菊池の穴を内海が埋められるか
パ・リーグ優勝を果たした埼玉西武ライオンズだが、オフに二つの激震が走った。一つは不動の3番打者浅村栄斗の楽天イーグルス移籍、もう一つはエース菊池雄星のメジャー挑戦である。特に菊池の移籍はチームにとって大きなマイナスである。2019年シーズンのライオンズ投手事情は、苦しいものになるのではないか。
しかし、そんな埼玉西武ライオンズに一人の投手がやってきた。それは、炭谷銀仁朗の人的補償でチームに加入した、元巨人の左腕エース内海哲也である。
内海の投球スタイルは、菊池とは異なりベテランらしいものである。こちらの昨年の球種別データをご覧いただきたい。
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見て分かるように、 内海はスライダーとシュートといった、横への変化球が約45%を占めている。そこにストレートを絡めて、打ち取るスタイルだと推測できる。
ボールの出し入れをし、見逃しでストライクを奪うことで、カウントを有利にしていくスタイルなのだろう。
内海のよさは四球を出さないこと
ボールを出し入れするためには、コントロールが重要である。次は、内海のコントロールの良さを示すデータを紹介しよう。
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BB/9とは27個アウトを取る間(一試合の間)にいくつの四球を与えるかを示す数値。数字が低いほど、四球を出しにくい投手であると言える。ご覧のように、菊池よりも四球を出しにくいことが分かるだろう。
四球はタダでランナーを出してしまい、好投していた投手が、1つの四球から崩れてしまう場面は少なくない。それだけ四球というのは、投手にとってダメージになりやすいものなのである。特に、コースに投げ分けるタイプの投手の場合、四球を出すリスクが付いて回りがちだ。しかし、内海はそういった不安が少ない投手と言えるだろう。
ちなみに、この2.09という数字はもし内海が規定投球回に到達していた場合、セリーグでは3位、パ・リーグでは4位に入る好成績である。
ストレートとシュート、スライダーをコースにコントロールよく投げ分けることで、打者を打ち取る。2019年、このスタイルをライオンズのユニフォームでも貫き、並み居る強打者を手玉に取っていければ、充分に菊池の抜けた穴を埋めることができるはずだ。
内海の課題は長打を打たれること
ただ、内海が克服しなければならない課題がある。それは、被長打率である。被長打率は.430、被OPSが.758と、比較的長打を打たれてしまっている傾向が見てとれる(菊池は、被長打率が.343、被OPSが.613)。
では、どうしたら長打を避けられるのか。ここに1つのヒントになるデータがある。
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左打者に対しては、安打こそ許しているが、本塁打はわずかに2本しか打たれていない。逆に右打者には安打をそこまで許していないが、本塁打などの長打を打たれやすいのがこの表を見て分かる。右打者に長打を打たれないようにするにはどうすればいいか?この件についても興味深いデータがある。
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これは、対右打者のコース別投球成績だ。黄色マスに注目してもらいたいのだが、ホームランを真ん中からインコースにかけて多く打たれている。さらに、真ん中低めの被打率が極端に上昇している。
右打者にとって、左投手の入ってくるボールは食い込んでくるので打ちにくいが、中途半端なコースに投げればチャンスボールとなってしまう。ただ、対右打者の被打率自体はそこまで高くないので、コントロールの精度が上がれば一気に改善しそうだ。
逆に高めはあまり打たれていない。食い込んできた高めのボールは打者にとっては脅威であり、変化球を武器にする内海にとって、うまく使いこなす必要があるだろう。真ん中低めの被打率を改善するためにも、高めのコースを有効利用することが重要となりそうだ。
菊池が抜け、ベテラン内海に対する期待は大きい。内海が自分自身の投球スタイルを生かすことができれば、先発陣の大きな柱になってくれるはずだ。若い獅子の捕手としっかりコミュニケーションを取り、自身やチームを頂点に導いてもらいたい。