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サンロッカーズ渋谷・杉浦佑成「今”伸びしろ”を感じている」

サンロッカーズ渋谷,Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

昨季東地区5位、今季こそチャンピオンシップ進出へ!

東地区で5位に終わった昨季のサンロッカーズ渋谷(以下SR渋谷)。開幕10試合までは4勝6敗だったのだが、13試合目からの10連勝で一時は地区の首位争いに食い込んだ。しかし、シーズン後半で9連敗してしまい失速。最後までチャンピオンシップ争いに残ったが、進出は叶わなかった。

今季は、帰化選手として滋賀レイクスターズから#3ファイ・サンバ、NBAロサンゼルス・レイカーズでプレー経験がある#34ライアン・ケリー、日本でのリーグ参戦は6シーズン目となる#10マーカリ・サンダース・フリソンら海外出身の3選手が加入。一方で日本人選手は、菊池真人の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ移籍以外に入れ替わりは無かった。

アーリーカップ関東、蔚山モービスフィバス(韓国KBL、以下蔚山)とのプレシーズンマッチでは、自慢のディフェンスが機能せず、オフェンスも流れを作ることができなかった。リーグ開幕前の予行演習とはいえ不安を残す内容となった。勝久ジェフリーHCは「(機能するまで)時間はかかると思う。シーズン終盤に一番良い状態になってくれれば」と今後の展望を述べた。

そんな中、アーリーカップとプレシーズンマッチで昨季より大幅にプレイタイムを伸ばした選手がいる。

プロ2年目の#14杉浦佑成だ。勝久HCも「多くの経験を積んでほしい。成功しても失敗しても経験になってくれれば」と期待を寄せている。

サンロッカーズ渋谷

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飛躍できるか若きスコアラー

筑波大学時代はW杯アジア2次予選日本代表にも名を連ねたアルバルク東京の馬場雄大と2枚看板で、2016年シーズンには関東大学バスケットボール選手権、関東大学リーグ戦、全日本大学バスケットボール選手権大会の3冠を達成した。

スティールから身体能力を生かしたダンクが持ち味の馬場に対し、アウトサイドから3pシュートを着実に沈め、ポストプレーから得点を稼ぐこともできるのが杉浦だった。

3冠達成後、杉浦は特別指定選手としてSR渋谷へ入団する。ホームアリーナの青山学院記念館で初登場となった試合後に、SR渋谷の選手として初めてインタビューしたのが2017年1月22日だった。

ぎこちない雰囲気ながら「盛り上がりが違うからびびってしまった。役割も違うし、出るタイミングも違う。練習も短いし、チームとしての確認事項が中心だった」と戸惑いを隠せない様子だった。大学時代は常にスタート5で出場し、チームを牽引する側だったのだから当然だろう。

事実上ルーキーシーズンとなった2017-18シーズンは出場機会に恵まれず、途中出場から守備面で見せ場を作る場面もあったが、23試合に出場し2桁得点はわずか1試合に終わった。しかし、今シーズン初の公式戦となったアーリーカップ関東では、#9ベンドラメ礼生が日本代表に召集され欠場という追い風もあり、少しずつプレイタイムを獲得していった。

初戦の川崎ブレイブサンダース戦では、途中出場から18:40の出場の7得点だったが、最終日の千葉との3位決定戦ではスタート5に名を連ね、32:26の出場で12得点を稼いだ。試合を見る限り、積極果敢にリングに向かいミドルシュートを17本もトライ(3位決定戦ではチーム1位)。そこには最早戸惑うこともなく、得点に絡んでいく杉浦の姿があった。

「積極的に行けとチームメートからも言われている。コーチからもミスを恐れるなと言われている。ガンガンやって失敗するくらいの方が良いと思っている」と3位決定戦後にコメント。入団当時と比較しても、明らかに違う姿勢が見えた。

サンロッカーズ渋谷

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「伸びしろ」を実感、自己分析で自身の課題を克服へ

9月13日にSR渋谷はプレシーズンマッチとして蔚山と対戦し、58-81で敗戦。試合の出だしからターンオーバーが重なりスティールから得点されるシーンが数回あった。新加入選手と息があっていない場面も見られ、それが試合結果に表れた。

アーリーカップ3位決定戦同様にスタート5に名を連ねた杉浦は、出だしのコーナーから放った3pシュートをはじめ、12得点をあげて結果を残した。この試合でも積極的にリングに向かい、シュートを放つ姿勢が大いに見えた。

試合開始当初はケリーをPF(パワーフォワード、4番ポジション)で起用していたが、途中からSF(スモールフォワード、3番ポジション)に配置し、杉浦も「完全に初めてだった」というSG(シューティングガード、2番ポジション)に入る。2日前の練習試合でも同じようなことがあったそうで「(3番も含めて)ウイングと考えている。マッチアップする選手が違うことが大きい」と話している。勝久HCは「(杉浦を2番に入れることで)サイズが生まれる。コンビネーションはまだなので、引き続き細かい連携をしっかり練習する必要がある」としながらも、今後につながる手応えを感じたようだ。

杉浦は試合前に「トランディションでボールをもらったら積極的にアタックする」「蔚山の外国籍選手にやられないようにディフェンスを頑張る」ことをテーマとして掲げていた。試合後は「1回リングに向かえればチャンスがあることがわかった。しかし、ディフェンスではプレッシャーをかけられず逃げ腰になってしまった」と収穫と反省を示した。

自分のプレーに対しても自己分析ができているようで「できたこととできなかったことの差が激しい。できなかったことも分かっているので意識しやすい。今“伸びしろ”を感じている」とできない部分を克服できれば成長できると実感。「もう少し周りが見えたらよい。それからディフェンスができれば、自分がコーチなら使いやすい」とHC目線での課題もコメントした。

入団当初は、自分自身の現在地をつかめていなかった。しかし、プロ2年目の開幕を迎えるこの時期に、HC目線で自己分析できるまでに成長。これからは課題を克服して、自分自身の「伸びしろ」を実感できれば、攻守の要になるだけのポテンシャルはある。そうなればSR渋谷のジャンプアップにも貢献できるだろう。

サンロッカーズ渋谷

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