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危険予知が試合展開を動かした!A東京が2代目Bリーグ王者に輝く【B.LEAGUEファイナル】

アルバルク東京VS千葉ジェッツⒸマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

アルバルク東京が初の栄冠へ

5月26日、横浜アリーナでB.LEAGUEチャンピオンシップ2017-18ファイナル、アルバルク東京対千葉ジェッツが行われた。A東京が千葉を80-65で下し、Bリーグ2代目王者に輝いた。

【前半】千葉はターンオーバーが響き、A東京が主導権を握る

千葉は立ち上がり、ディフェンスリバウンドから#3パーカーが走って得点するも、その後のプレーではパスミスなどのターンオーバーもあって波に乗れない。一方、A東京も我慢が続く。両者互いに譲らないまま、A東京が1点リードで1Qを終了する。

両者一歩も譲らないままの2Qだったが、残り2:51で試合が動く。A東京のタイムアウトが明けに、#24田中のドライブに続き、#53カークの得点で3点リードする。
千葉は流れを止めようとタイムアウトを請求。しかし#8ライオンズがファンブルし、ボールがそのままラインを割りA東京に攻撃権を渡すことに。そしてA東京の#8馬場がドライブからシュートを成功させる。

次の攻撃時に千葉は、再びライオンズのパスミスで相手に攻撃権が奪われ、#3安藤による速攻からの得点でA東京は9点リードに。最後は#31ウイリアムズがハーフラインからロング3pシュートを決め、A東京が10点リードで前半を折り返した。

アルバルク東京VS千葉ジェッツ

Ⓒマンティー・チダ

【後半】立ち上がり猛攻を許すも、タイムアウトで修正をしたA東京がファイナルを制する

後半に入りA東京は、幸先よくピック&ロールから田中が得点し、続いてカークもリードを広げる。立ち上がり2回の攻撃機会に連続でシュートを打つことができない千葉は、ショットクロックバイオレーションに追い込まれる。

しかし、#2富樫が自らゴールに向かってレイアップを入れたあたりから追い上げ始め、セミファイナルの琉球戦からアウトサイドシュートが入っていなかった#34小野が待望の3pシュートを成功させる。結果8点ビハインドとなり、このタイミングでA東京はタイムアウトを請求。

タイムアウト後、A東京は#10バランスキーの3pシュートで流れを変えることに成功。そして一進一退の攻防が続き中盤を迎える。
ドライブからダンクを狙ったA東京の馬場は、千葉のエドワーズのブロックショットに阻まれ、更にやり返す。しかし、エドワーズに得点された後、馬場はテクニカルファウルをコールされ、千葉にフリースローと攻撃権を渡すことに。

この好機を生かしたい千葉だったが、フリースローシューターの富樫は1本しか決められず、その後の攻撃でもオフェンスリバウンドで粘ったが得点とならず。カークのジャンプショット、#1小島の3pシュートで何とかペースを取り戻したA東京は、小島がスティールからレイアップを入れ、11点リードに。
千葉は残り1:49にタイムアウトを請求。試合終盤に#21レーンが叩きこんだダンクで、A東京が12点リードで最終Qに向かう。

幸先良く馬場の3pシュートでスタートした4Qだったが、その後は両チームとも得点をあげられず膠着状態となる。ところが今度は空いた隙を狙い馬場がダブルクラッチを成功させ、これによって17点リードとなった。すると、千葉がたまらず残り6:48に後半2回目となるタイムアウトを請求。

ここで西村を下げ、富樫をコートに戻すことで現状打破を狙う千葉。しかし、カークと田中に得点を許してしまい、A東京が19点リードでオフィシャルタイムアウトとなる。最後まで足を使い、しっかりプレーし続けたA東京が85-60で千葉を下し、2代目Bリーグチャンピオンに輝いた。

CHAMPIONSHIP MVPはA東京の田中が選出された。

アルバルク東京VS千葉ジェッツ

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危険予知を察知しタイムアウトを請求したA東京・パヴィチェヴィッチHC

