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【Bリーグ】最短でB1復帰した島根 総合力の高さで“唯一”の椅子を射止める

2019 5/10 11:00SPAIA編集部
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安定感のなかった昨季、厚かったB1の壁

B2プレーオフ3位決定戦で熊本ヴォルターズに91−88、82−77で連勝した島根スサノオマジック。今季はB2ファイナルに進出した信州ブレイブウォリアーズ、群馬クレインサンダーズがB1ライセンスを持っていないため、B2で3位のクラブがライジングゼファー福岡と入れ替わる形でB1昇格ができる流れになっていた。つまり、この3位決定戦の結果で島根がB1に昇格することになったのだ。

島根はB2初年度を51勝9敗と最高勝率でシーズンを戦い抜き、最終的には準優勝だったものの次年度のB1での戦いに希望を持たせるシーズンだった。

しかし、勝久マイケルヘッドコーチ(現信州ヘッドコーチ)から鈴木裕紀ヘッドコーチに指揮官を変更し、選手も一新。シーズン中にも7名の外国籍選手が入れ替わるなど、終始安定せず11勝49敗で終了。残留プレーオフにも敗れ、わずか1年でB2降格となった。

低迷の原因は、やはりチームを総入れ替えしたことにある。前年B2最高勝率を記録したチームから残留したのは2名のみで、ヘッドコーチも交代したことでケミストリーやプレースタイルなど、一からチームを作る必要があった。その上、外国籍選手が何度も入れ替わるなど、終盤にかけてチームの熟練度を上げていくはずが、年間を通してチーム作りをしていた印象だった。

そのため平均得点は最下位の70.9、FG%は16位の42.3%などアシスト数やターンオーバー数でもリーグ下位に低迷。オフェンスで苦しむ試合が多かった。

チームの主力が残留、終盤に状態を上げた今季

チーム編成が安定しなかった前年の反省からか、今季は#0佐藤公威、#18相馬卓弥ら主力の日本人選手が残留。その上で#6北川弘、#7坂田央と力のある日本人に、ベネズエラ代表の#8グレゴリー・エチェニケ、ハンガリー代表の#25ロスコ・アレンを加えて、シーズン開幕を迎えた。

シーズン当初はスタメンを入れ替えながら、またケガ人が多かったことで20試合を終えて13勝7敗と同地区の広島ドラゴンフライズと熊本の後を追う展開となった。しかし、アレンが復帰した10月末以降は、北川、相馬、佐藤、エチェニケ、アレンのスタートをほぼ固定。さらには層の薄かったガードポジションに#33与那嶺翼が加わり、安定感が増した。

与那嶺は移籍してきたとはいえ、鈴木ヘッドコーチの現役時代にはチームメイトであり、金沢武士団でも鈴木ヘッドコーチの下でプレーしていたため、その考えを熟知していた。加えて、ベテランとしてリーダーシップを発揮することで、チームケミストリーの向上にも大きく貢献することができたのだ。

序盤に黒星が多かったものの、43勝17敗で西地区2位、ワイルドカードでプレーオフへの進出を果たした。戦う舞台が違うため単純な比較はできないが、得点が約10点アップの80.5、FG%は46.5%、アシストは22.2と大きく向上。昨季は発揮できなかったものの、本来の鈴木ヘッドコーチのスタイルであるディフェンスでも失点73.4、リバウンド39.6とリーグでも高水準を終始維持した。

接戦での強さを熊本戦でも発揮

こうして安定感が増した今季の島根の特徴は接戦の強さ。10点差以内の勝率は7割で、特にアレンが復帰してからは18勝6敗と7割5分という高い数字だった。インサイドにボールを集めながら、勝負どころで佐藤がピシャリと3Pシュートを決め、全員で相手の得点を防ぐ。まさにチームバスケットで僅差を競り勝っていたのだ。

その強さが証明されたのが、B1昇格を決めた熊本戦。初戦では熊本にリードを許しながら、35得点20リバウンドを記録したエチェニケと、ガードの北川の活躍で追い上げる。アレンのフリースローで延長に持ち込むと、ここでもエチェニケが確実にフリースローを決めて接戦を制した。

第2戦では初戦を制した勢いそのままに、1Qで31−17と圧倒。この試合でも北川、エチェニケ、アレンが大車輪の活躍を見せ、追いすがる熊本を退けた。

アウェイでの勝率が23勝7敗の7割6分と、その部分でもシーズン通りの結果となった島根。難しい敵地で勝ち切る自信があったことも大きかった。

昨年の悔しさを知る佐藤や相馬、鈴木ヘッドコーチとB1昇格を果たすために移籍してきた北川や与那嶺など、それぞれの思いが成就する結果となったが、来季のB1ではどういった布陣で戦うのかに早くも注目が集まる。総入れ替えをして失敗をしただけに、昨季の二の舞だけは避けたいところだ。