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関東大学男子バスケは「大戦国時代」に突入か【関東大学男子バスケレポ】

関東大学男子バスケ
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Ⓒマンティー・チダ

多くのBリーガーを輩出する関東大学男子バスケ

2016年9月に開幕したBリーグにも多くの選手を輩出する関東大学男子バスケ。現在一番多く輩出する大学は東海大学。代表では常連となった竹内譲次(アルバルク東京)をはじめ、2012年、2013年の全日本大学バスケットボール選手権大会(以下インカレ)優勝メンバーでもある田中大貴(アルバルク東京)、ベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)など、日本を代表する選手たちが揃う。近年では、2016年に春の選手権、秋の関東リーグ戦、インカレを制した筑波大学からも多くのBリーガーが誕生した。馬場雄大(アルバルク東京)、生原秀将(栃木ブレックス)らがBリーグで主力としてプレーしている。

関東大学男子バスケは、昨年から「戦国時代」に突入したと言われている。実際に昨年の春の選手権開幕前に、東海大学・陸川章監督にインタビューする機会があり「実力のある下級生も入ってきて戦国時代になるね」と予想していた。そして「混戦の方が面白くて楽しいけど」と付け加えた。昨年は春の選手権が筑波大学、秋の関東リーグ戦は拓殖大学、そしてインカレを制したのは大東文化大学だった。

2018年4月21日から、第67回関東大学バスケットボール選手権大会が開幕。筑波大学の3連覇で幕を閉じた。以下、準優勝に輝いた中央大学、3位の白鴎大学、4位の大東文化大学という結果に終わった。私が見る限り、今年は昨年よりも拮抗しているように見えた。それでは、私が選手権を通じて気になった3大学を紹介する。

(※Bリーグの選手の所属は、2017-18シーズンのものとする)

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春の選手権は筑波大学が優勝 3連覇を達成

春の選手権が開幕する1週間前に、筑波大学と日本体育大学が定期戦を行う「第53回日筑定期戦」で今季初めて筑波大学の試合を観戦できた。筑波大学と言えば、リバウンドから速攻で一気に攻めるスタイル。しかし、日本体育大学にオフェンスリバウンドを取られるなど苦しい状況の連続だったが61-54で勝利した。筆者はロースコアーゲームに終わった事が予想外だとその時思った。
(※Bリーグ、大学、高校のバスケは1Q10分×4で開催する。一般的に80点を獲得できれば勝利に近づくと言われている。60点台以下で決まるケースもあり、ロースコアーゲームと呼んでいる。)

しかし、筑波大学・吉田健司監督に伺うと「ロースコアーは予想通りでした。李相佰盃の学生日本代表合宿に数名呼ばれるなど、全員で合わせたのが数回でしたから」と半ば仕方ないような感じで振り返った。昨年も、当時学生日本代表だった馬場・杉浦佑成(現サンロッカーズ渋谷)を擁して、今年と同じように直前で合流し春の選手権を制している。

「昨年もぶっつけ本番でしたので」と言い残して会場を後にしたが、正直昨年と今年ではメンバーも変わったのでどうなるのか気になっていた。実際、先日の春の選手権でも、準々決勝の青山学院大学戦は、終始追いかける展開で最後逆転に成功し1点差で勝利した。準決勝の大東文化大学戦もロースコアーの展開ながら逆転で勝利した。そして決勝は、100点ゲーム寸前まで得点を重ね中央大学を圧倒し3連覇を達成した。

筑波大学が3連覇を達成した日、アリーナ立川立飛でBリーグアルバルク東京の一員として、レギュラーシーズン最終節を戦っていた馬場に、筆者が吉報を届けると「そうですか。もう空白の1年ではないですね」と喜んだ。馬場は、昨年の関東大学リーグ戦が開幕する前に、筑波大学のバスケットボール部を退部し、Bリーグアルバルク東京に入団していた。馬場が不在となり、当時のチームにも大きな影響を及ぼした。「空白の1年だと見られないように、頑張っている姿は見てきたので、結果としてあらわれたのは良かった。リーグ戦はまた違う形になると思うので、しっかり準備をして欲しい」とエールを送った。

今年の筑波大学の中心選手は、#11増田啓介だ。昨年の春の選手権では「増田が33得点できるなんて」と吉田監督がびっくりするくらいの成長を遂げた。今年のチームでは馬場、杉浦の後を継ぐポイントゲッターだ。そしてゴール下は、日本代表候補にも召集経験のある#65玉木祥護が陣取る。下級生の台頭があれば、秋のリーグ戦でもっと強い筑波大学を目にすることができるだろう。

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昨年のインカレを制した大東文化大学。2016年シーズンは2部に在籍し全勝優勝を達成


大東文化大学は、昨年のインカレで初優勝を決めた。2016年シーズンは2部に在籍し、リーグ戦全勝優勝を達成する。2014年に2部に降格以来、昨年は久しぶりに秋のリーグ戦では1部で戦った。昨年の選手権では筑波大学が圧倒して優勝を決めたが、当時最強の布陣と言われた筑波大学に対し、唯一互角に勝負できたのが大東文化大学だった。準々決勝で対戦した両チームは、3Qで大東文化大学が4点差まで詰めて逆転も見える時間帯もあったが、結局筑波大学が力を見せつけた。

