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楽天・美馬学と福井優也、対照的な投球スタイルの2人がチームの危機救う活躍

2019 4/24 07:00勝田聡
野球ボール,ⒸSPAIA
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昨季最下位の楽天が好スタート

昨シーズンのパ・リーグは開幕から西武が8連勝とスタートダッシュに成功し、そのままゴールテープを切ったが、今シーズンは今のところ混戦模様で先が読めない展開となっている。

そんな中、昨シーズン最下位に沈んだ楽天が好調だ。開幕戦こそ敗れはしたが、2戦目で初勝利を挙げるとそこから5連勝し勢いに乗り、19試合を消化して12勝6敗1分で首位に立っている。

ここまで好調の要因の1つがつながりのある打線だろう。昨シーズン故障に苦しんだ茂木栄五郎は、遊撃、三塁とポジションは固定されていない中でも、上位打線として打率3割をキープ。チームを牽引する活躍を見せている。

また、今シーズン4番を任されている島内宏明は、打率こそ.295と目立った数字ではないが、出塁率.434はリーグ2位の数字であり、「つなぎの4番」として機能している。2017年の14本塁打がキャリア最多と決して大砲タイプではないが、4月20日のオリックス戦では初本塁打も放った。ちなみに、これは史上11人目となる全打順での本塁打とメモリアルアーチでもあった。

その他、派手な成績を残している野手は不在だが、それぞれが持ち味を発揮しながら、チームとして機能し、西武に次ぐリーグ2位の得点を挙げている。

一方の投手陣は、先発の柱である則本昂大と岸孝之のふたりが戦列を離れており、台所事情は苦しい状況だ。そんな苦境の中、対照的な投球スタイルの美馬学と福井優也がローテーションを支える活躍を見せている。

美馬学は25.1回で四球はわずかに「1」

昨シーズンは故障で思うような成績を残すことができなかった美馬だが、今シーズンはここまで4試合で2勝1敗、防御率2.49と安定し、復活を遂げている。

その美馬の凄さは制球力にある。ここまで25.1回を投げ、与四球はわずかに1つ。BB/9(1試合にいくつ四球を与えるかを示す指標)0.36は現時点で両リーグ断トツの数字で、3試合に1つしか四球を出さない計算になる。昨シーズンのセ・リーグトップは菅野智之(巨人)の1.65、パ・リーグトップは岸の1.64だった。これと比べても、今シーズンの美馬の制球力の良さがよくわかる。

まだまだ序盤戦のため、この数字をシーズン通して維持できるとは思えないが、多くの投手が開幕直後であってもBB/9は1を超えており、特筆すべき数字であることには違いない。ちなみに、美馬は前回規定投球回に到達した2017年のBB/9も1.73と高水準だった。元来、制球力のある投手なのである。

福井のBB/9は6.75

昨オフに広島からトレードで加入した福井もローテーション入りしている。ここまで3試合に登板し、2勝を挙げ、防御率2.81と立派な戦力となっており、ここ数年の不甲斐ない成績がうそのような活躍ぶりだ。平石洋介監督は「キーマンになると思っている」とオープン戦から語っていたが、まさにその期待に応えている。

そんな福井の投球内容は美馬とは大きく異なっている。3試合で16回を投げ、与四球の数はなんと12個、BB/9は6.75だ。完投したらおよそ7個の四球を出す計算となり、制球面に課題を抱えている。

四球は少ない方が良く、制球難の投手は「四球を減らせ」と言われることも多い中、平石監督は「攻めての四球はしょうがない」とコメントし、福井の四球の多さを容認している。この言葉が福井のパフォーマンスにどれだけ影響しているのか測ることはできないが、「心の余裕」になっていることは間違いないだろう。

2013年以来、6年ぶりの優勝を目指すチームのキーマンはエース格のふたりではなく、美馬と福井かもしれない。

※数字は2019年4月21日終了時点