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阪神・近本光司、関西が生んだ新星が14年ぶりVのキーマン

2019 5/12 07:00浜田哲男
近本光司ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

ファンからは称賛の声が多数

阪神に待望のニュースターが誕生した。トップバッターとして走攻守でチームを牽引する近本光司だ。俊足好打が売りの近本は赤星憲広の再来と入団以来期待されていたが、これまでファンの期待以上の活躍を見せている。

「チャンスで近本に回れば、絶対に点が入るって勝手に思っている自分がいる」「多くの試合で勝ちに繋がるきっかけを作ってくれるから、本当に毎打席見ていて楽しい」「近本がいなければ、ここまで勝ってなかった」など、SNSにはファンからの称賛の声が絶えない。

アマチュア時代に走攻守に優れているプレーヤーでも、プロの舞台で力を発揮することは難しい。特に走守である程度通用したとしても、打撃で苦しむパターンがほとんどだ。しかし、近本はここまで各部門でリーグトップクラスの成績をおさめている。盗塁王はもとより、新人王に一番近い選手と言っても過言ではない。

各部門で文句のない成績

まだシーズンは始まったばかりとはいえ、近本の成績を見れば今後も期待を抱かざるをえない。リーグ2位の10盗塁をはじめ、打率.311、安打数41本、得点圏打率は.400と勝負強さも兼ね備えており、打点は4番の大山悠輔に次ぐチーム2位。さらには4本塁打、4犠打(成功率10割)と一発長打や小技も持ち併せている。

5月2日の広島戦では、今季3度目となる猛打賞で13試合連続安打とし、チームの新人連続試合安打記録を更新した。

特筆すべきはカットする技術の高さだ。類い希なバットコントロールで際どい球、難しい球はことごとくカットし、相手投手を苦しめる。即戦力とはよく言われる言葉だが、ここまでの即戦力野手は近年でも稀だ。首脳陣もファンも、近本に関して怖いのは怪我だけではないだろうか。

また、ここまでチームの盗塁数は22個だが、その約半分となる10個を近本が稼いでいる。近本が出塁すると、二盗三盗を期待するファンの熱気で、球場全体が独特の雰囲気に包み込まれる。相手バッテリーに与えるプレッシャーも計り知れないものがあるだろう。

スピードだけでなくパワーにも優れる

「近本=スピードスター」というイメージではあるが、パワーとスピードを兼ね備えた打者であることを示すセイバーメトリクスの指標PS(Power-Speed-number)が優れていることにも注目だ。

PSの算出式は(本塁打×盗塁×2)÷(本塁打+盗塁)となり、数値が大きいほど、パワーとスピードを兼ね備えているということになる。

現在、近本はヤクルトの山田哲人に次ぐリーグ2位で鈴木誠也とタイ。3位は巨人の丸佳浩、4位は中日の京田陽太と、そうそうたるプレーヤーが並んでいる。単にコツコツ当てて塁に出れば走る……というだけにはとどまらない魅力も秘めていることが分かる。

セ・リーグ PSランキングⒸSPAIA

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開幕シリーズは2番でスタートしたものの、4月12日の中日戦以降は1番に座り、走攻守でチームを牽引している近本。何かと比較される赤星は、入団1年目に39盗塁をマークしたが、現在のペースをキープできれば40盗塁以上も可能だ。前述したようにカット技術にも優れてチャンスにも強く、これほどまでに嫌らしいトップバッターも珍しい。

兵庫県淡路市出身で兵庫県立社高等学校、関西学院大学、大阪ガスと歩んできた地元プレーヤーに対する思い入れも強いだろう。昨年は最下位に終わり、どん底からの巻き返しをはかる阪神。近本は、14年ぶりのリーグ制覇のキーマンと言っても過言ではない。