A東京はレギュラーシーズン同様に、ピック&ロールを主体に攻撃を組立てた。そして、ファイナルの舞台では、それがより機能を上げる結果となった。
MVPを獲得した田中は「千葉のディフェンスに関するスカウティングが完璧だった。試合によって選手の動きが違う事も指示があり、試合中は選手同士で共通認識を持ちながらプレーすることができた」と勝因をあげた。

試合の流れとしては、2Qの終盤でA東京の1点ビハインドから田中の得点をきっかけにリードを広げた。千葉のターンオーバーにも助けられた面もあった。そして、3Q残り6:33にA東京・パヴィチェヴィッチHCがタイムアウトを請求した場面もターニングポイントだと考えられる。

千葉・小野に3pシュートを沈められた場面直前に、A東京・パヴィチェヴィッチHCがタイムアウトを請求する。琉球戦では3pシュートが1本も決まらなかった小野だが、天皇杯では小野の連続3pシュートを切掛に、チームが波に乗り優勝を決めた。

タイムアウトを請求した理由を「3Qの中盤まで我々らしく守備ができていたけど、その中でオフェンスリバウンドを何回か相手に取られていたので、点差が縮まっていく予感がした。特に富樫からの速攻で走られるというのが一番危険な場面なので、流れを止めるという意図もあった」とし、「ディフェンスリバウンドを確保し、それから攻撃においてしっかり走ることをタイムアウトでは実行した」と指示した内容を明かした。

パヴィチェヴィッチHCは、レギュラーシーズンから「うちはディフェンスのチームだ」と公言していた。基本に返り、相手チームのスカウティングを踏まえながら状況判断をする。大舞台で危険予知をやり切った指揮官の手腕が、チャンピオンの座を手繰り寄せたと言っても過言ではないだろう。

アルバルク東京VS千葉ジェッツ

Ⓒマンティー・チダ

イージーなターンオーバーに泣いた千葉

スコア面では、2Qの終盤までA東京と互角に戦った千葉。プロセスは良かったものの、精度が悪すぎたフィニッシュ。その影響なのかパスの精度も悪くなり、流れを悪くする結果につながった。

選手に話を聞くと様々な反応。途中からコートに立った石井は、少しやり切った表情を浮かべながら「自分たちの力不足ですね。それ以上でもそれ以下でもない」と淡々と話し始めた。
「半歩ずらされた感じで、試合が進むにつれてそれがパスミスにつながってしまった」と敗因を述べ、「ファイナルの雰囲気は本当に楽しかったし、欲を言えばもっと試合をしたいですね。強い相手と何試合も戦ってファイナルをするのが一番良い。楽しい舞台でもっとプレーしたい」と希望も込めた。

途中出場の原は「一言でいうと、すごく悔しかったです」と噛みしめ、「ディフェンスマインドで入った。もっとA東京のオフェンスは止められたのかな」とコートに入ったときの心境を明かした。

大野HCは「ターンオーバーが多くて、自分たちのリズムに乗れそうなときに自分たちで首を絞めてしまった。ディフェンスからファストブレイクに持ち込めなかったのが敗因」と分析し、「今日は負けたけど天皇杯も優勝しリーグは東地区を制覇し、チャンピオンシップはファイナルまで進んだ。いずれも決勝まで勝ち進んだので」と満足感も漂わせた。

大野HCは、常に「成長」という言葉を使いながらコメントしていた。シーズンを通して「タフになれたし、苦しい時でも一つになって乗り切れた」と手応えを口にした。

ファイナルの前、チームの公開練習でも「いつも通りに自分たちのバスケをするだけ」と発言していた大野HC。勝負には勝ち負けがあるので仕方がない部分もあるが、今後もさらに「成長した」千葉ジェッツを私たちに見せてくれることを期待したい。

アルバルク東京VS千葉ジェッツ

Ⓒマンティー・チダ