「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

「日本一丸」でバスケワールドカップ進出! 日本を救った太田敦也のプレー

太田敦也,Ⓒマンティー・チダ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒマンティー・チダ

WINDOW6、アウェイの地でイラン・カタールを撃破

日本代表はWINDOW6でも連勝を飾り、グループ2位で本戦出場を果たした。アウェイの地で連勝することができたのは非常に大きなことで、何かとアウェイに弱かっただけに大きな自信になっただろう。

本戦出場を果たした要因はたくさんある。

4連敗で迎えたWINDOW3。ここから、ファジーカス・ニックと八村塁が合流しグループ最大の強敵オーストラリアを破った。さらにWINDOW4では渡邊雄太が代表に加わり、強豪のイランをも下した。WINDOW5は、渡邊・八村が不在だったが、カザフスタンとカタールから勝利した。

そして、WINDOW6は2戦とも中東(イラン・カタール)で行われた。オーストラリアにしても、イランにしてもいずれもホームの日本で勝利した。だからこそ、アウェイでもしっかり勝利できるかが大事だった。

WINDOW6でもも渡邊・八村は不在だった。ガード陣は富樫勇樹や比江島慎を中心にシュート力や走力を兼ね備えた選手たちが揃った。インサイドに目を向けると、ファジーカスがケガも癒えて万全な状態で試合を迎えられそうではあったものの、問題は「ファジーカスがいない時間帯」をどう乗り切るかであった。

イラン戦は出だしからファジーカス、比江島のシュートタッチが良くてハイスコアゲームとなったが、一方でイランにオフェンスリバウンドを取られて攻撃回数を増やされる状況でもあった。そんな中、このピンチを救ったのが、ベテランのセンタープレイヤーの太田敦也だった。

献身的なプレーでチームのピンチを救った太田敦也

イラン戦で#8太田敦也は1Q途中、#15竹内譲次に代わってコートに入った。日本は、出だしから#6比江島慎、#22ファジーカス・ニックのシュートタッチが良く、順調に得点を重ねていた。一方で、守備では立ち上がりからゾーンディフェンスを敷いていたが、イランにオフェンスリバウンドを許し、相手の攻撃回数を増やしていた。しかし、イランはセカンドチャンスをものにできず、しばらくは得点をあげられずにいた。残り5分50秒、ついにイランの得点源#13Mohammad Jamshidiに3pとドライブを許し、2点差まで詰められる。ここで太田はコートに送り込まれた。

太田はボールを持つシーンがあまりなかった。しかし、スクリーンをかけて相手選手の動きを止め、ゴール下では懸命に体を入れて、味方の選手にボールが渡るようなプレーを続けていた。太田が見せた献身的な動きから、#24田中大貴が速攻からバスケットカウントを決めて攻撃のペースを取り戻し、比江島やファジーカスも続いた。交代でコートに入った#3辻直人も挨拶代わりの3pを沈めると、キャプテン#7篠山竜青もフローターからバスケットカウントを成立させ7点リードとし、日本は良い形で1Qを終えた。

2Qに入っても、ゴール下で粘りを発揮した太田が得点をするなど、日本の攻撃リズムは良い状態をキープ。イランのオフェンスリバウンドが続く時間もあったが、ここまで築いてきた攻撃のリズムを崩すことなく、10点リードで前半を終える。太田は2Qではフル出場だった。

3Qでは、残り4秒のところでファジーカスに代わってコートに戻った太田が、竹内譲次とゴール下を守る。

そして4Q。残り6分59秒まで出場した太田はしっかり役目を果たす他、ファジーカスを休ませることに成功。これまではファジーカスがインサイドにいなければ、不安が生じていたが、太田の活躍でそれが払拭できた瞬間だった。出場時間18分56秒、2得点1リバウンド2アシストと数字上は目立つ成績ではないが、数字には出ない献身的なプレーで太田はチームを救ったのだ。

