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【Wリーグ開幕】JX-ENEOSが11連覇へ好発進 次世代を担う選手の活躍に期待

2018 10/24 11:30マンティー・チダ
JX-ENEOS,Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

【開幕戦振り返り】JX-ENEOSが山梨を攻守共に圧倒

JX-ENEOSは#52宮澤夕貴のオフェンスリバウンドから、#33梅沢カディシャ樹奈がバスケットカウントとなる3点ショットで先制し、さらに#10渡嘉敷来夢の3pシュートで山梨を引き離す。その後は、リバウンドからの速攻で得点を重ね、主導権を握る。

14-8として山梨にタイムアウトを請求されるが、渡嘉敷、宮澤の勢いは止まらない。終盤、点差を詰められる場面もあったが、JX-ENEOSは山梨に9点のリードをつけ1Qを終了する。

JX-ENEOS,渡嘉敷来夢,Ⓒマンティー・チダ

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2Qに入って、JX-ENEOSは#12吉田亜沙美を投入。1Q終盤でやや劣勢になっていた雰囲気を一掃するように、チームをコントロールする。

梅沢、#23大沼美琴、#11岡本彩也花のレイアップなどで順調に得点を稼ぐと、最後は吉田がスティールからのファストブレイク。チーム43点目となるカウントワンショットも入れて、このタイミングでベンチへ。吉田がコートに立った4分38秒の間で18得点を上乗せし、リードを23点とした。

その後も順調に得点を重ねたJX-ENEOSは残り2分18秒、ルーキーの#5藤本愛瑚を投入。コートに入って最初のシュートとなった3pシュートを沈め、Wリーグ初得点を挙げると、その後は相手を無得点に抑え、25点リードで前半を終える。

後半に入ってもエンジン全開のJX-ENEOSは、3Qの途中から控えメンバー中心に試合を進める余裕すら見せて、山梨を96-47で下し開幕戦を勝利で飾った。

「『スリー打っちゃえ』と思い打ちました」JX-ENEOS藤本愛瑚

11連覇に向けて好スタートを切ったJX-ENEOS。佐藤清美HCは「こんなもんではないですか?11連覇についてはあまり考えないようにしているけど、まだ早いですね。1戦1戦を大事にしたい」と開幕戦を振り返った。

記録が掛かっているチームに、今季から桜花学園出身の#5藤本愛瑚(まこ)が加入した。桜花学園時代は、主力としてインターハイ、ウインターカップの優勝に貢献した。

藤本はアスリート一家で育つ。父親はプロ野球元オリックス捕手の俊彦さん。母親は女子バレーボール元日本代表の美加さん(旧姓山内)。姉は2017年台北で開催されたユニバーシアード女子バスケットボール日本代表で50年ぶりの銀メダル獲得に貢献した愛妃(東京医療保健大学3年)。

俊彦さんは試合当日、ネットテレビで観戦していた。「娘のデビュー戦が気になって仕方なかった。強豪チームの中で愛瑚がいるのが不思議」と心境を綴る。藤本は「前日に父から『がんばれ』とメッセージをもらった。心配はしていると思うけど、自分にはあまり言わない」と話す。

JX-ENEOS,藤本愛瑚,Ⓒマンティー・チダ

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開幕戦に臨む上で「緊張するタイプだけど、リーグ戦が始まる実感が無かった。しかし、アップが始まると実感が湧いてきて緊張がすごかった」と話したが、早速出番がやってくる。

2Q残り2分18秒、Wリーグの選手として初めてコートに入った藤本は、パスをもらってボールをキープする。しかし、ファンブルしてしまい、相手選手にボールを奪われそうになった。「手の感覚がおかしくて滑ってしまったが、ターンオーバーにならなくて良かった」と話す。

不安なデビューとなったが、次の攻撃時、フリーでボールを受けた藤本は躊躇なく3pシュートを放ち、リーグ戦初得点を記録。「ボールをもらったらドライブからジャンプシュートしようと思ったが、ノーマークになったので『スリー打っちゃえ』と思い打った」と得点シーンを振り返った。

佐藤HCも「良かったのでは?3pシュートも決めたから」と攻撃面では評価したが「守備が出来ていないので、経験を積んでほしい」と課題も付け加えた。

藤本も課題は認識していた。「シュートは得意で、迷いなく自分のタイミングで1対1が出来ているが、守備ができないと試合に使ってもらえない。試合に多く出られるようにしたい」とした。ただこの試合については「あまりやられていないので60点から70点ぐらいかな?」と笑顔で答えた。

まだ19歳。シーズン通じてどう成長するのか、注目しよう。

「覚悟を決めないといけない。殻を破りたい」JX-ENEOS林咲希

#7林咲希はセカンドユニットの1人として開幕戦のコートに立った。19分3秒出場で5得点。3pシュートも1本しか決められなかった。試合後、林は「正直迷いはある」と口にする。

2017年に白鴎大学を卒業後、JX-ENEOSに入団。学生時代は全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)を制し、最優秀選手賞と得点王にも輝いた文字通りのチームのエースだった。ユニバーシアード女子日本代表の一員としても50年ぶりの銀メダル獲得に貢献。ドライブからのジャンプシュートや3pシュートが持ち味で、林にボールを預ければ絶対的なものがあった。

今季、入団2年目を迎えた林。「去年より落ち着いて出来ていたが、自分をもう少し出せたかなという想いはあった。迷わず自分からアピールしていこうという気持ちで終わった」と開幕戦を振り返る。

大学時代から見ていた筆者からすると、開幕戦のプレーぶりは少し物足りなさを感じた。それを林に聞くと、彼女自身も理解を示した。

JX-ENEOS,林咲希,Ⓒマンティー・チダ

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「自分の持ち味が何なのか考え過ぎている。『もう少しリングにアタックしないといけない』『セットプレーでこうしないといけない』というのが無意識にある。チーム内で決まりごとが特別にあるわけでもないけど、自分が引き気味になっているのかもしれない」と本音を漏らす。

大学時代の実績からすればJX-ENEOSという名門チームでも、スタート5として名を連ねて良いはずだ。しかし、渡嘉敷・吉田など日本を代表とする先輩たちと一緒にプレーをする中で「遠慮している所もある」と林は話す。

「私の持ち味はチームの選手全員わかっている。もっと点を取らないといけないし、そこに徹しないといけない。タクさん(渡嘉敷)、アースさん(宮澤)とコートに立つときに、2人に点を取らせようという気持ちがあるかもしれない。タクさんと一緒に出ている時は、リバウンドを取ってくれるのでどんどん狙おうと思っているが『ミスしたら』とか考えてしまう。これを無くさないといけない」と課題を口にする。

「開幕戦からこういう感じになってしまうとプレータイムも減っていく。覚悟を決めないといけない。殻を破っていきたい」。実際、2戦目は出場2分52秒で無得点に終わった。

林が殻を破った瞬間、チームに新たなピースを加えることができる。スタート5の1人として、スコアラーとして、チームにフィットした時、JX-ENEOSはまた進化するのだろう。