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バスケ日本男子、幾多のトラブル乗り越え連勝 強さの要因はペイントアタック

2018 12/6 11:00SPAIA編集部
馬場雄大,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

思いがけないトラブルで苦境に立たされたチーム

11月30日、12月3日に富山市総合体育館で行われたワールドカップ アジア2次予選Window5。1次予選で4連敗という崖っぷちから#12渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)、#22ニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)、#23八村塁(ゴンザガ大)の加入で4連勝中の男子日本代表がこの2戦も連勝を懸けて試合に臨んだ。

アジア地区からワールドカップ出場権が与えられるのは、グループE、Fの上位3チームと両グループの4位のうち勝敗が多いチームの計7チーム。グループF4位(試合前)の日本代表にとって負けられない戦いとなった。

しかし渡邊、八村が所属チームの日程の関係で欠場し、9月のWindow4をケガのため不出場だったファジーカスが復帰したものの約半年ぶりの代表戦。さらには今夏のアジア競技大会やリーグ戦で好調を維持し、第3のPGとして初のA代表入りが目されていたベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)がケガで戦線離脱。メンバー構成には若干の不安を残し試合に臨んでいた。

懸念した通り、試合でも苦難は続いた。

30日のカタール戦、2Qの途中で#2富樫勇樹(千葉ジェッツ)がシュートの着地時に相手の足に乗り、足首を痛めて途中退場。さらにはもう一人の司令塔#7篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)が3Qでファウルトラブルでベンチに下がり正PGが不在に。

3日のカザフスタン戦も、終盤に#15竹内譲次(アルバルク東京)、#88張本天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)が5ファウル退場で今度は正PFがいない状況に陥ってしまった。

ペイントアタックで活路を見いだす

先にアクシデントばかりを紹介したが、周知の通り日本は2連勝を飾った(カタール戦:85−47 カザフスタン戦:86−70)。

カタール戦の序盤は相手のゾーンディフェンスを攻略できず苦しいオフェンスになったが、後半、流れが変わったのは篠山がベンチに下がってからだった。

ここで急きょPGとなった#24田中大貴(アルバルク東京)は「ボールをプッシュすることを意識した」と、日本の持ち味であるファストブレイクを演出。さらには前半活躍を許したカタールの得点源を田中がシャットアウトする活躍で、一気に突き放した。

またカザフスタン戦もファジーカスで加点しつつ、終盤点差を開いたのはPFが不在になってから。ここでも#18馬場雄大(アルバルク東京)が4番を務めるラインナップながら、速さを生かした攻撃で点差を離したのだった。

両試合はもちろん、この6連勝中に共通して言える特徴はペイント内の得点の多さだ。

これはこれまでの日本の大きな課題で、4連敗時のペイントエリア内の得点は24、14、26、32と全試合で相手より低い数字に。

結局勝負どころで確率の低い外角シュート頼みになってしまい、それが接戦を落とす原因だった。

ただ6連勝中は44、52、42、28、40、56と飛躍的にアップ。当然ながらフィールドゴール%も確率が改善されている。

上背があってリングに近い位置でプレーできる渡邊、ファジーカス、八村の加入は大きいが、馬場や田中、竹内譲次が果敢にペイント内にアタック。以前よりもイージーなシュートが増えたため、フリースロー試投は1試合平均22.75(4連敗時)から20.7本に減少したが、確率は68.38%から76.55%にアップ。これまで以上に確実性のあるバスケットが展開できるようになった。

またここに来て、選手たちが自信を付けてきたのも大きなプラス。やはりオーストラリアに79−78で勝利したことが大きく、PGやPFが不在という思いがけないトラブルに陥っても逆に点差を離せたのは、選手のアジャスト力が上がっている証拠だ。

1年近く結果が出なかったフリオ・ラマスヘッドコーチが掲げるバスケットも浸透し、人とボールがよく動くようにもなり、目指すバスケットがより明確になった。

東京オリンピックへ追い風

6連勝という驚異の巻き返しで、波に乗る男子日本代表。この連勝はワールドカップ出場だけではなく、2020年の東京オリンピックにも追い風になっている。

基本的に自動的な開催国枠を設けていないバスケット競技だが、早ければ12月8日のFIBAのセントラルボードで開催国・日本の出場可否が決定する。

当初はその選定も厳しくなると予想されていたが、ワールドカップ予選の好成績に加えて渡邊が日本人2人目のNBA選手になり、来年のNBAドラフトでは八村の上位指名が期待されている。

こうした背景もあり、日本のオリンピック出場は前進していると言っていいだろう。 この決定が、2019年2月のワールドカップ予選Windows6に向けたモチベーションになることを期待したい。