太田敦也のプレーに触発された「竹内ツインズ」

太田の活躍で竹内譲次の動きも変わった。イラン戦では、前半早々にファウルをコールされ、ベンチに下がるものの、後半出だしから再出場。リバウンドから一気にゴールに向かって走っていき、ドライブやファストブレイクで得点した。4Qに入ると、コーナーから3pを沈めるなど、リードを広げる活躍をみせた。

竹内譲次はカタール戦でもよく走っていた。カタール戦はイラン戦と違い、得点が動かない立ち上がりになった。少し重たい展開となっていたが、それを打ち破ったのは、竹内譲次の走りだった。田中が守備でスティールを決めた後、竹内譲次はバックコートから田中の後ろを追いかけるように走っていき、田中のパスを受けてファストブレイクダンクを炸裂させている。シーズン中でもあまり見かけないシーンで、竹内譲次の気持ちが伝わってくる瞬間だった。その後の攻撃でも、フェイクからゴールにアタック。シュートは決まらなかったものの、フリースローを獲得した。ベテランが走ったことで、#18馬場雄大がリングに向かって一目散に走っていくなど、チームで走る意識が高まっていくのが見えてくる。

こうして竹内譲次がもたらした流れは、2Qに展開した“3pショー”に繋がっていく。#2富樫勇樹のキラーパスから辻が3pを沈めると、今度は辻から富樫にわたり3pを決めた。日本はこのQだけで3pを7本(辻3本、富樫3本、比江島1本)沈め、カタールを大きくリードした。後半に入っても、シュートタッチの良さは続き、最終的には96-48とカタールをダブルスコアで下した。

もう一人忘れてはいけない選手がいる。竹内譲次の双子の兄、#10竹内公輔だ。これまでなかなか出番に恵まれなかったが、カタール戦の3Qで出場機会がやってきた。太田が相手オフェンスプレイヤーに対して、ぎりぎりまで体を密着させシュートをさせまいとしたが、顔面に相手の肘が入り、コートにうずくまってしまう。ここであえなくベンチに下がったのだが、その代わりに竹内公輔がコートへ入っていった。

見せ場は4Qの出だしだった。ゴールにアタックしてレイアップを沈めると、その後もう一本シュートを決める。そして、ファジーカスのバックビハインドパスからシュートを決めるなど、2次予選初出場とは思えない活躍で、しっかり役目を果たした。

太田と「竹内ツインズ」は同世代だ。イラン戦で魅せた献身的なプレーでチームのピンチを救った太田に刺激を受けて、「竹内ツインズ」は中東の地で躍動。WINDOW3からファジーカスが代表に名を連ねるようになったが、それまでは3人が日本のゴール下を支えてきた。

「日本はリバウンドが取れない」とこれまでずっと言われ続けた。しかし、WINDOW3のオーストラリア戦に勝利したことで、チーム内の流れが変わっていった。ファジーカスがセンターに入るときは、パワーフォワードに入る。もちろんリバウンド争いに絡まないといけないが、これまでのように背負う必要はない。むしろ、リバウンドから如何に走れるかだろう。竹内譲次はリバウンドから走ることで活路を見出し、太田は泥臭さに徹して、チームを手助けした。竹内公輔も短い時間ながらアピールに成功した。

WINDOW6の日本は、攻撃面ではリングに向かってアタックを続け、フリーになれば3pを放ち高い成功率で決めた。守備面では、オフェンスリバウンドに苦しんだ部分はあったが、特にカタール戦では、攻撃が終わるとすぐにバックコートに戻るなど、足が動いていた。うまくいくときもあれば、うまくいかない時間帯もある。今回の太田が魅せた献身的な姿は、大田でないとできないプレーであり、ピンチの時には必ず求められるプレーだ。だからこそ、太田の泥臭さをもっと評価しないといけない。数字に表れないプレーを続けるのは、プレイヤーとして厳しい部分もあるが、太田はその部分を自分の役目として担っている。