「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

千葉ジェッツの3連覇を止めるられか【第94回天皇杯 展望】

天皇杯,Bリーグ,Ⓒマンティー・チダ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒマンティー・チダ

1月10日 さいたまスーパーアリーナでファイナルラウンド

第94回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会は、1月10日より今年もさいたまスーパーアリーナ(埼玉県さいたま市)でファイナルラウンドを迎える。2次ラウンドを勝ち上がった8チームによって、トーナメント方式で戦われるこの大会。千葉ジェッツが3連覇達成するのか? 連覇を止めるチームが現れるのか? 一発勝負ならではの波乱も起こるのか? 準々決勝全カードを見ていく。

天皇杯,Bリーグ,Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ

サンロッカーズ渋谷VS.栃木ブレックス

今季Bリーグで対戦がない両チーム。栃木ブレックスは、リーグ戦優勝経験はあるが、天皇杯とは無縁だ。

第90回大会で両チームは準々決勝で対戦し、82-61でサンロッカーズ渋谷の前身、日立サンロッカーズ東京が勝利する。その時に栃木ブレックスの選手として出場していた#0田臥勇太、#9遠藤祐亮、#13渡邉裕規、#22ライアン・ロシターは現在もチームの主力として所属し、安齋竜三HCも当時はACとして帯同していた。

栃木は過去2大会でいずれも千葉に敗退し、天皇杯から去っている。今回、千葉と対戦するためには、決勝まで勝ち残らなければならない。1発勝負という怖さはあるが、初戦となるサンロッカーズ渋谷戦は是が非でも勝ちたいところ。直近のリーグ戦も激しいディフェンスで試合を作れているので、リーグ戦とは違う緊張感でどこまで持ち味の守備をやり切れるかだろう。

一方のサンロッカーズ渋谷は、伊佐勉HC就任以来リーグ戦11月6勝3敗、12月5勝5敗とシーズン序盤の不振からは脱出。昨季は守備で好成績を残していたが、攻撃面で得点を重ねられない試合が数多くあった。しかし、伊佐HCが目指す「リングにアタックし、全員でボールシェアして全員で攻める」スタイルが浸透し、チーム力も上がってきた。

直近のリーグ戦では3連敗を喫しているが、#6ロバート・サクレと#34ライアン・ケリーを中心とした爆発力からの全員攻撃で、栃木ブレックスの守備を粉砕したいところだ。これができればサンロッカーズ渋谷に勝機はあると考えられる。

大阪エヴェッサVS.京都ハンナリーズ

前身のbjリーグ時代から「京阪ダービー」として親しまれている。大阪エヴェッサは、bjリーグの初代王者。2005-06シーズンから3連覇を飾っているが、それ以降タイトルには恵まれていない。一方の京都ハンナリーズは、昨季Bリーグチャンピオンシップに初出場を決めたが、クオーターファイナルでアルバルク東京に敗れている。

「京阪ダービー」で忘れていけない試合は、bjリーグ2011-12シーズンのカンファレンスセミファイナル。大阪エヴェッサのホームゲームとして住吉スポーツセンター(現 サンエイワーク住吉スポーツセンター)で開催された。1勝1敗で迎えた第3戦で、京都ハンナリーズは終了間際に3pを沈めて逆転勝利し、ファイナル4が行われる有明コロシアムに初進出を決めた試合だった。ちなみにこの試合を指揮していたのが、就任1年目の浜口炎HC。

今季の「京阪ダービー」は京都ハンナリーズの1勝。しかし、ここ数試合の大阪エヴェッサには充実ぶりが伺える。特に平均失点は、琉球ゴールデンキングス(68点)、アルバルク東京(69.1点)に次ぐ3位(69.9点)。(2019年1月7日現在)60点台はこの3チームのみだ。激しさを売りにしている千葉、栃木よりも平均失点は少ない。昨季は平均失点70点台後半だったので、穂坂健祐HCが就任した今季からチームスタイルが大きく変わったことを意味する。そして、12月23日栃木ブレックス戦から4連勝と上り調子で天皇杯を迎える。

