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大魔神・佐々木を彷彿とさせる岩下大輝 先発、リリーフどちらでも有望

2019 3/13 15:00浜田哲男
野球ボール,ⒸSPAIA
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昨季、念願のプロ初勝利

今季、ブレイクが期待される投手の一人がロッテの岩下大輝だ。石川・星稜高から入団してプロ入り4年目を迎えた昨季は、シーズン後半戦に初の一軍昇格。中継ぎで安定感のある投球を続けたことが評価され、2018年10月5日の楽天戦で初先発。6回無失点の好投を見せ、念願のプロ入り初勝利を挙げた。

プロ入り1年目に右肘を手術、3年目には椎間板ヘルニアの手術を受けるなど、これまで苦難の連続だった。だからこそ、初勝利を挙げた際には大きな壁を乗り越えた達成感と喜びに満ちあふれていた。

同試合を含む2試合に先発し、計12イニングを2失点に抑える好投を見せた一方で、リリーフでも16試合に登板した岩下。150kmを超える直球と鋭いフォークを中心とした配球で相手打者を抑え込み、試合の流れを引き寄せる役割を果たした。

2018年度 成績

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大魔神・佐々木を彷彿とさせる威圧感

がっしりとした体つきに豪快な投げっぷり、威圧感とスケール感のある投球フォームは、横浜やマリナーズで大魔神と呼ばれ一時代を築いた佐々木主浩や、クローザーとして95年のオリックスのリーグ優勝に貢献した平井正史を彷彿とさせる。球質の重い150km超の直球を連発し、最後は落差のあるフォークで仕留めるピッチングスタイルも佐々木や平井と共通している。

2018年7月29日に、本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた西武戦。1番・秋山翔吾、2番・源田壮亮、3番・浅村栄斗に対して、150km超の直球を連発し圧巻。秋山からフォークでプロ入り初奪三振を記録したほか、源田や浅村も球威で押し込み、危なげない投球内容で三者凡退に抑えた。

昨季マークした最速は153km。持ち玉としてスライダーやカーブもあるが、重くて速い直球とフォークのコンビネーションは、十分に一軍の打者に通じることを証明した。

優勝請負人・吉井理人コーチが加入

昨季ロッテのチーム防御率は4.04とリーグ5位。特にシーズン後半は疲れの見えたリリーフ陣が打ち込まれる場面が目立ち、勝ちきれない試合が続いた。また、前半戦好調だったチームを牽引したボルシンガーや石川歩が後半戦は不調に陥り、先発ローテーションも崩壊。投打がかみ合わず、本拠地で14連敗を喫した。

そんな投手陣の立て直しを託されたのが、一軍投手コーチに就任した吉井理人だ。投手コーチとして日本ハム、ソフトバンク、再び日本ハムと渡り歩き、所属したチームを優勝に導いてきた。

2016年に日本ハムをリーグ優勝と日本一に導いた際には、それまでリリーフだった増井浩俊を先発に転向させると、これが大成功。先発で8試合に登板し6勝1敗と好成績を残し、優勝の立役者となった。

日米の野球を経験している視野の広さを持つ吉井。対話を重視し、投手のコンディション管理に細心の注意を払った継投など、卓越した手腕でロッテの投手陣をどう立て直すのか興味深い。

先発かリリーフか

では、岩下はどこで使われるのがベターか。現在、岩下以外の先発ローテーションは、開幕投手が内定している石川をはじめ、ボルシンガー、涌井秀章、有吉優樹、二木康太、酒居知史、種市篤暉、そして新外国人のブランドン、ドラフト3位の小島和哉らで争う形となっており、争いは熾烈。

一方でリリーフは、昨季先発から転向して安定した投球を見せた唐川侑己のほか、松永昴大、成田翔、大谷智久、東條大樹、田中靖洋、西野勇士、新外国人のレイビン、ドラフト2位の東妻勇輔らの争い。ブランドンや小島らはリリーフとしての起用も案としてあるのかもしれない。

昨季58試合に登板し、26セーブを挙げ、クローザーを努めた内竜也。オフに右肘を手術しているため、開幕に間に合うかは微妙。新人の東妻やブランドンは未知数だが、状態次第では球威がある。三振を奪える岩下をクローザーとして試す価値はあるだろう。

しかし、先発陣も盤石とは言えない。特に最近2年で5勝、7勝と勝ち星が物足りない涌井はオープン戦でも打込まれる場面が目立ち、不安が拭いきれない。今季も涌井が計算できないとなると、岩下や二木、酒居、種市ら若手の台頭が上位進出のための必須条件となる。

いずれにせよ岩下は昨季、先発とリリーフの両方を経験したことが大きい。特に先発した2試合ではともにクオリティスタートをマークした。投手陣の状況により、吉井コーチの考えで役割が変動することも予想されるが、先発もリリーフも任せてみたくなる岩下が、投手陣のキーマンのひとりであることには間違いない。