福岡が条件付きB2クラブライセンス、金沢が未交付
Bリーグが2019-20シーズンのライセンス判定を発表した。結果は以下の通り。
※今シーズンの所属ごとに、2019-20シーズンのライセンスを明記
<2018-19シーズン B1所属チーム 交付結果>
【B1交付】
北海道・秋田・栃木・千葉・A東京・SR渋谷
川崎・横浜・新潟・富山・三遠・三河
名古屋D・滋賀・京都・大阪・琉球
【B2交付】
福岡(条件を充足した場合に限り、ライセンス付与の効力発生)
<2018-19シーズン B2所属チーム 交付結果>
【B1交付】
仙台・山形・茨城・島根・広島・熊本
【B2交付】
青森・福島・群馬・東京Z・八王子・信州
FE名古屋・奈良・西宮・香川・愛媛
【不交付】
金沢
<2018-19シーズン B3所属・準加盟チーム 交付結果>
【B2交付】
岩手・東京EX・埼玉・越谷
金沢はBリーグライセンス不交付に終わり、福岡はB2クラブライセンスを条件付きで交付された。しかし福岡は、4月29日までに必要資金を確保することを条件とし、確保できない場合は、金沢と同じくBリーグライセンスを失うことになる。
金沢については、3期連続の赤字見込みとなり、大河正明チェアマンは「軽微ではなく大きな赤字。もう一度体制を整えて、戻ってきてほしい」とコメントした。
「ファイナンシャルフェアプレー」和歌山トライアンズの悲劇は繰り返さない
大河チェアマンは、改めて「ファイナンシャルフェアプレー」の重要性を強調した。今回、厳しい審査結果となった2クラブも含めて「最悪の事態」は避けたいという想いが垣間見えた。
思い返せば、Bリーグが発足する前は、クラブ消滅というニュースが流れ、バスケ界にとっても失望感が漂っていた。いくら強いクラブでも、財務が成り立たないと、地域に根付くことはできない。「身の丈に合った経営を実践してほしい」と大河チェアマンは語る。
いくら強くても、財務が悪化し廃部や消滅に追い込まれたクラブは過去にある。代表的な事例で言えば、NBL時代の「和歌山トライアンズ」だ。
「和歌山トライアンズ」の前身は、パナソニックのバスケットボールクラブ「パナソニック トライアンズ」だ。1951年創部で、かつては「スーパーカンガルーズ」と呼ばれたこともあり、多くの日本代表選手を送り出していた。リーグ戦13回、オールジャパン10回など全国タイトルを数多く獲得し、日本バスケ界のトップランナーでもあった。最後のシーズンとなった2013年オールジャパンで優勝し意地を見せたが、リーグ戦はプレーオフを逃し、松下電器バスケットボール部時代から数えて62年の歴史に幕を下ろすことになる。
なお、当時所属していた主なスタッフや選手は、6試合HC代行をした大野篤史(千葉HC)、木下博之(大阪)、小林慎太郎(熊本)、金丸晃輔(三河)、根来新之助(大阪)、広瀬健太(SR渋谷)。彼らをはじめ他にもBリーグで活躍を続けているスタッフや選手がいる。
その後、NBL参加権を和歌山に発足したクラブに譲渡。「トライアンズ」の名を継承し、「和歌山トライアンズ」として活動を開始し、当時のパナソニック所属選手も半数ほどが新クラブに加わった。
2013-14シーズンは、元日本代表HCのジェリコ・パブリセヴィッチ氏をヘッドコーチに招聘し、前シーズン栃木所属だった川村卓也(横浜)やマイケル・パーカー(千葉)らを補強して、シーズンに臨んだ。レギュラーシーズンはウエスタンカンファレンス1位で終えて、プレーオフに進出。決勝で東芝神奈川(現川崎)に敗れたが、準優勝でシーズンを終えていた。
クラブは好成績に終わっていたが、肝心の財務が低調だった。Bリーグの指標にもなっている入場者数とスポンサー収入が低迷し、シーズンで好成績を残したにも関わらず、ジェリコHCが退団、運営会社の社長やスタッフも退職。経営体制も一新して翌シーズンに備える。
そして、2014-15シーズンに入り、恐れていたことが現実に。リーグ戦開幕当初は連勝スタートしたが、故障者が相次ぎ、当時のHCもシーズン途中で退団し、アシスタントコーチがHCに就任。2015年1月7日には運営会社が事業停止し、NBLに退会届を提出。3月には和歌山地方裁判所から破産手続き開始決定を受けた。
これにより、選手・スタッフは退団を余儀なくされ、移籍などの対応に追われた。その後「和歌山トライアンズ」は、B3リーグ加盟を目指し審査を受けるものの、2018-19シーズンは加盟承認不可の判断が下された。
財務が見込めなければ「クラブライセンス」は発行できない
今回のクラブライセンス判定発表において、財務面で希望通りのライセンスを受けられないクラブもあった。今季B2の全体首位を走りながら、B1ライセンスが交付されなかった信州もそのうちの1クラブである。
信州は大河チェアマンから以前、「ファイナンシャルフェアプレーではない。身の丈に合った経営をして欲しい」と指摘されており、昨期は債務超過に陥っていた。
