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今年は「3強+1」がキーワード【関東大学女子バスケ】

関東女子バスケ
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Ⓒマンティー・チダ

女子バスケは男子より世界に近い

日本のバスケットボールにおいて、世界で実績を残しているのは女子であることをご存じだろうか?2016年に男子プロバスケットボールリーグBリーグが開幕し、国内リーグ戦においては男子の露出が多い。しかし男子はモントリオール五輪以来本戦出場がないのとは対照的に、女子はリオデジャネイロ五輪でベスト8まで進出している。

女子日本代表はアジア地区予選で開催国の中国と死闘の末に勝利し、アテネ五輪以来3大会ぶりの五輪出場権を獲得すると、本戦ではグループリーグで当時世界ランク7位のフランスを撃破するなどアトランタ五輪以来20年ぶりの決勝トーナメント進出を果たした。準々決勝でアメリカに敗れはしたが、途中点差を詰めるなど、世界を驚かせた瞬間もあった。五輪から1年後の2017年に開催された第29回ユニバーシアード競技大会では、Wリーグの若手と大学生を中心に構成されたチームで50年ぶりの銀メダルを獲得した。

リオデジャネイロ五輪に出場した12人は全員Wリーグ選手。しかし、出身別で考えると大学出身はそのうち3名(白鴎1人、大阪人間科学2人)。ユニバーシアード競技大会は、出場資格の中に大学・大学院に在学中若しくは卒業というルールがあるので、五輪と単純比較できないところもあるが、出場した12人中6人が大学生(関東5人、中部1人)。Wリーグの選手(大学出身)も含めると、関東11人、中部1人という内訳になる。

女子の場合、有望な選手が高校卒業後競技を続けるには、大学進学よりもWリーグに進むケースが多いのが現実である。

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関東大学女子バスケは昨年までの4年間「3強」を中心に優勝争いを繰り広げる

関東大学女子バスケは、ここ数年、早稲田大学、白鴎大学、東京医療保健大学の「3強」が春の選手権大会、秋のリーグ戦では主役を演じている。2014年に東京医療保健大学が1部に昇格以降は、2014年の春の選手権以外は、この「3強」から春の選手権大会、秋のリーグ戦の優勝が決まっている。

昨年の秋のリーグ戦では、ユニバーシアード大会直後ということもあり、各チーム調整に苦しんだ。実際、銀メダルを獲得してから帰国後の週末にはリーグ戦が開幕するという過酷な日程となっていた。その影響をもろに受けてしまったのが、白鴎大学だった。白鴎大学・佐藤智信監督は、ユニバーシアードのヘッドコーチも務めた。白鴎大学のチーム強化が必要な時期に、日の丸を背負って世界と戦っていた。リーグ戦は開幕5戦で3勝2敗。しかし、終盤に向かって調子を上げて3位でリーグ戦を終えると、全日本大学バスケットボール選手権大会でも3位に食い込んだ。

リーグ戦の優勝争いは「3強」のうちの2大学、早稲田大学と東京医療保健大学によって争われた。ともに11勝3敗で終えたが、当該対戦試合の得失点差で東京医療保健大学がリーグ戦初優勝を決めた。全日本大学バスケットボール選手権大会でもリーグ戦初優勝の勢いそのままに決勝まで勝ち進むと、拓殖大学を96-72で下し初優勝を飾った。

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今年は「3強プラス1」の様相?筑波大学が春の選手権を制覇

先日、春の選手権、第52回関東大学女子バスケットボール選手権大会が行われ、4チームで行われた決勝リーグでは3チームが2勝1敗で並ぶ接戦となり、決勝リーグゴールアベレージによって、筑波大学が11年ぶり13度目の優勝を飾った。

筑波大学が優勝するまでの過程を考えれば、価値ある優勝だとわかってもらえるだろう。昨年秋のリーグ戦を制した東京医療保健大学と同じブロックに入り、準々決勝で両者は顔を合わせた。そして62-56で勝利し、決勝リーグに駒を進める。決勝リーグに勝ち残ったのは「3強」の一角、早稲田大学と白鴎大学、そして山梨学院大学に筑波大学だった。初戦で山梨学院大学に71-58で勝利した後、2日目は白鴎大学との一戦。序盤から10点を追いかける苦しい展開となったが、2Q以降持ち直し4Q終了時点で同点に追いつき、オーバータイム(延長戦)まで持ち込んだ。最後は白鴎大学に77-85で敗れはしたものの、価値ある1敗となった。そして最終日には早稲田大学と顔を合わせて65-48で勝利し、優勝を手にした。

