなスケジュール。「ルカHCからは『琉球とのGAME3は、ファイナルに向けてこの上ない練習にできた』と。チーム全員そういう気持ちで、疲弊しているところもあったけど、乗り越えてファイナルを迎えることができた」と語る。

チャンピオントロフィーを掲げるアルバルク東京の正中岳城Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ


「しんどさとか疲れはあったけど、この40分だけで決まる。全員が、ここで力を発揮するという力強さは出せた。前日は疲れている感じもあったが、朝になったら全員やるしかないなと。ロッカールームにいるメンバーが本当の仲間だし、信頼していくしかないので、コートに自信を持って立てたかなと思う」と続けた。

ファイナルに向かうまでやファイナルを戦っている間も、裏側では、選手やスタッフは疲労を感じながらも、仲間を信じて戦っていた。王者になるためには、追い詰められた状況でも「やるしかない」という気持ちを続けられるか、改めて感じた次第だ。