B1クラブライセンスの交付基準には「ライセンス申請者の計算書類において、申請期日の属する事業年度の前年度末日現在、純資産の金額がマイナスである(債務超過である)場合、本基準は充足しないものとする」と記載されている。信州はこれを達成できない事から、B1クラブライセンス交付を見送られ、2019-20シーズンもB2で戦うことが決まった。
信州はクラブライセンス判定発表までに、地域を奔走しており、B1クラブライセンス交付の条件となるホームアリーナ保持のため、来季からホワイトリンク(長野市総合スポーツアリーナ)へホームを移すことを発表。平均入場者も昨年から16.7%増加するなど見通しは明るい。しかし、B2平均入場者数上位7クラブのうち、信州のみB1クラブライセンスの交付を受けられなかった。
首位を走り、入場者増加予定と大きなチャンスを掴みながらも、このように財務面で足を引っ張られることになった。
今回の発表で、財務面で保留となっていたクラブも、スポンサーの増資などでクラブライセンスを確保している。
一番避けないといけないのは「地元のクラブが無くなる事」だ。福岡や金沢のように、無理をし過ぎると、経営にも影響が出てしまう。最悪の状況を回避させるためにも「身の丈経営」は維持してほしいところである。
5000人収容のホームアリーナ確保で明るい兆しへ
Bリーグが誕生して、まもなく3シーズン目が終わろうしている。Bリーグが示していたアリーナ基準についても状況が発表された。
参加審査時に新設アリーナ計画等があり、アリーナ基準を満たしていなくても該当クラブライセンスの交付を受けていたクラブは、2022-23シーズン中に新設アリーナ若しくは基準を満たすホームアリーナに移転可能であることが盛り込まれている。そして、今後はライセンス判定時期から3年以内に着工若しくは5年以内に竣工の新設計画があることが盛り込まれている。
そして、各クラブがホームアリーナの確保に概ねめどがついてきた。栃木は現在のホームアリーナであるブレックスアリーナ宇都宮が、5000人収容可能と判定され、A東京は2022-23シーズンから代々木第一体育館を使用し、別途新設アリーナの計画があることが発表された。
その他にも、三遠、三河、琉球で新設アリーナ計画があり、茨城も4月からADASTRIA MITO ARENA(東町運動公園新体育館)をホームアリーナとして利用開始し、こけら落としとなった6日の群馬戦では、入場者が5000人を超えていた。
今季B2クラブライセンスを受けることが出来ず、B3リーグでシーズンを迎えていた東京EXも、2023-24シーズンから東京23区内に計画される新設アリーナを利用できるめどが立ち、2季ぶりにB2クラブライセンス交付を受けることができた。
一方で、B1クラブライセンス交付を申請していた西宮とFE名古屋は、新設アリーナがB1基準を満たすことが出来ず、B2クラブライセンス交付の判定が下る。
そして、最後まで新設アリーナで難航していた滋賀は、2022-23シーズンから滋賀県がびわこ文化都市公園で整備する施設を利用することが決まり、B1クラブライセンス交付を受ける運びになった。
B1とB2の昇降格
福岡が条件付きでB2、金沢が不交付となり、レギュラーシーズン終了後に行われるB1残留プレーオフ、B1・B2入替戦の内容に変更が生じた。
残留プレーオフは16位から18位までが戦い、18位となったチームがB2へと降格する。すでに15位以下が横浜、福岡、北海道と決まっており、今回クラブライセンスを交付されなかった福岡が含まれるために2回戦は開催がなくなった。
よって、横浜と北海道で残留プレーオフを戦うこととなる。
B2からB1に昇格するフローとしては、プレーオフに進出を決めたクラブでB1クラブライセンスを保有するクラブがいくつあるかで状況が変わる。
共通事項としてB1に自動昇格するためには、B2プレーオフで1位になること、1位でない場合は準優勝以上が結果として求められる。そして、3位以下の場合は、B1残留プレーオフ最下位クラブと入替戦を行い、4位の場合は繰り上げなしのため、来季もB2でシーズンを迎える。
B2とB3の昇降格
同じくB2・B3の昇降格についても、変更が生じる。B2ライセンスを交付されているクラブを前提にする。B2との入れ替え戦に進むB3は、3位以内に入らないと出場資格はない。
ライセンス不交付クラブが1クラブの場合、B2ライセンスを保有するB3・1位のクラブが自動昇格。B2ライセンスを保有するB3・2位が、B2最下位と入替戦を行うこととなる。
このようにクラブライセンス判定結果により、プレーオフ間際に昇降格の試合状況が変わってくる。ホームアリーナの要件を満たしていても、シーズンを通してチームを運営し続けることに難なしの財務面がクラブ側には求められ、それにより交付の明暗もわかれた。しかしリーグやクラブの価値の向上につなげるため、プロリーグとしてふさわしい水準を保つことが必要であろう。