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ロッテ・加藤翔平が好調な打線を牽引 「何かをやってくれる男」からレギュラー定着へ

2019 4/12 11:00浜田哲男
加藤翔平,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

好調ロッテ打線を牽引

昨季は貧打に泣いたロッテ打線だが、今季は勢いに乗っている。4番として活躍が期待された井上晴哉が、オープン戦からの不振を引きずり2軍落ちしたが、加藤翔平、中村奨吾、レアードを中心とした打線が機能し、昨季では考えられない一発攻勢も見せている。

既に11試合で7本塁打を放ち打率.385のレアードを筆頭に、中村と加藤が打線を牽引している。特に加藤は、6日のソフトバンク戦でこれまで苦手としていた右打席でも2打席連続の本塁打を放つなど、予想以上の活躍を見せている。

50メートル走5.68秒、遠投120m、パンチ力ある打撃と、元より誰もが認める身体能力を持つ。最も多く試合に出場したのは、2017年の98試合。これまでフルシーズン働いたことがなかったため、能力を発揮できず首脳陣やファンの期待に応えることができなかった。

しかし、今季は違う。開幕戦2番右翼で先発出場を果たすと、第一打席でいきなり本塁打を放ち、その後もコンスタントに安打を重ねているのだ。また、昨季までの通算本塁打は9本だったが、今季は11試合で既に4本塁打を放っており、井口資仁監督が望む「打てる2番打者」として存在感を発揮している。現在、チームの犠打数1は西武と並んで12球団最少だ。

課題は出塁率

プロ入り後の成績

ⒸSPAIA


11試合を消化した時点で、4本塁打、打率.356、16安打と順調な加藤。長打率.733はリーグ4位、OPS1.116はリーグ5位と、打撃項目のほとんどが上位にランクインしているが、課題は出塁率だ。同項目に目を向けると.383でリーグ13位。決して悪い数字ではないが、他の打撃成績が良いだけに少し物足りない。

元々、比較的三振が多く四球が少ないタイプの打者であることから、出塁率が3割以上を記録するシーズンがなかった。だが、特にチャンスメイクが求められる上位打線では、出塁率向上が喫緊の課題。後ろを打つ3番打者の中村が出塁率.449と好調なため、加藤の出塁率が向上すれば、ロッテ打線にますますつながりが生まれるはずだ。

何かをやってくれる男

「何かをやってくれるのではないか」と、加藤に期待を抱くファンは多い。

2013年、楽天戦でのプロ初打席では、見事初球をとらえて本塁打。同年、クライマックスシリーズ西武戦の初打席でも本塁打を放った(シーズン公式戦とポストシーズンの両方で初打席初本塁打は日本プロ野球史上初)。また、井口監督の現役引退試合でも、華を添える豪快な一発をライトスタンドにたたき込んでいる。

常に期待できる打者というわけではないが、ここぞという時の集中力と打席での思い切りの良さは凄まじいものがある。今季は、昨オフに新設されたチーム戦略部からのデータに基づいてチーム全体で狙い球を絞っているが、加藤に関してはその効果が早速出ている。

6日のソフトバンク戦でミランダから放った2本の本塁打は、まさに狙い打ちだった。データが準備されていても、それを生かす技術やパワーがなければ致し方ない。だが、加藤が本来持つ潜在能力がデータと見事にかみ合っている。

ソフトバンクの高橋礼に、わずか2安打に抑えられるなど打線が沈黙した7日の試合。しかし、加藤だけは2安打と気を吐いた。右打席でモイネロの低めの速球をコンパクトに振り抜き、強い打球でセンターへはじき返した当たりは、今後のさらなる活躍を期待させるものだった。

まずはシーズンを通して試合に出ること

加藤には走攻守である程度の数字を期待したいが、まずは143試合、少なくとも120~130試合に出場することが今季最低限の目標となる。

昨季は、主に中村が3番二塁で全試合に出場し、井上が4番一塁で133試合に出場。それまでは両選手共、シーズンを通して試合に出た経験がなかった。だが、井口監督の方針で固定され、3割近い打率を残したのだ。

また、昨季39盗塁をマークした中村は盗塁王を今季の目標とし、同様に99打点をマークした井上は打点王を目標にしている。シーズン通して試合に出続けることで己の立ち位置を理解し、より一層すべき目標が明確になる。

走攻守三拍子が揃っている加藤には、打率.280、15本、20盗塁くらいはクリアできる能力が十分にあるし、出塁率であれば.320~.350を期待したい。フルシーズンを終えた時、どれほどの成績を残せているのか楽しみだ。