2部の全勝優勝時のポイントガード#12熊谷航、ゴール下の番人#15モッチ・ラミーンが、今年の春の選手権では存在感を発揮した。残念ながら準決勝で優勝した筑波大学にわずか1点差で敗れた。しかし、圧巻だったのは、準々決勝の東海大学戦に、自陣からかなり前より、2-2-1ゾーンプレスを仕掛け、サイズの大きな東海大学を圧倒した。熊谷は「東海大学はセンターが下がって守備をしていたので、そのまま打っていくのも良かったが簡単にリバウンドを取られる危険性もあったので、ゴールに向かってアタックして崩してから誰かに預けようという意識はあった」と振り返る。

ゾーンディフェンスについては「出来は50%ぐらい。昨年まったく出場していない選手もいて、状況判断に難しいところもあったので、経験を積んでいくしかない」と話す。今年の選手権は、昨年インカレを制したことからマークされる側に立つ。「昨年と一番違うところは、各大学が大東文化大学に対策するチームが多くなった。東海大学も大東文化大学に対し対策を練る中で、勝てたことは大きい」と手応えを口にした。

西尾吉弘監督は「ゾーンディフェンスの出来としてはあまり良くなかったが、40分間東海大学がゾーンディフェンスに対して考えてくれたので戦術としては良かった。東海大学はインサイドの選手でサイズがあるので、そこで勝負はしたくなかった」と東海大学戦に向けたプランを明かした。そして「昨年のインカレ優勝が大きかったのか、選手が自信を持ってプレーしてくれたので良かった。追い上げられても焦ることがなかった」と続けた。これまでは「名前負けして、先入観から入っていた」そうだが、今の大東文化大学の選手からはそれを感じることはなかった。「2部優勝から積み重ねてきて、本人たちも努力した分結果が出てきているので、うちの選手たちが成長したのかな」西尾監督は選手の成長を誇らしげに語った。

今回の選手権大会では、優勝した筑波大学にわずか1点差に泣いた大東文化大学だが、数々の経験から「名前負けしない」自信をつけた選手たちは、秋のリーグ戦でも堂々と戦ってくれるだろう。

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2年連続無冠に終わった名門東海大学の現在地は?

そして、この大学の事に触れないわけにはいかない。冒頭でも述べた通り、多くのBリーガーを輩出する名門東海大学。「ディフェンスの東海」と言われるように、陸川章監督を中心に毎年守備に重心を置いたチーム作りをする。東海大学OBの現役Bリーガーは大学時代に守備を徹底的に叩き込まれた。今回の選手権では、準々決勝で大東文化大学に敗れ、最終順位は6位に終わった。

今年のチームの中心は、3年生が担いそうだ。日本代表候補にも名を連ね、Bリーグ琉球ゴールデンキングスの特別指定選手としてプロのコートを経験したインサイドの要#25平岩玄、一瞬のスピードとボールハンドリングさばきが巧みな#0寺嶋良といった名前が挙がる。平岩は「自分たちは速攻で得点を重ねることができたが、得点が止まった時に誰を起点に攻撃をするか」とチームの課題をあげた。チーム内の共通理解に時間が必要のようだ。「攻撃がうまくいかないとき、守備からやらないといけない」改めて守備からの意識を強調した。

陸川監督は「何がきても自分たちのバスケットができないといけない。いい勉強になった」と大東文化大学戦を振り返った。「リズムが作れないまま、時間が過ぎていった。これが今の実力」とチームの現状を分析する。東海大学に限らず、春は1年生も加わり新チームとして始動したばかりなので、どの大学も「正直わからない」と口にする。#11大倉颯太、そして今回は出場していない#86八村阿蓮など、1・2年生が中心になる新人戦、夏の合宿を経て、秋のリーグ戦ではどんなチームになっているのか?名門の復活に期待したい。

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今年の関東大学バスケは「大戦国時代」

その他、選手権大会では17年ぶりの準優勝に輝いた中央大学。準決勝で中央大学にわずか1点差で敗れた白鴎大学など、準々決勝以降のスコアを確認すると、僅差の試合が多かった。昨年の関東リーグ戦を制した拓殖大学も含めて、昨年の主要タイトルはすべて違う大学が制覇した。春の選手権大会も踏まえて考えると、もう「大戦国時代」と言ってもよい。

関東大学バスケの歴史を紐解くと、1強・2強と呼ばれる時代は多く見かけた。各チームの戦力が拮抗することで、切磋琢磨しチーム力は向上する。もちろん選手自身のスキルアップにも大いに役立つ。数年後の日本代表を背負う選手かこの中からきっと現れるだろう。今のうちに知っておけば、数年後のBリーグ観戦も楽しみになってくる。ぜひ関東を中心とした大学バスケにも注目をしてほしい。

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