「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

3人制女子バスケ「有明と立川の激しいマッチアップ 元チームメイト同士が魅せたその舞台裏」

3人制バスケ,女子バスケ,東京ダイム,セカイエ,有明葵衣,立川真紗美
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒマンティー・チダ

3x3.EXE PREMIER WOMANはまだまだ大混戦

3人制女子バスケ「3x3.EXE PREMIER WOMAN」はROUND3まで終了した。あと1ラウンドを残した状況で、首位のTOKYO DIME.EXEから5位のBEEFMAN.EXEまで、プレミアポイント(成績に応じて付与される)が2ポイント差の大混戦となっている。上位2チームには、女子初のクラブチーム世界一決定戦「3x3.EXE PREMIER World Games」出場権が与えられるため、壮絶な戦いが予想される。5位のBEEFMAN.EXEまでチャンスがあり、最終順位が全く予想できない状況だ。

ROUND4のグループ分けは以下の通り。()内はROUND3までの順位とプレミアポイント。各グループ1位はプレミアポイント2ポイント、2位は1ポイントが与えられる。

【Aグループ】
TACHIKAWA DICE.EXE(2位、4ポイント)
SEKAIE.EXE(4位、3ポイント)
SANKAK.EXE(6位、0ポイント)

【Bグループ】
TOKYO DIME.EXE(1位、5ポイント)
SUNS.EXE(3位、3ポイント)
BEEFMAN.EXE(5位、3ポイント)

順位決定は下記の順位決定方法に準ずる。
1.勝利数が多いチームが上位
2.上記の項目も同数の場合、総得点が多いチームが上位
3.上記までの項目も同点の場合、総失点の少ないチームが上位
4.上記までの項目も同点の場合、チームファール数の少ないチームが上位
5.上記までの項目も同点の場合、予選リーグ敗退数の少ないチームが上位
6.上記までの項目も同点の場合、準決勝敗退数の少ないチームが上位
7.上記までの項目も同点の場合、優勝回数の多いチームが上位

そんな大混戦の中、ROUND3も各カード激しい試合となり、19日大森ベルポートで対戦したTOKYO DIME.EXEとSEKAIE.EXEの戦いは観客も飲み込まれるほどだった。その中でも、特に壮絶だったマッチアップがある。

#21有明葵衣(TOKYO DIME.EXE)と#0立川真紗美(SEKAIE.EXE)のマッチアップだ。

3人制バスケ,女子バスケ,東京ダイム,ラウンド3優勝

有明葵衣(TOKYO DIME.EXE)と立川真紗美(SEKAIE.EXE)が激しいマッチアップ

ROUND3の会場であった大森ベルポートは商業施設であり、大会に合わせてゴールとスポーツコートを敷いている。体育館のように木目ではないため、転倒した時の衝撃はスポーツコートの方が大きい。それにも構わず、二人のマッチアップは時間が経てば経つほど激しくなり、接触して転倒するシーンもあった。有明は転倒の際に擦り傷で出血した。

二人の激しいマッチアップは、試合を一層盛り上げることになった。最初に顔を合わせたのは予選ラウンド。立川の得点などでリードしたSEKAIEだったが、TOKYO DIMEは終盤逆転に成功する。しかし、立川の2pシュートで最後同点まで持ち込み、決着がつかず延長戦に突入。延長戦に入って、TOKYO DIMEは有明の2pシュートで勝利を飾った。(延長戦は先に2点を得点したチームが勝利)

決勝戦は上位2チームだが、SUNS.EXEも含め3チームが1勝1敗で並び、順位決定方法に準じた結果、TOKYO DIMEとSEKAIEが再び決勝戦で戦うことになった。

決勝戦でも有明と立川は激しいマッチアップを繰り広げた。試合中盤まで互角に戦う両チーム、残り6分を過ぎてTOKYO DIMEは有明のバスケットカウントで2得点をし、さらに相手のファウルから獲得したフリースローを着実に沈めてリードを広げる。残り3分23秒、SEKAIEがタイムアウトを請求すると、今度は立川が連続得点しチームに流れを呼ぶ。試合終盤も立川が果敢に得点を狙うが、逆転まではできなかった。結局、TOKYO DIMEがSEKAIEを16-12で下し、ROUND2に続いて優勝を果たした。これにより、TOKYO DIMEはプレミアポイント2を獲得して首位に立った。

