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A東京が千葉を下し2連覇、令和最初のB1王者に TOに苦しむも堅守を武器に僅差で勝利

2019 5/13 18:25SPAIA編集部
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ターンオーバー12個にFG%は40% “らしく”なかったA東京

Bリーグ最多12,972人の観衆が見守った今季のファイナル。昨季に続いて千葉ジェッツvs.アルバルク東京というカードとなったが、A東京が71−67で勝利し2連覇を達成した。

展開としては前半こそ拮抗した展開だったが、3Qに#15竹内譲次や#24田中大貴の活躍でA東京が最大19点のリードを獲得。その後は千葉が#2富樫勇樹、#21ギャビン・エドワーズの両軸を中心に追い上げ、点差を詰めたものの、あと一歩及ばず、A東京が逃げ切ったという試合だった。

勝利したA東京だが、決して“セオリー通り”の展開ではなかった。

今季のA東京は#3安藤誓哉の成長、田中の堅実なボール運びに加えて、一人一人のボールを持つ時間の少なさもあり、ターンオーバーはリーグで2番目に少ない9.4本。ミスの少なさには定評があった。

だがこのファイナルではミスが多く、試合を通して12本のターンオーバーを犯していた。

加えて田中、#53アレックス・カークのシュートが嫌われる場面が多く、FG%もシーズン平均よりも6%も低い40%。特に7得点に終わった4Qは約6分間無得点等、試合を振り返ってみれば苦しい時間帯が多かった。

フリースローの確率もわずか50%と、これらの数字を見ると勝利したチームには思えないが、これが年間王者を決めるファイナルの熾烈さということか。強固なディフェンスを軸に僅差で勝利を勝ち取った。

ピックアンドロールを効果的に決めたA東京

A東京と千葉、ともにオフェンスの中心はピックアンドロール。優秀なハンドラーとビッグマンの2対2から攻撃を展開する。

A東京はガードの安藤や田中、#1小島元基、#6馬場雄大とハンドリングに長けた選手が多く、一方の千葉は富樫のみ。両クラブともにこの形で戦ってきたが、A東京は様々なディフェンスを駆使して富樫のピックアンドロールを阻止。絞りどころが1箇所のみのため、守りやすかったのだ。

3Qまでのピックアンドロールの機会はA東京が35回に対して、千葉は22回。千葉のその多くが富樫から生まれており、流れからではなく苦し紛れの機会も多々あった。A東京の35回は全選手が動きながら生まれたもので、成功数自体は12回だったものの、点差を広げた3Qのピックアンドロールからの得点は8回。立ち上がりに竹内が連続で3Pシュートを決めたのも、ピックアンドロールからハンドラーがドライブ、キックアウトから生まれた得点だった。

対して千葉は22得点を挙げた4Qで10回の機会のうち、6回も得点につなげていた。ファストブレイクポイントがわずか5と武器が封じられる中、どのように得点を伸ばすのか――。これはシーズン中からの課題ではあったが、1〜3Qまでで理想の形ができなかったことが悔やまれる結果になった。

勝負強さの裏にボールへの執着心と司令塔の安定感

ターンオーバーが多く、シュートの確率が伸びなかったA東京の戦い方がシーズン通りではなかったことは先述したが、この試合ではオフェンスリバウンドを14本も奪取している。シーズン中は9.4本だから5本近く多く、つまりのその分オフェンスのチャンスを生み出したと言える。

そのうち6本がPG、SG、SFの選手が奪ったもので、印象的なシーンが3Q残り2分からの攻撃。田中が難しい体勢から放ったシュートがリングに嫌われ、そのリバウンドを小島が獲得。さらにその後も小島がオフェンスリバウンドを奪って振り向きざまにコーナーに移動した#51ミルコ・ビエリツァにパスをすると攻撃制限時間ギリギリで3Pシュートを成功させたのだ。

またこの小島と安藤の司令塔2人は、ターンオーバーをわずか1つに抑えた。優勝した昨季はこのガードのポジションが若く、安定感に欠ける試合が多かったが、今季は2人が大きく成長。安藤は全60試合に先発出場した上に、成績を向上。特にチャンピオンシップに入ってからは、平均12得点、3アシスト、ターンオーバーはセミファイナルの琉球ゴールデンキングス戦以降は0本と抜群の安定感だった。

小島も控えからの出場でオフェンスリバウンドやディフェンスで貢献。直接得点には結び付いていないものの、ドライブから他の選手にパスを配給するなど流れを変える役割を担った。

ケガを負いながらこのファイナルに照準を合わせてきた田中、MVPを獲得した馬場、インサイドで体を張ったカークの活躍はもちろん、脇を固めるメンバーの存在も光ったA東京。決してシーズンのような試合運びではなかったものの、“WE”の力を結集した2連覇となった。