対して京都ハンナリーズは、#32ジュリアン・マブンガと# 50デイヴィッド・サイモンが攻撃の柱となり、司令塔#3伊藤達哉を中心に「アタック・ザ・バスケット」を掲げ、リングにアタックしてファウルからフリースローをもらうことを目標にしている。bjリーグ時代はしっかりボールを回しながら、平均失点70点台前半を目標にしていたが、Bリーグに入り少し攻撃に目を転じるようになった。今季のリーグ戦序盤は、西地区2位争いに絡んでいたが、直近では5連敗を喫し、気が付けば大阪エヴェッサに1ゲーム差まで迫られている。

守備重視の大阪エヴェッサと向かっていく姿勢を見せたい京都ハンナリーズ。ロースコアゲームならば大阪エヴェッサ、ハイスコアゲームならば京都ハンナリーズが優位に立つだろう。

シーホース三河VS.アルバルク東京

これまで天皇杯において、常に名勝負を繰り広げた両チーム。シーホース三河は、前身のアイシン時代も含め優勝9回。アルバルク東京は、前身のトヨタ自動車時代から数えて2回の優勝を経験する。

シーホース三河は、橋本竜馬(現 琉球ゴールデンキングス)、比江島慎(現 栃木ブレックス)が抜けて、ガード陣の総入れ替えを余儀なくされた。現在Bリーグも16勝15敗で中地区4位。浮き沈みが激しく、安定しないのが現状か。ただ、一発勝負になると無類の強さを発揮する。天皇杯過去3大会ベスト4以上に残り、第91回大会は、第90回大会で第1シードながら千葉ジェッツに足元をすくわれた悔しさをバネに優勝を決めている。決勝では選手全員が赤いバッシュを履いて試合に臨んだことは、当時のニュースになったほどだ。

アルバルク東京は、リーグ戦で11月に調子を落とす時期もあったが、東地区上位の千葉ジェッツ、栃木ブレックスと互角な戦いをするなど調子を上げている。平均失点もリーグ2位で、ディフェンスゲームになれば、優位に試合運びができそうだ。シーホース三河は、リーグ1位のオフェンスリバウンドと3pシュート成功率が勝敗を分けるポイントになる。

1発勝負にかけたいシーホース三河か? 3冠達成に弾みをつけたいアルバルク東京か? 今季ホーム以外では3勝12敗と大きく負け越している三河が、セントラル開催をきっかけに苦手意識を無くしたいところだ。

川崎ブレイブサンダースVS.千葉ジェッツ

節目の時期に対戦することが多い両チームが、ファイナルラウンド準々決勝で再び顔を合わせる。昨季のチャンピオンシップクォーターファイナル、今季のBリーグ先出し開幕戦で対戦しているせいか、川崎ブレイブサンダース主将#7篠山竜青も「苦笑と書いておいてください」とコメントするほどだ。千葉ジェッツが天皇杯初制覇を決めた時に、決勝で顔を合わせたのも川崎ブレイブサンダース。いろんな意味で、好ゲームが期待できる。

千葉ジェッツのキーマンには、#34小野龍猛を挙げたい。開幕戦で川崎に連敗したが、その後は10連勝するなど、チーム状態は週を追うごとに良くなり、遂に栃木ブレックスをかわして東地区首位に躍り出た。小野は2018年10月13日の三遠ネオフェニックス戦で右手舟状骨骨折をして戦線離脱したが、天皇杯に間に合うように、12月27日のレバンガ北海道戦から戦列復帰し、ここまで徐々にプレータイムを伸ばしている。チームの上り調子と共に、小野もスタート5からエンジン全開となれば脅威だ。

川崎ブレイブサンダースも、直近は3連勝で調子を上げている。#14辻直人の不在は痛いが、チームの上り調子と共に、大黒柱の#22ニック・ファジーカスが絶好調だ。ここ数試合は「シュートの調子が良い」とファジーカス自身も認めている。1月5日の秋田ノーザンハピネッツ戦では今季4試合目の30点台を達成し、前節の三河戦から2試合連続で30点台とした。

開幕戦はけがで欠場のため、千葉ジェッツから考えれば、ファジーカスが出場する川崎ブレイブサンダースとは今季初顔合わせ。ファジーカスが、アウトサイドからの3pや、ペイントエリアでしっかり得点できれば、試合運びが優位になる。秋田ノーザンハピネッツのプレッシャーディフェンスを問題にしなかったシュートタッチは、千葉ジェッツ相手にも順応できるか? ファジーカスの出来次第で勝敗は決まりそうな予感がする。