そんな激しいマッチアップを繰り広げた有明と立川。どのような想いで試合をしていたのか気になってインタビューしてみると、ある事実がわかった。二人とも2009年に揃ってWリーグ富士通に入団し、練習で激しくマッチアップをしていた。その後、立川は2014年、有明は2015年にチームを退団していた。

3人制バスケ,女子バスケ,有明葵衣,立川真紗美

「立川さんには胸を借りるつもりで挑んだ」TOKYO DIME・有明葵衣

ROUND3でMVPを獲得した有明は「優勝したけれど、次どうするのか気持ちが落ち着かない」と開口一番コメントをしてくれた。混戦模様のリーグ戦については「拮抗している展開は楽しいですね。各チームどんどん強くなっている。勝つために気持ちを必死に出している。とにかくケガをしてでも勝ちたい」と勝利に対する貪欲さを語った。

2試合通じて激しいマッチアップを繰り広げた立川については「富士通の頃から、ああいうやり合いをしてレベルアップさせていただいた。胸を借りるつもりで挑んだ」と話し始めた。

「お互いに手の内はわかっていても、駆け引きはある。その瞬間の勝負、目の前の事で必死だった」とコート内の激しさはインタビューからも伝わってきた。

「予選ラウンドの延長戦の前に4点リードしていて、立川さんのシュートで追いつかれたのは私の守備が原因だったので、その責任は果たさないといけなかった。延長戦の2pシュートは練習通りのパスが来たので、何も考えずに打つことができた。決勝は予選ラウンドで狙われたところを、選手全員で役割を果たすことができた。試合を通じて成長ができた瞬間だった」と振り返った。

有明からは「勝ちたい」という想いが伝わってきた。「岡田(優介)オーナーが京都で活動する中、夜に電話ミーティングをしてくれるなど素晴らしい環境の中で、結果としても残したかった」とチームにも感謝した。

ROUND2に続き優勝を決めたTOKYO DIMEは全体で首位に立った。「勝利した後に勝ちを忘れて切り替え、次の相手にどう集中するか」富士通時代のチームメイトと激しくマッチアップした有明の熱い想いと共に、チームとしてさらに成長した姿を見せたいところだ。

3人制バスケ,女子バスケ,有明葵衣,東京ダイム

「有明とのマッチアップは素直に楽しかった」SEKAIE・立川真紗美

有明とは富士通時代以来のマッチアップとなった立川。「久しぶりだね」と言葉を交わして試合に臨んだ。

「3連勝して優勝するのがチームの目標だった。調子どうこうではなく、勝ち気しかなかった。気持ちをコントロールできるようにしないと勝利に繋がらない。どんなにテンションを高くして勝ち気を持っていても、勝てなければ意味がない」とこの日の戦いぶりを振り返る。

有明とのマッチアップについて伺うと笑顔を見せながら「素直に楽しかった」と繰り返した。「お互いに勝つために、相手との勝負を楽しんでいた。見ている方は引くかもしれないが、有明とは富士通に同期で入社して、練習からああいう感じだった」と明るく話す。

「純粋に勝つために、自分の全てを使って取りに行く。富士通時代は共に悔しい想い、嬉しい想いもした。今ある環境で出来る限りのバスケットができた」と続けた。

前回のラウンドから2週間空いたことで取り組んだことを伺うと、表情は厳しくなり「ルーマニア(8月11日・12日に開催した3x3 Bucharest Women Masters)に行かないからこそできることをやろうと考えていた。ROUND2までSUNSに勝てなかったので、SUNSに勝利できたのは大きな収穫。しかし、DIMEにはここまで勝ってきたが、今回2試合とも勝てなかった。最後はDIMEがSEKAIEに勝ちたいという気持ちが強かった」と悔しさをかみしめていた。

しかし、SEKAIEも総合優勝のチャンスは残っている。立川は「他力ではなく自力で取りたい。この1週間、選手間でコミュニケーションをとって、しっかり準備したい」と意気込みを語った。視線の先はすでにROUND4に向いている。

コート内では激しくマッチアップした有明と立川。しかし、コートを離れれば、良き仲間でもあった。「素直に楽しかった」と立川が発言した言葉が全てを物語っている。富士通時代からの良きライバルがコートで戦った時間は、非常に心が動いたし「これぞスポーツの醍醐味」と感じた瞬間だった。ぜひ二人にはこの想いをどこかで伝えてほしい。

3人制バスケ,女子バスケ,立川真紗美,サカイエ