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ロッテの浮沈握る荻野貴司 初の規定打席到達、3割、盗塁王へ

2019 5/3 07:00浜田哲男
野球ボール
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Ⓒゲッティイメージズ

1番に座ってからチームが安定

今季、開幕ダッシュとはなからなかったロッテ。それでも4月は、本拠地ZOZOマリンでソフトバンクを3タテ、敵地・楽天生命パーク宮城でも楽天を3タテするなど、今後に期待を持たせる戦いぶりを見せている。

そんなロッテを牽引しているキーマンは間違いなく、リードオフマンの荻野貴司だ。オープン戦で打率.059と不振に陥り開幕スタメンの座はルーキーの藤原恭大に譲ったが、藤原や岡大海らの不振でチャンスが巡ってくると、出場試合連続安打を14(4月29日終了時点)とするなど毎試合出塁してチャンスメイク。切り込み隊長としての役割を十分に果たしている。

昨季は開幕から好調を維持し、前半戦をAクラスで折り返したチームの原動力となっていたが、オールスター直前の西武戦で右手首にボールを受けて複雑骨折。出場78試合で打率.287、20盗塁を記録し、盗塁王も視野にとらえていただけに悔やまれる離脱となった。

不動のリードオフマンを失ったチームは急激に失速。以降は投打ともに振るわず、終わってみれば最下位楽天とわずか1ゲーム差の5位に沈んだ。これまで期待されながら、故障がちで規定打席に到達したことのない荻野。荻野がシーズンを通して活躍できるか否かが、ロッテの浮沈を握っていると言っても過言ではない。

盗塁王に加え、3割も期待

規定打席には到達していないが、ここまで打率.355、出塁率.412、出塁率と長打率とを足し合わせた値のOPS.896と、申し分のない働きを見せている荻野。チャンスにも強く、得点圏打率は.538を記録。盗塁は5回企図して全て成功している。

バットを短く持って軸回転で振り抜く打法は健在で、右へ左へヒットを量産。今季最長試合となった4月23日の西武戦では5安打を放つなど固め打ちもお手の物。ここまでの打撃内容を見れば、盗塁王だけでなく、初の規定打席到達、そして初の打率3割も期待できる内容だ。昨季は78試合で91安打を記録していたこともあり、規定打席に到達できれば最多安打のタイトルも狙える。

また、投手の左右関係なく打てることも強みだろう。昨季は対右の打率.284、対左の打率.294。今季も対右の打率.383、対左の打率.267と満遍なく打てている。

通算盗塁成功率トップ

足の速いプレーヤーは多いが、荻野が塁の出た時に相手投手に与えるプレッシャーは、他の選手が出た時のそれとは次元が違う。その証拠として、荻野は通算盗塁成功率(盗塁数÷〈盗塁数+盗塁死〉)で堂々の歴代1位。西川遥輝、イチロー、鈴木尚広らそうそうたるプレーヤーをも凌ぐ。

盗塁成功率

ⒸSPAIA


今のロッテには、荻野以外にも中村奨吾、藤岡裕大、岡広海、加藤翔平、藤原恭大ら俊足が揃っているが、やはり荻野が出塁した時の期待感は圧倒的。昨季に比べて本塁打数が増加するなど得点力が増して打ち合いでも勝ちきる試合が増えているが、打線は水物。打てない時でも1点をもぎ取るために「足」が鍵となるはずだし、荻野はその最たるキーマンだ。

昨季は中村が覚醒し、盗塁王常連の西川と最後まで盗塁王争いを繰り広げたが、荻野が離脱したことで中村にマークが集中し、チームとしても売りの機動力をシーズン後半は活かすことができなかった。荻野がシーズンを通して試合に出続けることが相手チームにとって脅威であることは明白だ。

ロッテOBの里崎智也氏は、荻野を侍ジャパンレベルのプレーヤーと評する。荻野がフルシーズン戦い抜くことができた時、一体どれほどの成績を残してくれるのか。そして、チームはどの位置にいるのか。今季こそ、最後まで駆け抜ける荻野の姿を全てのロッテファンが期待して止まない。

※数字は2019年4月29日終了時点