筑波大学は2015年に全日本大学バスケットボール選手権大会を男子とアベック優勝を達成以来、関東でも上位に顔を出すことができていなかった。今年のチームは2015年の優勝メンバーでもあるポイントガード#16高辻真子、2年生ながらチームの得点源に成長した#45佐藤由璃果を中心に、コートをフルに使い、守備ではゾーンディフェンスを駆使しながら、ロースコアゲームに持ち込むスタイルだ。筑波大学・柏倉秀徳監督に白鴎大学戦後に話を伺うと「相手(白鴎大学)は走るスタイルなので、付き合わないようにゲームコントロールをしようと話した。もう少し失点を防ぎたかった」としたが、試合展開については「粘りはすごく見せてくれたし、選手たちはよく頑張ってくれた」と手応えを口にする。

「この時期に強豪のチームとたくさん試合ができるのは、チームにとってはプラスになるし、チームの課題も見えてくるので今後に生かしたいと思う。サイズがないのでオールコートで試合を進め、リバウンドやルーズボール、ボールを触った時は取りきるぐらいの気持ち、そしてミスを少なくしていきたい」と今後のチームの課題をあげた。

筑波大学が秋のリーグ戦で優勝争いに絡むようであれば、「3強プラス1」どころか混戦模様になることも予想される。秋に成長した筑波大学をこの目で確かめたい。

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もちろん「3強」も黙っていない

準々決勝で筑波大学に敗れた東京医療保健大学だが、順位決定戦以降は順天堂大学に80-59、日本体育大学に114-82で勝利し、5位で終えた。今回、早稲田大学、白鴎大学とは試合がなかったが、上位チームとしての力は見せた。

今大会は、#14岡田英里が大会を通じて欠場し、先日の日本代表候補にも選出された#32永田萌絵が主にポイントガードを務めた。身体能力は抜群で、ドライブはもちろんボールハンドリングもよく、試合をコントロールしていた。岡田が復帰すればどうなるのかは未定だが、永田が複数のポジションを担えるのは大きい。そして2017年のユニバーシアードでも活躍した#18藤本愛妃もペイントエリアで存在感を発揮する。リバウンドにも絡み、ペイントエリアから放たれるシュートの安定感は抜群だ。ここにアウトサイドシュートが得意な#13平末明日香が力を発揮すれば上位の一角に入ってくるだろう。

早稲田大学は、2人のセンタープレイヤー#14田中真美子、日本代表候補にも選ばれた#33中田珠未が健在だ。そして、ポイントガード#21高田静が絡めれば、得点力を発揮する。ただ、昨年に比べて各選手のプレータイムが増加している。秋に向けて、選手層を厚くしておきたいところだ。

白鴎大学は、#20シラ・ソハナ・ファトージャ、日本代表候補にも選出されている#14佐坂樹を中心にサイズがあるチームだ。高さがある分、リバウンドで優位に立つと、試合の流れをグッと引き寄せる。ただ、筑波大学のようにゾーンディフェンスを敷かれると、インサイドが厳しくなる傾向もある。筑波大学にはオーバータイムで勝利したものの、課題も残ったのが現実だろう。

白鴎大学・佐藤智信監督は「もう少しやりようはあったのかなと。でも筑波大学は選手も豊富なので、今からやってくるのかな」と筑波大学の存在を警戒した。「多分秋までこの状況続くと思うよ。年々混戦モードになっているし、一人一人がレベルアップしていると思う。実際、日本代表候補の合宿にも、関東大学女子から3人(中田、永田、佐坂)が選出されている。そういう選手がどんどん出てくることが我々の喜びというか使命でもある。競り合いがあればあるほどレベルが高くなっているので、Wリーグの選手でなくても入っていく選手が増えてくればなとは思う」と今後の関東大学女子バスケのレベルアップに期待を寄せた。

秋のリーグ戦では、接戦が続く試合展開を期待したい。

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