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全体売上150億円・Bリーグ決算概要の内容は?

2017 12/4 10:57mono
大河正明チェアマン
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出典:Bリーグ広報部

全体売上は約150億円

1シーズン目を終え、2シーズン目が無事に開幕したBリーグ。毎週のように全国各地で熱戦が繰り広げられている。栃木ブレックスが連覇を果たすのか、日本代表選手はどのようなパフォーマンスを見せるのか、などファンの関心は様々だろう。
また、チームを運営する上で大事なのは戦力面だけではない。企業として運営がなされているかも重要になってくる。気になる各チームの決算概要が11月29日に発表された。壇上に上がったのは大河正明チェアマンだ。

Bリーグより発表されている決算報告はこちら

B1、B2あわせた計36チームの合計売上高は、約150億円。B1の平均が約6億4000万円、B2の平均が約1億9000万円となり、全体での最終損益は800万円の黒字となっている。
ただし、チームによって決算期のズレがあり、正確な1年間の収支とは異なる。また、アルバルク東京、川崎ブレイブサンダース、シーホース三河、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、Fイーグルス名古屋は、NBL時代の収入・支出が一部含まれていないなどのブレもある。

2年目のシーズンからは各チームともに決算期のズレはあるものの、1年分の収支が反映されることになり、より正確な数値が公表されるだろう。そういった部分を差し引いても1年目の決算としては良好。大河チェアマンも「健全な形でスタートできた」と評価した。

債務超過はB1で3チーム

全体収支ではプラスとなったが、個別でみると赤字決算で終えているチームもある。B1ではA東京(約5400万円)、新潟アルビレックス(約4200万円)の2チームが赤字に終わった。
また債務超過はレバンガ北海道(約2300万円)、新潟(約6500万円)、滋賀レイクスターズ(約1300万円)の3チームだ。

大河チェアマンによると、A東京の赤字は事務所開設費などによる一過性のものであり、バスケットボールに関していうと黒字を達成。9月に行われた中間決算ではすでに黒字と2年目は順調のようだ。また、新潟はスポンサー料の計上時期が変更となったための赤字となった。

北海道に関しては債務超過だったものの、前身チーム時代から初めて単年度で黒字決算。入場料収入も伸びており、過去から引き継いでいる負の遺産をどのように処理していくかが今後の課題となりそうだ。
次回決算時(2018年6月)に債務超過を解消していないと、B1ライセンスが交付されない可能性もある。新潟は赤字かつ債務超過となったが、決算発表当日時点では増資などで債務超過をすでに解消済み。滋賀は監査方法の違いから生まれたものと報告されている。

B1はなんとか見通しが立っているものの、B2はそうではない。債務超過のチームが11チームありB1との差は大きい。「B2でもB1を脅かすほどの収入規模があるチームが生まれてくるとリーグ全体の活性化に繋がってくる」と大河チェアマンは語っており、経営体制の強化が、より求められていくことになりそうだ。

補足として大河チェアマンは、栃木・千葉を除いたなかで集客が好調な、人気クラブである秋田ノーザンハピネッツと、琉球ゴールデンキングスに共通する部分を述べた。それは両チームに純資産が約1億5000万円あることだ。この内部留保はbjリーグ時代のサラリーキャップが影響している。
ルール上の制限があり資金があるものの、選手に投下できなかったのだ。この蓄えがあったからこそ、琉球は補強を行い、秋田はB2降格となったが選手の流出がほとんどなく、新しいシーズンを迎えることができたのである。

収入は大阪・栃木の2チームが10億円超え

収入のトップは、王者である栃木ブレックスではなくエヴェッサ大阪だった。大阪は入場料収入・約1億1000万円ととりたてて大きくなかった。
しかし、スポンサー料は約7億1000万円と全体トップ。母体であるヒューマンホールディングスという大きなアドバンテージがあるのは事実だが、大口・小口含めてスポンサー企業を400社集めており、その営業努力が売上トップとなった要因のひとつだといえるだろう。
初代王者となった栃木は、入場料収入が千葉ジェッツ(約2億8000万円)に次いで2位となる約2億7000万円。物販収入が唯一の1億円超となっている。

この2チームに続くのが川崎(約9億5000万円)、千葉(約9億3000万円)だ。とくに千葉ジェッツの選手ひとりあたりの入場者数(約1万1000人)は、すでにJリーグ(J1)の平均値(約1万人)をクリアしている。
さらに栃木(約7700人)、琉球(約7600人)といったチームは使用しているアリーナのキャパがあり、頭打ちの状態だが、キャパが大きくなれば入場者数も伸びて千葉に追いついてくるだろう。

『選手ひとりがどれだけのファンを呼ぶことができるのか』ということは、選手の価値に繋がってくる。ファンが増え売上が増えると源泉が増える。同時に選手自身の価値も上がり年俸も上がる。このように選手の価値はファンが支えている、という図式を改めて理解することが、売上拡大への近道かもしれない。

また現在、入場料収入をもっとも上げることに成功した千葉ジェッツの島田慎二代表が、『島田塾』と称しB2の各チームへ経営の勘どころ、社内ガバナンスなどを教えている。これによりB2の各チームの経営体制が整ってくれば、前章で述べたとおり、リーグは活性化するだろう。

エヴェッサ大阪の売上モデル

B1各チームの売り上げ構成比を見ると入場料収入が約22%、スポンサー収入が約54%とこのふたつで約76%を占めている。各チーム数字のバラツキはあるものの、概ねスポンサー収入、入場料収入が売り上げの1位、2位となった。
そのなかで唯一、エヴェッサ大阪が入場料収入より多くの収入をあげている部門がある。

それはその他に含まれるアリーナの賃借料だ。とはいうものの、大阪は自前でアリーナを構えているわけではない。ホームアリーナである府民共済SUPERアリーナを大阪が大阪市から賃借し、試合がない日などに貸し出しを行い、収入を上げているのだ。
資料でその額は明らかにならないが、営業収入でその他に計上されている3億1000万円の半分以上にはのぼる、と大河チェアマンは語っている。スポンサー収入だけでなくこちらも収入トップとなった要因のひとつと言えそうだ。

現在、プロ野球ではソフトバンクがヤフオクドームを所有。また、DeNAが横浜スタジアムを子会社化するなど、多くの球団がスタジアムを自前運営に切り替えている。す
ぐに切り替えができるものではないが、Bリーグでも同様の動きが広まると収入は飛躍的に伸びるだろう。貸し出しのみで、大阪がこれだけの収入をあげていることからも、この先検討の余地はありそうだ。

今後、日本にバスケットボールを根付かせるためには、Bリーグの活性化が必要不可欠だ。もちろん、人気・実力は重要だが、プロリーグを運営するにはそれだけでは足りない。財務面をはじめとした運営母体の経営体制が整っていなければならないのだ。
産声をあげたばかりのリーグではあるが、大河チェアマンを中心にガバナンス体制の強化をすることで、地域や日本にBリーグ、ひいてはバスケットボールが根付いていくことを期待したい。
同時に、大河チェアマンが掲げる2020年東京オリンピックの年に開幕する2020年—2021年シーズンで観客300万人、売上300億円到達に繋がっていくだろう。