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丸佳浩と浅村栄斗の移籍はセ・パの勢力図を変える? 3番打者の影響力を考察

2019 4/25 15:02浜田哲男
丸佳浩,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

丸と浅村の移籍先と古巣とで明暗が分かれた

先月末開幕したプロ野球も約20試合を消化。まだまだペナントレースは始まったばかりだが、開幕ダッシュに成功したチームがある一方で、投打がかみ合わずに下位に低迷するチームがあるなど徐々に明暗が分かれてきた。

特筆すべきは、巨人と楽天の開幕ダッシュ成功ではないだろうか。巨人は目下5連勝中で、2位のヤクルトに2.5ゲーム差をつけての首位。楽天も13勝7敗と6つの貯金で首位に立っており、2017年前半を思わせる快進撃を続けている。

好調な滑り出しを見せたこの2チームに共通しているのが、昨オフにFA(フリーエージェント)の目玉と言われた選手を獲得できたことだ。巨人はセ・リーグの2年連続MVPに輝き、広島の3連覇に大きく貢献した丸佳浩を、楽天は打点王のタイトルを獲得し、西武のリーグ優勝に貢献した浅村を開幕から打線の軸に置いている。

丸や浅村の移籍は、プロ野球の勢力図を塗り替えるほどのインパクトがあるという見方もあったが、ここまではその通りになっている印象だ。

一方、丸が抜けた広島、浅村が抜けた西武は昨季の出だしのような勢いは影を潜め、まだ波に乗り切れていない。広島はここにきて6連勝と本来の力を発揮してきたが、開幕当初の不振に関しては、丸が抜けた影響は多分にあったように思う。西武も今季から3番に座る秋山翔吾が打率.210と低迷。浅村の代役として期待されていたが、ここまでは穴を埋められていない。

広島も西武も、絶対的な3番打者を失った影響は想定以上に大きかったようだ。

3番打者の出来がチームの勝敗に影響?

丸と浅村の例にもあるように、3番打者がチームに与える影響は大きい。4番打者がすぐに決まれば他の打順を決めやすいとも言われるが、それは3番でも同じことが言える。初回の攻撃で必ず打順が回ってくる3番は、1回からスコアリングポジションに走者を置いた状態で打席に立つ機会も多い。そういう打順に、チャンスに強く一発長打も期待できる打者がどっしりと座ってくれるほど有り難いことはない。

巨人は開幕から14試合で丸を3番に置くことで(現在は、吉川尚輝の故障により主に2番)、坂本勇人を攻撃的2番に据えることができたし、楽天は浅村を3番に置くことで、つなぎの4番・島内宏明が機能している。島内の次には好調のウィーラーが控えており、切れ目のない打線を形成している。

12球団の3番打者の成績を比較すると、固定された3番が結果を出しているチーム、つまり絶対的な3番打者が君臨しているチームは上位に位置している傾向がある。ヤクルトの山田哲人、楽天の浅村がその顕著な例だろう。山田の得点圏打率は.348、OPS(出塁率+長打率)は1.075と驚異的。浅村も勝負を決定づけるダメ押し弾や逆転弾が印象的で、早くも17打点を挙げるなど、さすがの活躍を見せている。

2019年セ・リーグ3番打者成績

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その一方で、主に3番で起用されたソト、宮崎敏郎らが不振のDeNAは9勝13敗で5位と波に乗り切れていない。日本ハムの打線が今ひとつつながりを欠いているのも、3番で16試合に出場していた近藤健介の不振が痛い(現在は3番に王柏融を起用)。今後、優勝争いをしていけるか否かは、近藤の復調が大きな条件となりそうだ。

2019年パ・リーグ3番打者成績

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オリックスの吉田正尚は開幕直後は大不振に陥るも、立て続けに本塁打を放つなど、ここにきて復調傾向。それでもチームが得点力不足なのは、吉田の得点圏打率.158が少なからず影響していると考えられる。

また、ソフトバンクは何と言っても柳田悠岐の戦列復帰が待たれる。開幕からわずか9試合で離脱したが、それまでに14打点を挙げ、OPSは1.351と圧倒的な数字を残していた。現在は、今季打撃好調の今宮健太が3番を務めているが、やはり柳田の存在は唯一無二。柳田が復帰するまで最低でも上位をキープしておくことが、ソフトバンクが当面の目標とするところではないだろうか。

3番打者の働きは、チームの得点力、勝敗に大きく影響を及ぼす。秋山や近藤ら不振にあえいでいる好打者が今後巻き返すか。それとも、他の打者を3番に据えるなり打線を組み替えるのか。各チームが3番をどうやり繰りしていくのかに注目していきたい。

※数字は2019年4月24日終了時点