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西武はどうなる?過去に「エース」と「主砲」が同時流出したチームの成績は

2019 3/14 07:00青木スラッガー
成績表,ⒸSPAIA
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「エース」と「主砲」の同時流出。過去の例は……

連覇を狙う西武にとって、最大の課題はやはり菊池雄星と浅村栄斗の穴だろう。生え抜きとして投打でチームを支えてきた2人。戦力的にも、精神的支柱としても、あまりにも大きな存在を同時に失った。

昨季のチャンピオンチームといえど、一転して苦戦を強いられるかもしれないところだが……過去に同じような状況に直面したチームはどのようなシーズン結果になっただろうか。

「エース」と「主砲」の同時流出。これに当てはまるケースは、最近10年ほどでは3チームが見つかった。

今季の西武と似たケースになるのが2008年の広島だ。黒田博樹がメジャー挑戦し、主砲・新井貴浩が同リーグの阪神へFA移籍。その2008年オフのセ・リーグは中日が川上憲伸とウッズを流出させている。最後に2014年の楽天。前年は球団創設以来初の日本一。24勝0敗という空前の記録をつくった田中将大、5番打者として大活躍したマギーがともにメジャー移籍となった。

08年広島、09年中日は新戦力の活躍で上位浮上

投打の要が流出した直後のシーズン、広島と中日の大幅な戦力ダウンが予想され開幕前から評価は低かった。しかし、シーズンが始まってみれば、下馬評を覆す大健闘で前年を上回る順位に食い込んだ。

広島カープ2007年~2008年シーズン成績,ⒸSPAIA

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広島は、エースの代役を期待され新入団したルイスが15勝を挙げて見事にその役目を果たした。さらに前田健太がプロ2年目で一軍初登板し、9勝をマーク。後の絶対的エースの台頭もあり、チーム防御率は4.22から3.78へと劇的に改善している。

打線は新井に代わって三塁手を守った新外国人のシーボルも15本塁打を放ってまずまずの活躍。新4番の栗原健太や、前年の途中に加入したアレックスが成績を伸ばすなど、全体的な戦力の底上げがあってチーム打率は.263からリーグトップの.271へ上昇した。チーム本塁打は前年から32本減らし、長打力の面で新井の穴は大きかったが、チーム得点は前年から20のマイナスにとどめている。

順位は6年間続いていた5位以下から、久しぶりに4位へ浮上。終盤までチーム史上初のCS進出に希望を残し、マツダスタジアム元年を盛り上げた。

中日も3位の前年から10勝を上積みして2位に浮上。投打ともにチーム成績は大きく向上した。

中日ドラゴンズ2008年~2009年シーズン成績,ⒸSPAIA

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在籍4年で155本塁打を放っていたウッズの穴は「どうしようもない」という風潮もあったところだったが、新外国人のブランコが39本塁打と110打点で期待をはるかに上回り二冠王。投手では前年に10勝と頭角を現していた吉見一起が16勝を挙げ、川上に代わるエースに定着した。

前年の途中から先発ローテーションに定着したチェンもシーズンを通してローテーションを守り、8勝ながら防御率1.54をマークしている。

3人は翌年以降も中心メンバーとして活躍。チームにとってこのシーズンは翌年からのセ・リーグ連覇の足掛かりとなった。

大型補強が外れ……日本一から最下位へ転落した14年楽天

エースと4番の穴を埋められず、一気に転落してしまったのが楽天の例だ。

東北楽天ゴールデンイーグルス2013年~2014年シーズン成績,ⒸSPAIA

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先発投手は辛島航、塩見貴洋の台頭が前年からの上積み要素になったが、2014年の最終成績は2人合計で16勝20敗。これだけでは田中が生み出した貯金24はとうてい賄えなかった。

打線に関しては、フロントが思い切った手を打った。マギーに代わる主軸候補として、メジャー通算150本塁打を放ち、抜群の選球眼から「四球のギリシャ神」の異名を持った超大物のユーキリスを獲得。しかし故障を訴えてわずか21試合の出場にとどまり、開幕早々に新打線の構想は崩れ去る。

そこで前年まで巨人でプレーしたボウカー、大リーグからラッツとシーズン途中に急遽新外国人の補強も行ったが、ラッツも故障で15試合しか出場できないなど最後までマギーの穴は埋められなかった。

チーム防御率は3.51から3.97、チーム得点は628から549に。前年の82勝が64勝となり最下位へ転落し、そこから昨季までの5年間で計3度の最下位へ沈んでいる。

既存戦力の成長が希望

最近10年では3チーム中2チームが上位へ浮上。好結果が出た広島と中日は補強された新戦力がしっかり活躍し、既存戦力も伸びて結果的に前年よりも良いチームになっている。一方で、穴埋めを上手くできなかった楽天の落ち幅は大きかった。

今季の西武は、野手に関しては大砲タイプの補強を行っておらず、これまで控えメンバーとして出場機会をうかがっていた既存戦力の成長に懸けることになる。

ベテランの木村文紀や若手有望株の愛斗、昨季不振だったメヒアなど、選手層自体は厚い。投手では、新外国人のニールや巨人から内海哲也、ドラフト1位の松本航などが新戦力。次世代のエース候補である今井達也の本格ブレイクも待望されている。こういったメンバーの活躍で、過去の好例に倣うことができるだろうか。